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5 エグゼクティブはなぜ稽古をするのか

海外からも称賛される「日本一、所作が美しい人」は誰か

AUG. 02, 2025 11:00
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多忙な経営者が、茶道や武道といった日本の稽古に打ち込んでいます。なぜ業界で活躍するような人物は稽古に励むのでしょうか? 本連載では『エグゼクティブはなぜ稽古をするのか』(梅澤さやか著)から、一部を抜粋して紹介します。

第5回は「日本一、美しい所作をする人」です。

日本一、美しい所作をする人

日本一地価が高い銀座のど真ん中、インバウンドの観光客で賑わうGINZA SIXの地下に能楽堂があるのをご存じでしょうか。煌びやかな商業施設の地下3階、ワインショップのENOTECAを抜けてエスカレーターを降りると、立派な観世能楽堂が現れます。

ある日、『現代の匠たち』というお題で、人間国宝が集う舞台に参りました。そこで、私が釘付けになったのが、最初のシンポジウムに出演されていた京舞の井上八千代氏のお姿です。井上氏は、京都を拠点に女性にのみ継承することを許されている日本舞踊・京舞井上流で五世八千代を襲名し、50代の若さで人間国宝に認定された方です。井上流は京都五花街のひとつ、祇園甲部の芸舞妓の流儀としても知られています。毎年4月の1カ月間、京都の春の風物詩として祇園で行われる「都をどり」の京舞を楽しみにしている方もいらっしゃると思います。

その流儀を継いだ井上氏は、京舞の立ち方、歩み方、手の動かし方という所作を生まれたときから体得しているからこそ、普通に座ってお話しされているだけなのに、柔らかさと芯の強さを兼ね備え、目を見張るほど美しいのです。日本の女優さんでも所作を美しくするために日本舞踊をやっている方は多くいらっしゃいます。その本流として、日本で最も所作の美しい人を挙げるとすれば、私は自信を持って井上氏のお名前を挙げます。

ある友人が、「人は誰でも若さに惹きつけられるものだ。だから芸能人やインフルエンサーはみな若い」という持論を披露しているのを聞いたことがあります。しかし、井上氏はお年を重ねているにもかかわらず、いや、むしろ年を重ねてきたからこそ、その佇まいは澄み切っています。そして、真っ直ぐな強い説得力があり、発光しています。まるで、薄暗い部屋の中で蝋燭の炎がゆらゆらと揺れているのを、時間を忘れて見つめているかのように抗いがたい魅力があります。

その日、井上八千代氏自身が振り付けた『葵上』が舞台の最後を飾りました。『葵上』は『源氏物語』でも有名な、光源氏の年上の恋人である六条の御息所が、光源氏の正妻・葵上への嫉妬から生き霊となって枕元に現れたあと、松風とともに消え去るという踊りです。高貴な女性の苦悩や女心の変化を静かに深く表した、賑やかではない演目です。それにもかかわらず、目を離せないほど魅了されるのです。

この踊りには、直線的な所作のなかに、メロディにうねりや高低とともになめらかで曲線的な動きが入ります。能楽に通じるような強い型があったかと思えば、日本舞踊特有のやんわりとした表現もあります。踊りを言葉で説明するのはとても難しいですが、同じ姿かと思えば違い、違う姿かと思えば同じような所作の流れがあります。それは、井上氏の立ち姿に感じたのと同じく、蝋燭の火を眺めている感覚に似ていました。

長年の稽古で鍛えられた所作の素晴らしさは、海外の方も理解しています。国際交流基金が京舞を紹介しているYouTubeの動画には、たくさんの国から賞賛のコメントが寄せられていますので、ぜひ見てみてください。

『エグゼクティブはなぜ稽古をするのか 』(梅澤さやか 著/クロスメディア・パブリッシング 刊)

茶道や武道の「稽古」と聞くと、敷居が高く窮屈というイメージがあるかもしれません。しかし、多くの経営者は、多忙にもかかわらず、稽古に打ち込んでいます。どうしてでしょうか。

以下のような効能が稽古にあるからでしょう。

  • リフレッシュ効果がある
  • 心と体の健康を整えることで、より高いパフォーマンスを発揮するための基盤となる
  • 創造力や問題解決力が自然と磨かれ、ビジネスに新たなアプローチが生まれやすくなる
  • 肩書きや立場を超え、ひとりの人間として出会うことで、本質的な人脈が育まれ、深いコミュニケーション力も磨かれる
  • 稽古は、仕事と人生を豊かにする「習慣」なのです。

    本書では、経営者やビジネスパーソンが実践する「稽古」の事例にふれながら、稽古の魅力と効能を解明します。さらに、そのエッセンスを日々の仕事に応用する方法もご紹介します。

    稽古は、AIが持っていない「身体」と「感性」を活かして、高度な知性を発展させる方法です。それこそ現代のエグゼクティブに求められる力です。また、海外からも大きな注目を集めている日本文化の豊かな伝統が凝縮されたものです。稽古によって日本文化を体得することは、これからの時代のブランディングにとって大きな力となるでしょう。

    稽古に取り組んでいる方にも、未経験の方にもたくさんの発見がある一冊です。

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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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