2000年前後に勢いをなくした愛国ハッカー

2002年4月、中国インターネット協会は公告を出し、組織的な黒客攻撃を禁止した。中国紅客連盟は不振に陥り、ほとんどアクセスされないサイトになってしまった。同時に、日増しに発展するネットワークセキュリティ産業により、黒客たちは相次いで転業に追いやられた。

ネットバブル花盛りで、創業への誘惑も多かった2000年前後になると、中国の黒客たちは徐々にその勢いを失っていった。元々秘密めいた地下世界のものだったのに、ビジネスの世界との接点がにわかに増大してくる。最大の理由は1998年に起きた一連の黒客の攻撃行動が、結果的に中国人のセキュリティ意識を高め、ネットワークセキュリティ産業が成長し始めたからだ。現実に戻れば黒客たちも普通の人間。自分の価値を生活と個人の将来にどう結び付けられるかが何よりの至上命題となる。そこで、今度は「昼間の世界」で黒客として養ってきた技術を利用し、ビジネス価値に変換することが、多くの黒客の目指すところとなっていったのである。

1999年、中国で最も古く、かつ最も強大な黒客組織であった緑色兵団が変身して「中緑連盟」となり、その年の7月に上海緑盟コンピューターネットワークセキュリティ技術(上海緑盟)という会社を設立した。その後、第一世代の黒客たちは相次いで剣を捨て、先を争うようにネットワークセキュリティ分野になだれ込んでいった。正確な統計数字こそないが、ある業界通によれば、当時の中国トップクラスの黒客の90%がネットワークセキュリティ専門家になったという。これら黒客社会のゴッドファザーたちは、かつては愛国の御旗を掲げ、いともたやすく民族主義者の衣を着たが、今度はあっという間にビジネス世界の世界にはまりこんでしまった。