三菱自動車工業の「デリカ D:5」は「世界で唯一のオールラウンダーMPV」であり、フルモデルチェンジなしで長く販売が続いているにも関わらず、いまだに売れ続けている特異なクルマだ。三菱は今回、同モデルの大幅改良を実施。今回も全面刷新ではないわけだが、何が変わったのか。
三菱自動車で最長寿! デリカの歴史
三菱自動車のデリカといえば、トラックをベースとした1BOXタイプの「デリカコーチ」が登場した1968年以来、今年で57年目を迎える同社の最長寿モデルだ。2023年にデビューした軽自動車版「デリカミニ」を加えた現在までの累計販売台数は、なんと148万台に達するという。
デリカが“4WDのクロカンワンボックス”という独自のスタイルを確立したのは、1979年の2代目「デリカスターワゴン」からだ。1986年の3代目では大型バンパーを採用するなどし、さらにそのキャラクターを強めた。
1994年には後継モデルとして、本格オフローダー「パジェロ」譲りのスーパーセレクト4WDシステムを搭載したスーパープレジャーRV「デリカスペースギア」が登場。2007年には「世界で唯一のオールラウンダーMPV」をコンセプトに、デリカの5代目であることをネーミングとした「デリカ D:5」にフルモデルチェンジしている。
現行型(5代目)デリカ D:5は、フルモデルチェンジなしで長く生産が続くクルマでもある。2019年のマイナーチェンジでフロントフェイスを一新したが、全面刷新をすることなく、今年でデビュー18年目を迎える超ロングセラーモデルだ。
今回は、さすがにフルモデルチェンジか……と思いきや、「ジャパンモビリティショー2025」で登場したのは、またもや“大幅改良”モデル。なぜフルモデルチェンジをしない? そして、大幅改良でどこが変わった? 一足早く実車をチェックしてきた。
なぜフルモデルチェンジしない?
商品概要を説明してくれた商品戦略本部 チーフプロダクトスペシャリストの藤井康輔氏によると、デリカ D:5は今でも販売台数が増加中だという。
「国内でのデリカD:5は昨年度に(2024年度)に約2.2万台を販売しました。2019年のモデルチェンジ以降で最多の台数です。今年度は昨年度を上回るペース(2.5万台あたり?)で受注しています。D:5は年数を追うごとに台数が増えていくという、ちょっと特殊なモデルとなっています」
その理由としては、「2024年については特別仕様車『CHAMONIX』(シャモニー)が販売の半数以上の52%を占めていて、もうひとつの特別仕様車『ブラックエディション』(9%)と最上級グレード『P』(26%)を含め、非常に付加価値の高いモデルが販売の9割近くを占め、大変好評だった」ことが挙げられるという。つまり、売れないから長い間、フルモデルチェンジをせずに“放置”しているというのとは、180度異なる理由で販売が続いているのだ。
となると、現行モデルがこれだけ人気があるのだから、急いでフルモデルチェンジする必要はない、と三菱が判断するのはもっともだろう。
“電気シェーバー“ではなくなった?
デビュー時のD:5はメッキを多用したダイナミックシールド顔が存在感抜群で、口の悪い人からは「電気シェーバーみたい」と言われるほどの反響を呼ぶ賛否両論なデザインだった。しかし、前段で紹介したように好調な販売台数をキープ(というかアップ)したのだから、これはもう大成功だったというほかない。
眼前のニューモデルは、その部分がマットなブラックマイカに塗られていて(前出のシャモニーもここがブラックマイカ塗装だった)、形状も変わった(波のように見えたラインがなくなった)ので、もはやシェーバーには見えず、より精悍な顔つきになっている。
大きな「DELICA」のエンブレムを前後ガーニッシュの高い位置に取り込むとともに、リアゲートパネルはシンプルなデザインに。またサイドでは、新採用のホイールアーチモールを取り付けてオフロード感をアップし、18インチアルミホイールが新デザインになっている。
ボディカラーは人気の「グラファイトグレーメタリック」のほか、光の当たり方によってブルーのハイライトが映える「ムーンストーングレーメタリック」と「ブラックマイカ」の新色2トーンモデルが加わった。
ランエボ由来の技術をついに導入!
インテリアでは、シャモニーで好評だった撥水機能付きスエード調素材と合皮のコンビネーションシートや本革シートを採用したり、ピアノブラックの加飾パーツをつや消しのダークグレーや金属調のものに変更したりすることで、ギア感とプレミアム感がアップ。メーターはクラシックモードとエンハンスモードの2つが表示できる8インチカラー液晶となって視認性が向上している。
インパネの一等地にあった4WDのモード切り替えダイヤルがドライブモードセレクトダイヤルに変更となったのが、今回の大幅改良の大きなトピックだ。このダイヤルを操作すれば、三菱独自の車両運動統合制御システム「S-AWC」が提供する4つのドライブモードを切り替えられる。
あの「ランエボ」が初搭載し、現在はフラッグシップの「アウトランダーPHEV」が搭載するS-AWCは、前後のトルク配分をコントロールする「4WD」、左右輪間の駆動/制動を最適制御する「AYC」、制動力とエンジン出力を制御する「ASC」、ブレーキ時のタイヤロックを防ぐ「ABS」を組み合わせた、三菱が過酷なラリーで培った独自技術だ。これに「ノーマル」「エコ」「グラベル」「スノー」の4つのドライブモード(メーターにもそれぞれが表示される)と、下り坂で車速を一定に保つ「ヒルディセントコントロール」(ボタンはダイヤルの下にある)が合わさったことで、あらゆる路面での走破性と操縦安定性が向上している。
デビュー時点から、他社にはない唯一無二のオールラウンドMPVとして、小変更を繰り返しつつ今まで生き延びてきたD:5。今回の改良ではプレミアム感と走行性能が大幅にアップし、「エンハンスド・オールラウンドMPV」としての特徴がさらに強まった。
2.2Lクリーンディーゼルエンジンと8速スポーツモードATの組み合わせには変更なし。価格は大台の500万円以下に抑えた451万円(G)から494万4,500円(P)だ。
7~8人がきちんと乗れて、どんな道でもガンガン走ることができるという世界で唯一の存在がデリカD:5。これなら、まだまだ寿命を伸ばしていけそうだ。































