総務省はこのほど、通信、放送関連の法律を一本化した新たな法制度である「情報通信法」の検討委員会を発足させた。同法について議論を進めてきた研究会の最終報告書を受けたものだが、一橋大学名誉教授の堀部政男氏は「現在国会などで議論されている有害サイト規制は、新法の中で明確に位置づけるべき」と述べた。

情報通信法は、放送法や電気通信事業法など9つの法律を、「コンテンツ(情報内容)」「伝送設備・サービス」などの横割りのレイヤー(層)構造に組み替える形で一本化。コンテンツレイヤーに関しては、従来は原則自由だったインターネット上のコンテンツも、放送コンテンツと同様に「公然性」を有するものとして、ともに社会的影響力に応じて段階的に規制するとしている。

同法については、2006年8月から、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」で議論されてきており、2007年6月に中間取りまとめ案を公表。パブリックコメントを実施後に関係団体などからヒアリングを行った上、同年12月に最終報告書をまとめたが、上記のコンテンツ規制に関しては、「表現の自由を侵すのではないか」などの意見が、関係各団体などから数多く表明されてきた。

情報通信法で最も激しい議論が行われた、コンテンツ(情報内容)に関する最終報告書案

だが、「出会い系サイト」「自殺サイト」「闇サイト」などに関わる事件が次々と起こる中、民主党や自民党の議員の間で、インターネット上の有害サイトを規制するための法律を作る動きが、情報通信法の議論に先行する形で活発化。総務省も、未成年者が携帯電話を使用する際は、フィルタリングサービスに原則加入させるよう携帯各社に要請するなどしている。

こうした点について、研究会の座長を務めた堀部氏は、検討委員会の第1回会合で「最終報告書には、中間とりまとめにはなかった表現の自由の保障を明記した」と説明。その上で、国会で進む有害サイト規制の議論については「情報通信法における違法・有害サイトの規制の位置づけが不明確なまま議論を進めていいのか」と疑問を呈し、"一人歩き"する「有害サイト規制」議論をけん制した。

総務省では、情報通信法について2010年の通常国会の提出を目指しており、「今年6月に論点整理ができるよう議論を進めていきたい」としている。