組み込みデータベースのベンダである米Encirqは15日、都内で会見を開き、新しいサポートサービスを開始すると発表した。「プロフェッショナル サービス グループ」と呼ぶサポート部門を新設し、今後はサポートサービスをパッケージ化して提供する。

会見には、EncirqのCEOであるDeborah Goslin氏が登場した

同社は、組み込みデータベース「DeviceSQL」を提供する企業である。従来よりデータベース製品単体での販売に加え、サポートサービスも行ってきた。しかし従来は、開発する機器の構成をある程度決定した段階でないとサポートの内容や必要な人員と時間、料金などの見積もりができないという課題があった。そこで、開発初期の機器の構成を決める段階からでもサポートを利用できるよう、あらかじめサポート内容や料金などが設定してある"パッケージドサービス"として提供することにした。開発初期からサポートすることで、機器に最適なデータベース製品の選定を行えるという。また、オープンソースの「SQLite」や他社のデータベース製品についてもサポートを行う。

今回、用意されたサービスは、以下の通り。

パッケージドサービス

  • パフォーマンス評価スタータサービス
  • 組み込みアプリケーションスタータサービス
  • 高度なデータ管理サービス

専門パッケージドサービス

  • プロトタイプサービス
  • SQLiteサービス
  • 組み込みアプリケーションテストサービス

データの移行、統合、通信サービス

  • サーバ、デバイス、センサ間とのデータ通信を提供
  • データフォーマットの検討、規格化、データの入出力や検索
  • ストリーミングデータの格納、検索、モニタリング

さらに、新たに「プロフェッショナル サービス グループ」と呼ぶサポート部門を新設することにより、サポート体制の強化も図る。米国、インド、日本の3拠点を設け、日本の顧客に対しては、同社の日本法人であるエンサークが窓口となってサポートおよびコンサルティングを行う。

EncirqのCEOであるDeborah Goslin氏によると、「今後、プロフェッショナル サービス グループによる売り上げを同社全体の収益の50%まで引き上げる」という。また「Encirqの売り上げの8割は日本。これからは日本の体制をさらに強化していく」とも語った。

組み込み機器開発と組み込みデータベース

「組み込みデータベース」とは組み込み機器向けのデータベースのことである。組み込み機器の場合、特に低コスト、低消費電力、高信頼性が求められる。そのため、メモリの容量やCPU(マイコン)の性能をぎりぎりまで抑えるため、データベースに関しても必要最低限の機能のみを搭載することが多い。

組み込み機器開発の場合、機器によってハードウェアやOS、そして搭載する機能が異なる。そのため、それに合わせたデータベースを選ぶ必要がある。また、採用したデータベース製品をそのまま実装できるケースは稀で、機器に合わせた機能の開発や性能向上のためのチューニング、バグを防ぐためのテストなどが必要となる。さらに、データベースに関する専門知識を持った組み込みエンジニアはまだまだ少ない。以上のような理由から、組み込みデータベース製品はサポートサービスとあわせて提供されることがほとんどである。

組み込みデータベースの採用事例

最近では、カーナビゲーションシステムや携帯電話、音楽プレーヤなど、大容量のデータを扱う組み込み機器が増えている。こういった機器では、従来のファイルシステムでは、性能や機能が不足するといったケースが出てきている。そのため、組み込みデータベースの採用事例が増えてきている。

例えば、Encirqの組み込みデータベース「DeviceSQL」を採用した事例に、アルパイン製の車載オーディオプレーヤ「iDA-X200」「iDA-X300」がある。電源投入後、USBメモリに入った1,000曲の音楽データを検索できるようになるまで、わずか1分程度。従来のファイルシステムでは、この約10倍の時間がかかっていたという。

検索には音楽データのメタタグを使っているため、アーティスト名やアルバム名での検索もできる。また、"検索しながらデータの書き込みを行う"といった完全なマルチタスク処理も可能。

Encirqの組み込みデータベース「DeviceSQL」を採用したアルパイン製の車載オーディオプレーヤ - CES 2008にも展示された北米向けの製品