KDDIが現在提供しているFTTHサービス「ひかりone」は、KDDI独自のCDN(Contents Delivery Network: コンテンツ配信網)と、東京電力との事業合併によって獲得した光ファイバによるアクセス網とを組み合わせるかたちで実現したものだ。5月にはひかりoneユーザー向けにPLC(Power Line Communication)モデムのレンタル開始をアナウンスしている。幕張メッセで6月13~15日に開催されたInterop Tokyo 2007の会場で、KDDIのひかりoneおよびPLC/宅内LANへの取り組みについて、同社のコンシューマ事業企画本部 コンシューマ事業企画2部 事業戦略2グループリーダー 課長の都築実宏氏に聞いてみた。
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都築実宏氏 |
KDDIグループの強みとは
まず、ひかりoneの特徴についてだが、同氏がキーワードとして挙げたのが「トリプルプレイ」や「FMC」といった要素だ。
トリプルプレイは、音声(電話)、映像(放送)、データ通信(インターネット)といった、従来は別々に提供されていた主要ネットワークサービスを統合して1つのネットワークで提供しようという動きで、FMC(Fixed Mobile Convergence)は、固定電話網(Fixed)と携帯電話網(Mobile)を融合することで新たなサービスを実現していこうという動きだ。世界の通信業界でも最新のトレンドとなっているこれらの動向にいち早く対応しているのが、ひかりoneのサービス面での特徴といえるだろう。
同氏はInteropの展示会場で開催されたセミナーでひかりoneのサービス概要を紹介し、そのなかでKDDIグループが「加入者回線保有」「長距離・国際・企業通信」「ブロードバンドサービス」「放送・映像配信サービス」「携帯電話」と、全要素を既に保有していることを他の事業者との差別化のポイントとして挙げている。
映像、ネット、電話をする"場所"
現在では個人宅でも安価で快適なブロードバンドサービスとして光ファイバを利用したFTTHサービスが急速に普及しつつある。総務省が公表しているブロードバンドの整備状況に関する統計では、平成16年第4四半期以降はFTTHの純増数がDSLの純増数を上回る状況が続いているという。これ自体は各社の競争による低価格化や利用可能なエリアの拡大などによるもので歓迎すべき状況なのだが、取り残された問題として残るのが、ユーザーの宅内のネットワークの整備だ。
都築氏は、「トリプルプレイで提供される音声電話、ビデオ映像配信、データ通信は、家庭内でもそれぞれ異なる場所で利用されるサービスだ」という。たとえば、PCを自室に置いてインターネットにアクセスする一方、大画面TVモニタはリビングなどの家族が集まる場所にあり、電話機は各室にそれぞれ設置してある、といった状況だ。一方、ひかりoneのようなトリプルプレイ回線では、これらすべてのサービスが集約されたかたちで1本の回線として宅内に入ってくる。典型的なのは、PCが設置された居室に回線を引き込んで「ホームゲートウェイ」を設置する形式だという。この場合、映像サービスを利用するためにTVモニタとホームゲートウェイを接続する、あるいは、音声電話を利用するために配線を行なう、という必要が生じる。
音声通話(電話)のための接続は、現状ではホームゲートウェイと宅内のモジュラ・コンセントを接続することで、宅内のどのモジュラ・コンセントに接続された電話機でも通話が可能になる、というかたちの接続が一般的だという。このため、ホームゲートウェイにもっとも近いモジュラ・コンセントと有線で接続すれば、各部屋への分配は既設の銅線が利用できるので、比較的対応は容易だ。もちろん、宅内配線が複数系統に分かれている場合などは対応が複雑になることもあるが、これは個々の住宅の設備配線に依存する部分なので、対応も個別に行なうことになる。
より対応が困難なのは、映像配信とデータ通信だ。こちらは音声通話に比べるとより大きな帯域を消費するため、宅内でも高速な接続が望ましい。さらに、電話と違って既設の配線の流用はあまり期待できない。
ひかりoneでは、同軸ケーブル・モデムのレンタルも行なっている。これは、TVアンテナとして敷設された同軸ケーブルがある場合、これを高速回線として流用することで各部屋への配信を可能とするものだ。同軸ケーブル・モデムは2台1組で利用し、モデム間の接続をアンテナ用同軸ケーブルで行なう。モデムにはEthernetコネクタも用意されているので、PCを接続してのインターネット接続などをホームゲートウェイから離れた部屋で利用できるほか、映像配信用のSTB(Set Top Box)を接続してTVモニタに映像を送ることも可能だ。
こうした有線による宅内配線をひかりoneが用意しているのは、サービスの品質を確保するために必須の宅内インフラとなるためだ。都築氏は「現状の宅内での接続には無線LANもあるにはあるが、サービス品質の面では不満も多い」という。その理由は、壁や柱といった遮蔽物の存在によって実効転送速度が大きく変動することに加え、通信品質が安定しない面も大きいからだ。インターネットアクセスなど、非同期で利用されるデータ通信であれば問題なくても、映像配信などのリアルタイム性の高いサービスを利用するためには、安定した通信品質が必須となる。