マイクロソフトは19日、次世代Webをテーマとしたイベント「REMIX07」を東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催した。国内では昨年に続いて2回目の開催で、基調講演にはマイクロソフトのダレン・ヒューストン社長と米MicrosoftのDirector of Product Management, UX Platform & Tools担当のキース・スミス(Keith Smith)氏が登壇した。

ダレン・ヒューストン社長

キース・スミス氏

マイクロソフトでは今回のREMIX07に合わせ、ブラウザプラグイン「Silverlight」の国内5社の採用、地図情報プラットフォーム「Virtual Earth」のSDKなどの日本語版の提供開始を発表。ヒューストン社長とSmith氏の講演もそれらをふまえたものとなった。

最近のマイクロソフトは「Software+Service」という方針に注力している。もともとマイクロソフトはソフトウェア企業だが、最近のWebサービスのトレンドをふまえ、サービス事業にもビジネスを広げている。SaaS(Software as a Service)に加えてソフトウェアをを組み合わせることを重視しているところがマイクロソフトらしいところだ。

マイクロソフトはWeb2.0のトレンドに対して、WebデザイナーやWeb開発者向けの「Expression」、プラットフォームとしてSilverlightプラグイン、サーバーとして「Windows Server 2008」を提供を開始、もしくは今後提供しようとしている。これらのツールによって、開発者が容易にWebサービスを開発できる環境、リッチなユーザー環境、そしてセキュアにサービスを提供できる環境を実現していく。

マイクロソフトのServiceとしては各種Liveサービスなどがあり、たとえばLive IDを活用すれば、ID管理をマイクロソフト側に任せられる、といったメリットがある。「(マイクロソフトはこれまで)多くの開発努力をして、Webをパワフルなプラットフォームにしてきた」とヒューストン社長。

Windows Liveプラットフォーム。これらのサービスを自身のサービス内に組み込める

ヒューストン社長はWeb業界が「ホットな急速に変化する業界」と話し、「次世代Webのエクスペリエンスを実現するためのツール」(同)を提供し、Webデザイナーらの「イマジネーションを実現」(同)していきたい考えだ。

ヒューストン社長に続いて登壇したSmith氏は、次世代Webではこれまでの「普遍的なWeb(Universal Web)」に対して、デスクトップ並みのリッチなエクスペリエンスも求められており、それを実現するためのツールとしてSilverlightやExpressionなどを紹介。

Expressionシリーズの「Expression Encoder」。動画を一部だけエンコードし、エンコード結果を元の動画と比較できる

「Expression Blend」でビデオをサイトに埋め込んでいる

SilverlightはAdobeのFlashと同様に、Webブラウザ上でリッチなアプリケーションを実現するための技術だが、WindowsマシンだけでなくMacやLinuxでも動作する汎用性に加え、720pのHD品質のビデオも容易にWebに組み込める、AJAXで作られたサイトを再度書き直さなくてもそのままSilverlightに対応できるなどのメリットがあるという。

Smith氏の講演では動画配信GyaOを運営するUSEN、野村証券の株式投資解説サイトを構築したNRIネットワークコミュニケーションズ、アーティストサイトなどをホスティングするGMOホスティング&セキュリティがゲストで参加。容易にリッチなWebサイトを実現できるSilverlightのメリットを強調していた。特にGyaOは今まで実現していなかったMac対応が可能になるとして、早期にFlash並みにプラグインが普及することに期待感を示した。

ESilverlightで構築されたGyaO

野村証券の株式投資解説サイト。サイトの中に実際の人を配置してわかりやすく解説している

アーティスト・アイ武川さんのサイト。ビデオクリップをSilverlightで視聴できる

マイクロソフトはLiveサービスのAPIを提供しているが、その中でVirtual Earthの日本国内の地図情報、地図情報をWebサイトやソフトウェアと統合するための日本語版SDKを提供開始。ゲストに登場したリクルートでは、海外旅行サービス「AB-ROAD」とVirtual Earthを組み合わせた実験サイトを公開した。

AB-ROADの実験サイト。キーワードを選び、その周辺を3Dで閲覧できる

旅行プランを検索することも可能

実験サイトでは、野球、遺跡などのキーワードを選択するとVirtual Earth上にキーワードに合うスポットを表示、Virtual Earthの3D表示でリアルに場所をチェックでき、さらにそのスポットにかかわる旅行プランも表示できる。なお、Virtual Earthの3D画像は実際に飛行機で撮影してそれを3D化しているが、すでに国内でも撮影は行われており、近いうちに国内の3D表示も可能になるそうだ。

また、Media Centerを使うことでWebをリビングのテレビでも楽しめるようになっているが、これに関してはTBSがプロ野球・横浜ベイスターズの中継をネット経由で配信。実際の10~15分遅れで更新され、投手の投げた球種、打者との対戦成績、その日のダイジェストなど、さまざまな角度から映像を視聴でき、Webならではの機能をふんだんに活用している。

TBSのMedia Center向けサイト「HamastaWAVE」

これらのマイクロソフトの技術をSmith氏は、サービスをさらにマッシュアップするAPIと呼び、ID管理などを構築する必要がなく、「サービスの差別化の部分に集中できる」(スミス氏)という。

「(マイクロソフトの技術で)Webのエクスペリエンスを最適な形で構築できる。次世代Web構築のための最適なプラットフォームを提供する。(講演を聴取しているWeb開発者らに対して)次世代Webのために参加してもらいたい」(Smith氏)