搭載予定の機能
Thermoのコンセプトとその背景を踏まえた上で、実際のThermoがどういった機能を備えるかを見ていこう。
まずThermoが持つ機能の中で最も感動的なのは、PhotoShopやIllustrator、Fireworksで作成されたファイルを読み込み、グラフィックスコンポーネントを配置したMXMLファイルに変換できる、という点だ。これにより、デザイナが使いなれたPhotoShopやIllustratorで作成したデザインを、そのままRIAのユーザインタフェースに変換することが可能だ。これまでのRIA開発では、デザインからUIへの変換を、開発者が手作業で行っている場合が多い。Thermoを使用すればこうした手順が不要になるうえ、デザインの細部が失われる恐れもほとんどない。
Thermoは、それ自体がグラフィックス編集機能を備える。どのようなレベルの機能が提供されるかは未知数であるが、RIAのUIデザインを行ううえで十分なものになることは間違いないだろう。
RIAのUIデザインを行う際に必要な、ダミーの動的データなども利用できる。デザイン時はダミーデータを使用し、開発時は実際のデータソースから取得したデータを表示する、といったことをソースの改変なく行うことが可能。
また、個々のグラフィックスコンポーネントに対し、アニメーション効果やインタラクティブな機能を追加することができるのも、デモで実証済みだ。Flashのようなフル機能のアニメーション作成機能が提供されることはないだろうが、UIをよりリッチにデコレーションするためのエフェクトなどは、簡単にThermoで実現できる。
そして、Thermoはその見た目からは想像もつかないが、Flex Builderと同じくEclipseベースのIDEだ。これはつまり、Flex BuilderとThermoのプロジェクトファイルを共通化できることを意味する。ということは、Flex Builderを使う開発者の作業と、Thermoを使うデザイナの作業が、シームレスに統合されうるということだ。
さらに、ThermoにはActionScriptエディタも搭載されるとのことである。こうして、デザインもコーディングも行えるツールという方向にどんどん進化していくとなると、Flex Builderとの境界線が見えにくくなるような気もするが、そこはいくつも素晴らしいツールを輩出してきたAdobeのこと。デザイナ向けツールと開発者向けツールの間で、絶妙なラインを引いてくれることだろう。