ホンダが「変革」に向けた動きを矢継ぎ早に打ち出している。「軽自動車の会社」というイメージが強まり、四輪車事業で苦境に立つホンダが変革に挑む背景とは。
F1復帰の理由は?
ホンダの変革と挑戦が加速している。
2026年2月20日には、自動車レースの最高峰「フォーミュラ1」(F1)に復帰すると発表。アストンマーティンのマシンにパワーユニットを供給する。発表会でホンダの三部敏宏社長は、「F1挑戦の根底には、創業者の本田宗一郎の思いがある。世界一にこだわるホンダの挑戦のDNAの原点だ」と強調した。
ホンダは1964年のF1初参戦以来、撤退と参戦を繰り返してきた。2026年シーズンは5度目の挑戦となる。
さらに2026年4月には、本社の四輪車開発部門を分離して、本田技術研究所に移すこととしている。4月1日付けで新設する「企業変革責任者」には三部敏宏社長が自ら就任し、“ホンダ変革”を担うことになった。
変革に本腰を入れるホンダに何が起きているのか。なぜいま、変革が必要なのか。
5度目のF1復帰には「ホンダらしさ、“走り屋”再興を狙う」意図がある。
日本市場では軽自動車「N-BOX」がベストセラーとなっているが、逆にN-BOXの販売が突出した結果、「ホンダは軽メーカー」というイメージが強くなっている。ホンダの内部やOBからも、「とがったホンダ車が少なくなり、つまらない会社」になったとの意見があり、イメージ転換を望む声が大きくなっている。
F1は2026年からのルール変更で電動モーターの比率が高まり、再生可能燃料の使用も義務化される。ホンダは電動化技術を持ったエンジニアを育成する好機と捉え、さらにスポーツブランドの再構築も狙う。
今回のF1復帰に合わせてホンダは、「ホンダ・レーシング」(HRC)の名を冠する量産車を投入していく方針だ。空力性能やパワーユニット制御など、レースで得た高効率技術を市販モデルに取り入れて、既存の「シビックタイプR」や「ヴェゼル」などへの追加投入を図る。
四輪車事業の逆境を跳ね返せる?
ホンダはこの第3四半期(2025年4~12月)の連結決算で、四輪事業の営業損益が1,664億円の赤字に陥った。ホンダが積極投資してきた電気自動車(EV)の逆風を受けて、2025年度通期では、提携していた米GMとの共同開発中止などに伴う損失として約7,000億円を計上することになる。
ホンダでは苦境にある四輪車事業の立て直しが急務となっている。本社に置いている四輪車開発部門を4月1日付けで本田技術研究所に移すのも、立て直し策の一環だ。
本田技術研究所は創業者の本田宗一郎氏が1960年にホンダ本社から分社化して設立したもので、元々はホンダの研究・開発部門の独立体だった。ホンダは開発効率を優先するため、2020年に四輪車の開発部門を本社に吸収していたが、再び本田技術研究所に自由を与えて、経営から距離を置いた独立組織で創意工夫を促し、技術開発力を高める。
三部敏宏社長が自ら就任する「企業変革責任者」の動向にも注目したい。
三部社長は2026年4月で就任6年目に入り、ホンダ変革が最後の大仕事になる。一方で、ホンダ役員人事では、4月1日に秋和利祐執行役四輪開発本部長が本田技術研究所社長に就任する。ホンダの社長は本田技術研究所社長から選ばれることが通例となっており、三部社長自身も本田技術研究所社長から本体のホンダ社長に2021年4月に就任した経緯がある。ポスト三部の最有力候補に秋和氏が浮上したと言えよう。




