Thermoが改善するRIA開発のワークフロー
以上を踏まえつつ、ここからは筆者の予想も含め、Thermoが世に出ることでRIA開発のワークフローがどう変化するかについて述べてみたい。
デザイナはまず、PhotoShopやIllustrator、Fireworksを用いて、創造力をフルに発揮したデザインを行う。その後、Thermoを用いて「RIAのユーザインタフェース」へと変換した後、以下のような作業を行う。
- グラフィックに対する「振舞い」の付与(矩形のグラフィックに対して「ボタン」の振舞いを追加するなど)
- よりUIをリッチに感じさせるための、各種エフェクトの追加
- スペランキング
最後に挙げたスペランキング(spelunking)とは耳慣れない言葉だが、ブリーフィングセッションを行ったMark Anders氏が使った単語で、「洞くつ探検」と言う意味だ。これがThermoにおいてどのような意味合いを持つかというと、「構造化されていないグラフィックの中から、振舞いを追加するべき部位を発見し、掘り起こす」というものだ。
RIAのUIであるということをそれほど意識せずに描かれたグラフィックに対して振舞いを追加するには、こうした作業が必要になることを見越しているのだろう。この作業は恐らくThermoだけで行えるものではなく、PhotoShopやIllustratorにおいてレイヤの分割方法を見直す、などの行為も必要になるのではないか。
また、Thermoが持つグラフィックス編集機能を用いることで、比較的シンプルなUIであればThermoで直接デザインを開始することもできるだろう。
こうして生成されたユーザインタフェースに対して、開発者はアプリケーションのロジックを組み込んでいくことになる。また、Thermoが生成したMXMLファイルのリファクタリングを行うのも開発者の役割だと思われる。これは、アプリケーションのUIとしてさらに洗練された構造化を行って、コードの見通しを良くすると同時に、UIのパフォーマンスを改善するためにも必要な作業となる。
また、こうした「UIデザイン→開発」という流れは、上流から下流に一度流れて終わり、というものでは決してない。開発者の手が入ったMXMLファイルを再度Thermoで修正してデザイン変更、という事も普通に行われるだろう。つまり、開発期間中はデザイナと開発者の協業が発生するわけだ。
こうした場合に威力を発揮しそうなのが、ThermoとFlex Builderは共通のプロジェクトファイルを使用できるという点だ。これにより、デザイナと開発者は同一のプロジェクトを対象として修正を行い、CVSやSubversionなどによるバージョン管理の恩恵をどちらも受けることができる。
ここで述べた見解を、図示すると以下のようになる。
デザイナとの協業ワークフローはいかに
Thermoはまだまだ開発途上のツールであり、まだ実際に触ることもできないため、その実力は想像するしかない。しかし、「デザイン」と「実際に動くRIA」の間に横たわっていた、「RIAのUIデザイン」というタスクを強力に補完するツールだけに、Thermoが実際に世に出てきた時のインパクトはかなり大きいのではないか、と思わせるものが確かにある。
一刻も早く、我々が触って試せる成果物が提供されることを望むばかりである。またその暁には実際のデザイナと協力して、今回述べたワークフローを実践したレポートをお届けしたいと考えている。乞うご期待。
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