「最近の若手、何を考えているのかわからない」「こちらは気を遣っているつもりなのに、なぜか距離が縮まらない」
管理職の方々から、こうした声をよく聞きます。
たとえば、こんな場面はないでしょうか。
上司:「さっきの会議、大丈夫だった?
部下:「はい、大丈夫です」
上司:「ならよかった」
会話は成立しています。けれど、本音は出ていません。
部下は本当は「少し納得できない部分があった」と思っているかもしれない。しかし、“言っていい空気かどうか”を瞬時に判断し、飲み込む。
この“言えるかどうかの空気”こそが、心理的安全性です。
Z世代に限らず、人は「自分の意見を否定されないか」、「評価を下げられないか」、「面倒な人と思われないか」を無意識に計算しています。
では、なぜZ世代との間でそれが起きやすいのでしょうか。
彼らは「自律」「有能感」「関係性」を大切にする傾向があります。これは自己決定理論でも示されている、人の基本的な欲求です。
つまり、「尊重されているか」「意味があるか」「つながれているか」を非常に敏感に感じ取っているのです。
流行語で距離は縮まらない理由
【ありがちな会話】
上司:「最近“推し活”とかしてるの?」
部下:「あ、はい…」
上司:「俺も何か推し作ろうかな~(笑)」
場は悪くありません。でも、深まりません。
なぜか。
会話の主語がずっと「上司」だからです。
迎合は、一瞬の親近感をつくります。しかし心理的安全性は生みません。
【信頼される会話】
上司:「推し活ってよく聞くけど、どんなところが楽しいの?」
部下:「世界観にハマる感じですね」
上司:「なるほど。ハマれるものがあるって強いよね」
ここで起きているのは、“承認”です。「あなたの世界を尊重している」というメッセージが伝わると、人は安心して話せるようになります。
心理的安全性は、特別な制度ではなく、“日常の承認の積み重ね”で生まれます。
武勇伝が逆効果になる理由
【ありがちな会話】
上司:「俺たちの頃は終電まで働いてた」
部下:「そうなんですね」
上司:「今は恵まれてるよな」
Z世代は、ここでこう考えます。
“それを求められている?”“今のやり方は否定されている?”
心理的安全性は、「比較」や「暗黙の評価」で簡単に下がります。
【信頼される会話】
上司:「若い頃、無理して失敗したことがあってね。相談できなかったのが一番の失敗だった」
部下:「そうだったんですね」
上司:「だから、迷ったら早めに言ってほしい」
ここでは過去が“教訓”に変換されています。さらに、「失敗しても関係性は壊れない」というメッセージが伝わっています。
弱さを適切に開示することは、リーダーの信頼を下げません。むしろ、「この人も人間なんだ」と感じさせ、心理的安全性を高めます。
無理な若者寄せが信頼を下げる理由
【ありがちな会話】
上司:「俺もTikTokやろうかな~」
部下:「え、そうなんですか…」
若手は敏感です。本心なのか、距離を縮めるための演出なのかを感じ取ります。
信頼は、「一貫性」から生まれます。
【信頼される会話】
上司:「TikTokってどんな動画が人気なの?」
部下:「テンポのいい短い動画ですね」
上司:「なるほど。俺は見る専門かな(笑)教えてくれてありがとう」
ここには“自分をよく見せようとする意図”がありません。
・自分の立場を偽らない
・知らないことを認める
・学ぼうとする
この姿勢が、「対等な関係性」をつくります。
嫌われる上司と好かれる上司の違い
違いは、若く振る舞えるかどうかではありません。
- 正解を握り続けるか
- 意味を共有できるか
- 評価で動かすか
- 尊重で動かすか
Z世代は甘やかしてほしいのではありません。納得して動きたいのです。
迎合は短期的な親近感。誠実さは長期的な信頼。
その違いが、エンゲージメントを左右し、 最終的にチームの生産性を決めます。
次回は、 【会議や指示の意味を言語化できる──Z世代がついてくるのは、完璧な上司ではなく“on温度のある人”】【意図を語れる上司】 をテーマに解説します


