企業の業務において、ITが欠かせないものとなっている。IT企業であるか否かを問わず、また業務時間であるか否かを問わず、わずか1時間の障害が企業の信用やビジネスを損なってしまうこともある。ビジネスの成功を阻む障害には、近年話題の情報漏えいのような内部統制に関わるリスクだけでなく、事故、自然災害、そしてテロも挙げられるだろう。

ITがなければビジネスが成り立たないという現状で、情報やデータの量だけでなく、価値もまた増大している。ビジネスの要件として「データをいかに保護するか」「いかに早く戻すか」が挙げられ始めた。

「私がIBMに在籍していた当時、世界貿易センター爆破事件(1993年)が発生した。世界貿易センタービルには日本の顧客が約20社ほど入居していた。その時に重要だったのは、どうやって元に戻すかだった」

日本CAの根塚眞太郎・代表取締役社長は、自身のIBM時代を振り返ってこう話す。さらに、「現状復帰が直ちにできなければならない。例えば、資金移動ができなければ、企業はすぐに倒産の危機を迎えることになる。(災害復旧の)手順、そしてデータをどうやって保護していくかが重要だ」と、事件から得た教訓を話す。

また、米CAのストレージ/ミッドマーケット担当シニア・バイス・プレジデント兼ジェネラル・マネージャであるRobert Davis氏も同様のことを訴える。

「従来、CAはグローバル企業をターゲットにしてきた。ところが一方で、より小規模な企業であっても、グローバル企業と同様の問題を抱えていることが分かった。カトリーナとして知られるハリケーンが米国の南海岸を襲撃した時には、何千という中小企業が災害に見舞われ、彼らは一晩にしてビジネスを失ったのだ」と語る。

防ぎようのない自然災害に見舞われ、データの損失・破壊が発生した場合であっても、データの迅速な復旧が企業経営の観点からも不可欠な要素となったのだ。

こうしたニーズに対応し、日本CAは7月から「CA ARCserve Replication」シリーズを販売する。包括的で継続的なデータ保護を実現する製品で、500~5,000人の従業員を抱える中規模企業がターゲットとなる。

「CA ARCserve Replication」シリーズは、下記5つの製品が用意される。

  • CA ARCserve Replication: データ・プロテクション
  • CA ARCserve High Availability: アプリケーションの可用性の確保
  • CA ARCserve Content Distribution: データ配信および統合
  • CA Assured Recovery: サイトやシステムのリカバリ・テスト
  • CA ARCserve CDP Solo: サーバ・ベースの継続的なデータ保護

「CA ARCserve Replication」と「CA ARCserve High Availability」では、CAが昨年4月に買収したXOsoftの技術「リワインド・テクノロジ」を標準で搭載する。リワインド・テクノロジは、データ復旧のポイントを、単に時間単位で設定するのではなく、データの変更単位などアプリケーションのイベント発生時に設定することを可能にする技術。同社では「一般的なスナップショットでは実現できない真のリアルタイム・レプリケーション」と位置づけている。

「CA Assured Recovery」は、「レプリケーションを中断せずに、本番データとして使えるかどうかをテストできる」(日本CA マーケティング部 ビジネスユニット・マーケティング 小川直樹・マーケティングマネージャー)製品で、「CA ARCserve Replication」などと組み合わせて利用する製品となる。

同社はこれまで、バックアップ製品「ARCserve Backup」を提供していたが、今後数年をかけてバックアップ市場とレプリケーション市場が融合・統合し、リカバリマネジメント市場になるのではないかと予測。レプリケーション製品となる「CA ARCserve Replication」も「ARCserve」ブランドで訴求を図る。

近しい製品が並ぶことになるが、小川氏は、法規制への対応という点ではオフラインメディアにバックアップするARCserve Backupを、データ復旧の点ではARCserve Replicationと、リカバリマネジメントの観点からトータルに提供できると自信を見せる。

まずはWindows環境で動作する「CA ARCserve Replication」「CA ARCserve High Availability」の出荷を7月から初め、以降、その他の製品を順次提供していく予定。価格は「CA Assured Recovery」を付けるなどすると変動するが、最小構成(2ライセンス)で680,200円(税別)からとなっている。

同社では販売・サポートも担う専任のプリセールスチームを立ち上げ、パートナーやエンドユーザーにトレーニングを提供していく。