「最近の若手社員が何を考えているのか、さっぱりわからない」――これは、長年上司世代が抱える共通の悩みかもしれません。しかし、社会環境が大きく変化する現代において、Z世代と呼ばれる新入社員の持つ価値観や行動は、これからのビジネスを加速させる大きな「強み」になり得ると考えます。

自身の業務に加え、新入社員の育成を担う管理職や先輩社員は、これまでの「当たり前」を押し付けるだけでは、彼らのポテンシャルを引き出すことはできません。新入社員が育った環境を理解し、その特性を活かしたコミュニケーションと育成方法を探っていくことが不可欠です。

本連載では、新入社員の特性を理解し、AIや音声解析といった最新技術も活用しながら、彼らが生き生きと活躍できる環境をどう創るか、そのヒントをお届けします。

世代を問わず、仕事の成果を最大化するためには円滑なコミュニケーションが不可欠です。しかし、「自分が新入社員だった頃に上司にされて嬉しかったことを部下にしてみても、まったく響いていない…」と感じたことはありませんか?

それは、第1回第2回で解説した新入社員が育ってきた時代背景や価値観とのギャップが原因かもしれません。今回は、そんな新入社員とのコミュニケーションで陥りがちな失敗パターンとその背景にある理由を解説します。

「見て学ぶ」では、新入社員は行動できない

「私のときは先輩の背中を見て、自分で学んだものだ」──そうした経験を持つ方も多いでしょう。先輩の隣で実務を見て学ぶ「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」は、なじみ深い新人教育の一つです。

例えば、隣に座る新入社員に「とりあえず、今日のところは私のやることを見てて」と声をかけ、自分の作業に没頭してしまうと、新入社員は、先輩が何をしているのか、質問して良いのかも分からず、一日が終わるころには「私は今日、何もできなかった…」と孤立感を深めてしまいます。

新入社員が過ごしたコロナ禍の学生生活では、「受け身で授業を受ける」よりも「自ら学んで調べてレポートを書いて提出する」といった自律的な行動を求められたこともあり、「座ってて」「見てて」と受け身でいることを求められると、「なんのために?」「タイパ悪くない?」と疑問に感じるという特性もあります。

「どこを真似したり、スキルを身につけたら成長できるのかわからない」
「先輩が行っている作業の流れが理解できない」

といった疑問を聞く機会を設けないと、新入社員は放置されていると感じてしまい、モチベーションもスキルも上げづらい悪循環に陥ってしまうこともあります。

「ただ聞く」だけでは、知識が定着しない

YouTubeやSNSに慣れ親しんでいる新入社員は、頻繁な通知や短い動画コンテンツに慣れているため、情報を一口サイズの「塊」で消費することに慣れています。そのため、座学のような長時間の講義形式の研修は、彼らの学習スタイルと合わず、退屈で非効率的に感じられてしまいます。

Z世代はすぐにオンラインで検索する能力に長けています。少し調べればわかるような情報を研修で伝えることは、「情報を効率的に取得したい」という合理的な思考と合致しません。

こうした特性を活かすには、一方的な講義ではなく、短いグループワークや質疑応答、ディスカッションをこまめに取り入れ、参加者が主体的に関われる機会を増やす必要があります。

また、簡単に検索できる情報ではなく、実践的なノウハウや応用、対人スキルなど、研修でしか得られないユニークな価値を提供することが鍵となります。さらに、短い動画コンテンツやeラーニングを組み合わせることで、Z世代の「一口サイズの学習」習慣に合わせた学びを提供できます。

フィードバックが「遅い」と、次に活かせない

あなたの会社では、フィードバックはどのように行われていますか? 多くの企業では、四半期ごとや年度末の評価面談などで時間を取り、フィードバックを行うことが一般的でしょう。しかし、これは新入社員にとって有効な方法ではないかもしれません。

彼らが慣れ親しんでいるのは、SNSやオンラインゲームなどで見られるリアルタイムかつ頻度の高いフィードバックです。「いいね」やコメント、評価など、行動に対して即座に反応が返ってくる環境で育った彼らにとって、数ヶ月に一度の面談は期間が長く感じられます。

このギャップを埋めるためには、大小に関わらず、良い点・改善点をその都度、短く、建設的に伝えることが効果的です。また、「短文・即レス」文化に慣れているZ世代には、チャットツールを活用し、フランクなコミュニケーションの場として機能させることで、心理的安全性を高めることにもつながります。

新入社員との関係を築く第一歩は、「なぜ?」を共有することです。業務の背景や目的を明確に伝え、彼らが自ら考え、行動できるきっかけを作りましょう。

そして、良い点や「次はこうしてみよう」 といったフィードバックを、SNSのように気軽に、かつ頻繁に送ってみてください。こうした新しいコミュニケーションの形が、チームに一体感を生み出し、より良い成果へとつながります。