NECは、2007年度4 - 12月累計の連結決算を発表した。売上高は前年同期比3.8%減の3兆1,928億円、営業利益は2.1%増の434億円、当期純損益は、投資有価証券売却益の大幅減などにより、100億円の赤字(前年同期は73億円の赤字)となった。「IT/NWソリューション事業」が減益となったが、課題としてきたモバイル/パーソナル、半導体が改善するともに、NGN事業が順調に推移した。同社では、収益性の高い通信関連事業での大型案件などが第4四半期に貢献するとみており、通期見通しの売上高4兆7,000億円、営業利益1,300億円、当期純利益300億円は変更していない。

07年4 - 12月期は減収増益

今回の業績を分野別にみると、システム構築、コンサルティング、サポート、サーバ、ネットワークシステムなどが属する「IT/NWソリューション事業」は売上高が同0.1%増の1兆8,874億円、営業利益は同51.4%減の511億円だった。売上の内訳は、ITサービス/SIが、通信、金融を中心に着実に伸長し、同4.9%増の5,424億円、ITプラットフォームはDVD販売機能の移管、前年同期にはサーバの大型案件があったことなどから、同13.4%減の3,844億円となった。

ネットワークシステムは、同2.3%増の7,593億円、社会インフラは同10.5%増の2,013億円。ネットワークシステムでは、海外通信事業者向けの超小型マイクロ波通信システム「パソリンク」や海底ケーブルなどの事業が好調だった。「パソリンク」はアジア、中近東などで売上が拡大しており、同社では「上期から好調で、第3四半期(2007年10 - 12月期)は同6割増の勢いで第4四半期(2008年1 - 3月期)はさらに加速しそうだ。独自調査だが世界市場でシェア首位ではないか」(同社執行役員常務の小野隆男氏)としている

NEC 執行役員常務 小野隆男氏

この実績について、小野常務は「ITでいえば、今回、収益力が特に落ちているわけではない。前年度には収益性の高い大型のプロジェクトなどがあり、それらのない今年度は差し引きで悪化しているようにみえるが、絶対的な状況としてはそれほど悪化してはいない。ネットワークでも同様で、前年度はMNP(携帯電話の番号ポータビリティ)を控え、基地局の増設需要が旺盛だった」と述べた。

個人向けパソコン、携帯電話端末などが含まれる「モバイル/パーソナルソリューション事業」は売上高が同14.9%減の6,171億円だった。内訳はモバイルターミナルが同8.2%減の2,384億円、パーソナルソリューションは同18.7%減の3,787億円。モバイルターミナルは、海外の携帯電話機事業を縮小したことなどが、パーソナルソリューションは、欧州の個人向けパソコン事業を売却したことなどがそれぞれ影響した。全体の営業損益では、モバイルターミナルで海外の携帯電話機事業の構造改革が完了したことや、開発効率化などが奏功、前年同期に比べ454億円改善、104億円の利益となった。

モバイルターミナル関連では、NTTドコモ向けのN905シリーズが好評で、第3四半期の携帯電話機出荷台数は110万台、モバイルターミナル全体の第3四半期の黒字は20億円に達している。小野常務は「四半期で100万台を越える水準の出荷があれば利益は出る。そのような収益構造はできあがっている」と話す。

パーソナルソリューションのうち、パソコンは「引き続き、国内トップシェアを堅持しており、採算性を確保している」(同社)状況だが、第3四半期の出荷台数は同1万台増の59万台で、上期は127万台(前年同期は133万台)だった。これについて小野常務は「パソコン市場全体は悪くもないが、伸びてもいない。長期的にみれば、毎年増加は期待できない。単なるパソコンではなく、ホームサーバなど、パソコンを基盤にした、新たなソリューションの提案が必要になる」と指摘した。

システムLSI、電子部品などの「エレクトロンデバイス」は売上高が同2.6%減の6,327億円で、内訳は半導体が同0.2%増の5,218億円、電子部品その他が同13.6%減の1,109億円。半導体は、通信機器やコンピュータ周辺機器向けが減少した一方、民生用電子機器、自動車・産業用機器向けの売上げが増加、前年同期比でほぼ横ばいとなった。電子部品その他は、電子部品、小型液晶ディスプレイが減少したことが響いた。全体の営業利益は47億円で、半導体で研究開発費、減価償却費といった固定費の減少が好影響し、前年に比べ108億円改善、黒字転換を果たした。

同社の今後の目玉となるNGN構築事業は、売上高が約1,300億円に上った。同社の分類では、ITやネットワークに関わる領域になるが、大別すれば、IT関連が1/3、ネットワーク関連が2/3程度になる。ネットワーク分野では、ハードが主流で、SI系では、プラットフォームが中心でサービスが多いという。通期では2,000億円ほどの売り上げを見込んでいる。

第3四半期だけの実績でいえば、売上高は同4.0%減の1兆522億円、営業利益は同54.3%減の160億円、当期純損益は52億円の赤字(前年同期は26億円の黒字)となるが、同社では効果の大きい案件が第4四半期に偏っている、として、通期予想はそのままにしている。小野常務は「第4四半期の実績はかなりみえている。それらを積み上げた結果、通期の営業利益1,300億円は達成可能だ」とみている。