ハッカー養成講座「1カ月で日本のコンピュータへ侵入できます!」

ところがビジネス界進出の夢はたったの1年で終わりを告げてしまう。2000年、上海緑盟は解散を宣言した。この失敗について当時の関係者は、「信奉してきた黒客の行動理念と商業資本の論理の間に衝突があったから」と釈明するが、「中国のネットワークセキュリティ企業の中には営利追求のため、故意にネット攻撃を行うものがあるなどという噂もあり、業績を上げるために法規制ギリギリの行為を行うことに、彼らが倫理的に耐えられなくなった」というのが真相ともいわれる。

ネットワークの普及は大方の予想を超えて速かったが、黒客の増殖はそれにも増して速かった。その背景には2000年以降、入手しやすいハッキングツールやソフトウェアが増え、「黒客になるためのハードル」がますます低くなったという事情が手伝っている。

ネットワーク上では、至る所に黒客養成講座があり、たったの300元(約4,500円)で他人のメールボックスに侵入するテクニックを教え込む。こうした"講座"を主宰する者たちは、多くの愛国主義的な宣伝文句をろうし、黒客養成サイトへの集客を謀った。「1カ月で日本のコンピュータへ侵入できるようになります」などの宣伝文句がネット上を飛び交った。

黒客、と聞いて人々が受ける第一印象は、ネットワーク技術に夢中になっている「マニア」といったところだが、今ではもはや職業化しており、インターネット上に多くの黒客広告を見ることができる。300元を支払えば1日でメールボックスに侵入できるし、500元なら5,000台のコンピュータへの同時侵入も請け負う。さらに高い代金を払えば、会社のサイトやサーバの攻撃もします、といった感じだ。

俗に「地獄の沙汰も金次第」という言い方があるが、この格言ほどいまの中国の黒客に当てはまる言葉はない。他人のコンピュータに存在する機密資料を盗んだり、他人のサイトやサーバーを攻撃したりと、金さえ払えば黒客たちに頼めないことはないといっていいだろう。