Seasarファウンデーションは27日、法政大学において、ソフトウェアエンジニア向けの技術カンファレンス「Seasar Conference 2007 Spring」を開催した。本稿では、『Seasar Conference Spring - 「目指すは"ブルーオーシャン"」、次期Seasar2の方針が明らかに』に引き続き、同カンファレンスの注目トピックをお伝えする。

Seasar2ベースのASPサービス「Backlog」

ヌーラボ 縣俊貴氏がスピーカを務めるセッション「Seasarとともに歩んできたプロダクト『Backlog』の開発事例 - どっこい生きてるSeasar2.2」では、Seasar2の利用事例が紹介された。

「社内ではJavaプロジェクトのほぼ全てがSeasar2ベース」(縣氏)というヌーラボでは、BacklogというASPサービス提供をしている。セッションでは、そのBacklogの内部的なレイヤアーキテクチャの解説が行われた後、その中でSeasar2のコア機能であるDI&AOPをどのように活用しているかといった内容が、設計部分にまで踏み込んで説明された。4,000ユーザを超えるASPサービスであるBacklogでの利用事例は、ライブラリの採択で迷っているユーザに対して大きなヒントになったであろう。

同氏は講演の最後に、「企業(ユーザ)としても積極的にOSSにコミットメントすることによって、企業(ユーザ)およびOSSの双方に利益が生まれる」と、企業とOSSとの付き合い方に関する見解を述べた。例えば、「エラーメッセージの意味が分かりづらい」といった報告をメーリングリストで行うだけでも、同様の問題に悩んでいた他のユーザを助けることになるし、プロダクト自体の品質向上につながる。自身が開発した「S2Pager」というプロダクトが「S2Dao」に取り込まれたという経験を持つ縣氏のメッセージは非常に印象的だった。

Webアプリケーションのロジックを日本語の文章で作れる「えび/なでじゃこ」

今回のカンファレンスで注目を集めた話題の1つとしてEscafeプロジェクトが挙げられる。

Escafeプロジェクトは、カンファレンス前日にWebサイトがオープンしたばかりのプロジェクトで、Webアプリケーションを手軽に作れるソフトウェア「Escafe」の開発を進めている。同プロダクトは、「EscafeWeb」(愛称、Tuigwaa)、「EscafeFlow」(愛称、S2Buri)、「EscafeRule」(愛称、えび)、「EscafeScript」(愛称、なでじゃこ)などから構成されている。もちろん、Seasarファウンデーション配下のプロジェクトの1つだ。

ここでは、橋本正徳氏の講演の内容を基に、Escafeに含まれる「えび」と「なでじゃこ」について説明しておこう。

EscafeRuleは、例えば「12歳以上は大人、それ以下は子供」「大人の男性の料金は1980円」「子供の女性の料金は980円」といったビジネスルールを記述したデシジョンテーブルを実行するためのエンジンだ。デシジョンテーブルはExcelファイルに記述。それをプログラムから呼び出すかたちで実行する。

一方、EscafeScriptは、日本語プログラミング言語「なでしこ」の影響を受けた日本語実行エンジン。「Seasar2で設定ファイルに記述する際に利用されているOGNLという言語の日本語版だと考えれば利用シーンが理解しやすい」(橋本氏)という。例えば、先述の「12歳以上」をプログラム的に記載すると「age>=12」となるが、これを「年齢は12歳以上」と記述することが可能となり、可読性が高まる。

EscafeRuleもEscafeScriptも単体で利用できるプロダクトではあるが、組み合わせて使うことによって、日本語で記述したExcelファイルを実際にアプリケーションとして実行することできる。そのため、エンジニア以外の人でも簡単にプログラミングを行うことが可能になる。

橋本氏のセッションは、プロダクトの素晴らしさと同氏の明るい人柄により、終始和やかな雰囲気に包まれていた。