大正製薬は7月29日、「エピジェネティクス(後天的な遺伝子制御の状態)」の視点から生活習慣が健康に及ぼす影響について、エイジマネジメント研究の専門家・日比野佐和子医師(医療法人社団康梓会 SAWAKO CLINIC x YS 統括院長/大阪大学大学院医学系研究科未来医療学寄附講座 特任准教授)にインタビューした内容を公表した。
日比野医師によれば、私たちの遺伝子は本来、「健康を維持するための正しい働き方」を備えているとのこと。しかし、長年にわたる不摂生な食生活やストレス、睡眠不足、喫煙などの悪い生活習慣が続くと、その影響が「エピジェネティックな変化」として蓄積され、遺伝子の働きが本来のバランスから乱れてしまうという。
「いわば"遺伝子のスイッチ"が誤ってオン・オフされるような状態です。たとえば、本来ならば活発に働いてほしい細胞修復や抗炎症の機能をもつ遺伝子が沈黙してしまったり、逆に炎症を引き起こす遺伝子が過度に活性化したりすると、病気や老化のリスクが高まります。」
近年の研究では、特定の栄養素や生活習慣の改善を通じてこのような「エピジェネティクス」を"書き換える"こと、「エピジェネティック・リプログラミング」が可能であることが分かってきたそう。そしてこれまでの解析から「魚介類中心の食生活」、「定期的な有酸素運動」、「良質な睡眠環境」が、より若々しいエピジェネティック年齢と相関していることが示されているという。
このうち、長寿につながることが期待される食事として日比野医師は、「地中海食」を挙げている。
「地中海食は、魚介類、オリーブオイル、ナッツ類、野菜、果物、全粒穀物、豆類などを中心に構成され、赤身肉や加工食品は控えめ。こうした食事スタイルは、良質な脂質や食物繊維、そして多様なポリフェノールを豊富に含んでおり、細胞レベルでの炎症や酸化ストレスを抑える効果が期待されています。」
実際にスペインで行われた大規模な臨床研究でも、魚介類を頻繁に摂り、赤肉・加工肉は週1回未満に抑え、毎日30gのナッツ、大さじ4杯のオリーブオイル、全粒穀物を主食にすることで心血管疾患の予防効果が得られると実証されたとのこと※1。
他にも下記の栄養素・食材の働きについて紹介している。
タウリン:細胞の浸透圧を整え、自律神経を安定させるとともに、強力な抗酸化作用も発揮。
L-システイン、グルタチオン:体内の抗酸化環境を高め、ターンオーバー(細胞の生まれ変わり)を整える働きがある。
ポリフェノールとオレイン酸:細胞の老化を防ぐ。
ビタミンC、カロテノイド、葉酸:細胞の修復や免疫強化に貢献する。
全粒穀物:ビタミンB群や食物繊維が豊富で、代謝や腸内環境を整えることで遺伝子のスイッチの正常化を助ける。
豆類:植物性たんぱく質や鉄分、イソフラボンなどを含み、ホルモンバランスや抗炎症作用に寄与する。
ビタミンD:免疫調整作用があり、エピジェネティックな変化にも関与することが示唆されている。※2
オメガ-3脂肪酸:抗酸化作用を発揮する。※3
亜鉛:傷ついたDNAの修復や免疫調整に不可欠なミネラルといわれている。※4
発酵食品:乳酸菌やビフィズス菌によって腸内フローラのバランスを整えることで、免疫細胞の7割が集まると言われる腸内環境が整い、免疫力や代謝を安定させる。
※1/全粒穀物介入研究(García-García I. et al. 2024)『Examining nutrition strategies to influence DNA methylation and epigenetic clocks: a systematic review of clinical trials』Frontiers in Aging, 5:1417625。
※2/ビタミンDとエピジェネティクス研究(Carlberg C. et al. 2012)『Vitamin D and the epigenome』Frontiers in Physiology, 3:164。
※3/オメガ-3脂肪酸補充試験(Clarke-Harris R. et al. 2017)『Long-chain polyunsaturated fatty acids and DNA methylation in adult humans: a systematic review of randomized controlled trials』Clinical Epigenetics, 9:43。
※4/ 亜鉛とDNA修復研究(Song Y. et al. 2009)『Zinc and the DNA damage response in human health and disease』Mutation Research, 733(1–2), 111–121。


