2025年末、自動車業界に大きな衝撃が走りました。欧州委員会が2021年に決定した「2035年から内燃機関(ICE)の新型車の販売を禁止する」という方針を撤回したのです。
その理由としては、電気自動車(BEV)への移行が思ったように進まないという物理的な面と、BEV生産については中国が覇権を握ってしまいそうという政治的な面の2つがあると思います。
では、いわゆる「EVシフト」が急減速している今、我々のような一般市民が次に買うクルマとしては何がいいのか、ということになると、最適解に近そうなのが「プラグインハイブリッド車」(PHEV)ということになるのでしょう。
PHEVの仕組みは?
「PHEV」は「プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ビークル」の頭文字です。
「プラグイン」は、プラグをコンセントに差し込んで、クルマの内蔵バッテリーを外部から充電できるという意味。通常のハイブリッド車(HEV)とは、ここが大きく違うところです。
次の「ハイブリッド」は、異なるものを組み合わせるということ。自動車の場合は、エンジンと電気モーターという2つの動力源を使用できることを意味します。
「エレクトリック・ビークル」は文字通り電気自動車です。大きなバッテリーを搭載するPHEVは電気だけで相当な距離が走れることから、電気自動車の一員である、という認識でこの名称がつけられたのです。
つまり、BEVとHEVを合体させるとともに、コンセントをつなげば外部から充電することができるクルマがPHEVと呼ばれているのです。
PHEVの構成要素としては、HEVより大容量の駆動用バッテリー、クルマを動かすための電気モーター、発電や高速走行時の動力源となるエンジン、充電器から電気を取り込む充電ポート、モーターとエンジンをどのように使うかをコントロールするPCU(パワーコントロールユニット)の5つが挙げられます。あ、もちろん、それらを搭載するボディが必要なのは当たり前ですが。
PHEVのメリット、デメリット
PHEVの持つ最大のメリットは、BEVのネガポイントである電欠の心配や充電に時間がかかるという点が克服できていることです。もしバッテリーがなくなったとしても、エンジンで走行や充電ができるので、充電器の少ない場所や長距離移動でも安心して出掛けることができます。充電スポットが他車に占領されていて待ち時間が発生したり、次のポイントを探したりというイライラもなくなるので、精神的にも余裕ができます。
また、最新のPHEVはモーター走行だけ(充電しておいた電気だけ)での航続距離が80~100kmをマークするものが増えてきたので、自宅に充電環境があり、毎日決まった距離(せいぜい数十km)しか走らない、といった使い方であれば、燃料補給のためにわざわざスタンドに行く必要がなくなり、それより経済的な電気代だけで賄うことができます。
走り自体も、大トルクを発生するモーターのおかげで発進時から強力な加速を得ることができます。さらには静粛性が高いので、ICEより一段上の高級モデルのような走りが楽しめます。もちろん、早朝や深夜帰宅の際に、クルマが発生する騒音で周囲に迷惑をかけることもなくなります。
走りの設計思想としては、HEVがあくまでエンジン主体であるのに対して、PHEVはたっぷりと貯めた電気がなくなるまでエンジンを極力使わない設定になっている、という違いがあります。
また、災害の多い日本のような場所では、クルマを蓄電池代わりにして、いざという時には自宅に給電する「V2H」が使えますし(急速充電ポートを備えたPHEVのみ)、エンジンを使って発電できることから、BEVよりも長時間の電力供給が可能です。通常時でも、アウトドアのバッテリー役として、環境にやさしく便利なキャンプライフまで実現することができます。
一方のデメリットは、大きなバッテリーや複雑なシステムを搭載することから重量が重くなり、価格はHEVに比べて50万円~100万円ほど高価になります。補助金が活用できますが、さすがにこの差を補うほどの額ではありません。重いクルマに対する課税という話も出ていますし、当然、タイヤの減りも早くなります。
またEV走行ばかりだと、搭載する燃料のメンテが必要になる場合があります。大きなバッテリーを積む対価として、室内スペースがわずかに侵食されるモデルもあります。充電に関しては、外で充電するとその額は結構な出費になるため、できれば自宅充電が理想です。ただし、そのために設備を新設するのなら、10万円以上の出費が必要になります。
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2015年に登場した2代目「アウトランダー」のマイナーチェンジモデル。三菱自動車は、この世代のアウトランダーを長く(フルモデルチェンジせず)販売し続けました。なかなかPHEVが普及しなかった当時の状況を反映しているのかもしれません
PHEVはどんな人に向いている?
以上のようなPHEVの特性から見ると、自宅に充電環境がある、毎日の通勤や買い物の距離が60km~80km程度の範囲に収まる、週末にはレジャー用途として長距離移動をすることがある、モバイルバッテリーとしてもクルマを使いたい、災害への備えとしてクルマを使いたい、こんな条件に当てはまる人には、その最適解としてPHEVモデルがピタリとハマるはずです。
掲載した写真は三菱自動車のアウトランダーPHEVで、2013年の2代目(初代アウトランダーにはPHEVモデルなし)発売以来、2015年のマイチェンを経て2021年に現行3代目となり、現在では2024年のマイチェンモデルが販売されています。PHEVとして長い歴史を持つとともに、その代表的モデルとして販売も好調を維持しています。















