現行法の運用では取り締まりが難しいのが現状

中国セキュリティソフト大手の金山毒覇がまとめた、2007年上半期の「中国コンピュータウイルス発生状況およびインターネットセキュリティレポート」によれば、同期に中国全土でウイルスに感染したコンピュータは759万台を超え、前年同期より12.2%も増えている。そのうち、トロイの木馬に攻撃されたものは91.35%にも達している。業界筋は、黒客たちの間に、トロイの木馬ウイルスの製造、流通、販売、マネーロンダリングの各プロセスにおける明確な作業分担が存在していると指摘している。

さらに、あるベテランの業界専門家の予測では、中国全土の8割以上のクライアントパソコンが、ネットワーク黒客の制御下にあったことがあり、しかもその内の大半は持ち主が全く気付いていないという。インターネット世界で闇の産業がますます拡大していく現状について業界専門家は、「将来にわたりこうした事態が続けば、大衆のネットワーク経済に対する信頼を根本的に揺るがしかねない」と警鐘を鳴らしている。

一方、増加するネットワーク犯罪に対する取り締まりは困難を極めている。現在の中国の刑法第285条、286条、287条でネットワーク犯罪を取り締まるのは、現実的ではない。まずインターネット上での証拠の確保が難しく、多くの場合PCのオーナーが知らない間に黒客による攻撃が行われているので、攻撃元の特定が難しい。加えて、刑法が規定する「重大な経済損失」をインターネットで特定、算定することが困難なのだ。

法律は徐々に増え、やがてそれなりのフレームはできてくるだろう。だが、運用段階では上述のように難題が待ち構えている。中国政府と黒客のイタチごっこは、まだ始まったばかりなのだ。