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「コメダ珈琲」「焼肉きんぐ」「CoCo壱」「ヨシックス」――地元の億り人投資家が語る、東海・飲食株の『強さの理由』と業界に潜む『成長スピードの陰り』

Updated OCT. 07, 2025 16:33
Text : 西脇章太
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昨今、東海地方を拠点とする上場飲食企業が投資家から注目を浴びている。コメダホールディングス(コメダ珈琲)、物語コーポレーション(焼肉きんぐ)、壱番屋(ココイチ)といった東海地方発の外食チェーンはいずれも業績が堅調で、株価も安定して推移してきた。

ただし、その勢いは決して恒久的とはいえない。直近のデータを見ると、成長スピードには陰りが見え始めているのだ。

では、なぜここまで安定成長を続けられたのか。そして今後の投資判断では何に注目すべきなのか。30年の投資歴を持つ東海地方在住の億り人投資家・なごちょう(X:@Nagoya_Tyouki)氏に話を伺った。

強みは「地域密着」と「健全な財務」

これらの企業の最大の特徴は、財務体質の強さにある。ブロンコビリー(3091)、物語コーポレーション(3097)、あみやき亭(2753)、ヨシックスホールディングス(3221)などは、いずれも堅実な経営基盤を築き、無借金経営や高い自己資本比率を維持している。

自己資本比率は50~60%に達し、一般的な飲食関連企業の30~40%を大きく上回る。営業利益率も8~12%と高水準で、業界平均の5~8%を上回る水準だ。効率的に利益を稼ぐ仕組みを確立しているといえるだろう。

「根底には地域密着の経営があります。物語コーポレーションは食べ放題の『焼肉きんぐ』でファミリー層を獲得し、『コメダ珈琲』は無借金経営ではないものの、"長居できる喫茶文化"を武器にシニア層を取り込んできました。ヨシックスも『や台ずし』や『ニパチ』といった低価格帯ブランドで都市部の幅広い層を取り込み、安定的な集客を実現しています。顧客の生活スタイルに合わせた事業展開が成長の土台になっています」(なごちょう氏)

さらに「東海の、特に名古屋発の外食企業は地方企業にとどまりません。全国規模でも競争力があり、慎重な出店戦略や無借金経営が財務面の強さを生み出しているのです」と、なごちょう氏は語る。

  • 東海発の外食チェーンが好調なワケ

株価を支える「バリュエーションの堅実さ」

投資家から支持される背景には、株価バリュエーションの安定感にもある。東海発の主要銘柄では、平均してPER15~25倍、PBR1.2~1.5倍で推移している(※)。

※ブロンコビリー、物語コーポレーション、あみやき亭、コメダホールディングス、ヨシックスホールディングスの平均値。

外食業界全体のPER20~30倍、PBR1.5~2.0倍と比べると割安な水準といえる。こうした数値の裏付けがあるため、株価が急落しにくい点も特徴だ。

「配当と優待を合わせれば実質的な株主還元率は3~5%に達します。長期投資家にとっては安定的なリターンが期待でき、業績に多少の変動があっても株価が崩れにくいのです」(なごちょう氏)

コメダ珈琲やブロンコビリーは安定配当と自社優待を提供し、個人投資家の支持を集めている。ヨシックスも同様に食事券を中心とした株主優待を整備しており、株主が顧客として店舗を利用する仕組みがリピーターを生み、長期的なブランド価値向上につながっているのだ。

とはいえ、今後は課題も少なくない。外食関連株全体では、2020年代前半まで年率5~8%の伸びを確保してきた売上も、足元では勢いに陰りが見え始めている。

背景には最低賃金の引き上げや人手不足によるコスト増があり、さらに少子高齢化による需要の縮小も追い打ちをかけている。その結果、既存店の成長余地は次第に限られつつある。

「一方で、多店舗展開には常にリスクがつきまといます。店舗が増えるほど画一化が進み、ブランドの魅力が薄れてしまう危険性がある。ヴィレッジヴァンガード(2769)の事例は、その象徴だと感じます。同社の場合、最終的に企業の成否を左右するのは人材であり、なかでも店長の質が収益性を大きく左右してきました」(なごちょう氏)

  • 同じ東海発の銘柄でも、42億円赤字の「ヴィレッジヴァンガード」は42億円赤字となった

    同じ東海発の銘柄でも、「ヴィレッジヴァンガード」は42億円赤字となった

投資家が見るべき3つのポイント

では、これから投資家が注目すべき点は何か。なごちょう氏は3つの視点を挙げる。

まずは海外展開の可能性である。ココイチは台湾や韓国を中心に基盤を築きつつ、アメリカ市場にも進出している。ただし、本格的な拡大はこれからであり、文化や嗜好の違いに対応できなければ成功は難しいのが実情だ。なごちょう氏は、「いずれにせよ、現地文化に適応しなければ持続的な成長は望めません」と話す。

次に、人材育成である。効率化が進んでも顧客体験を左右するのは最終的に現場の人間だ。「どんなに仕組みを整えても、実際に顧客と接するのはスタッフです。教育への投資を怠れば競争力を失います」となごちょう氏。

三つ目はデジタル技術の活用だ。予約アプリやデータ分析を取り入れることで、顧客満足度とコスト削減を両立できる。

「予約システムやビッグデータを駆使すれば、コストを1~2割抑えることが可能です。これが次世代の成長を支えるでしょう」(なごちょう氏)

こうした取り組みが成果を上げれば、成長率はふたたび年率5~7%水準に戻る可能性がある。逆に、従来型の出店拡大に固執する企業は収益力を失い、投資対象としての魅力を失うだろう。

"安定と挑戦"を見極めよう

東海地方発の外食企業は、お値打ち感と健全な財務を武器に成長を遂げてきた。しかし、国内市場の縮小やコスト上昇といった構造的な課題が強まる中、従来の拡大路線だけでは限界が見え始めている。

それでも、無借金経営や高収益体質、手厚い株主還元といった強みは揺らいでいない。投資家に必要なのは短期的な値動きに翻弄されず、質的成長や新たな挑戦を見極める姿勢といえる。

「東海発の飲食株はまだ十分な投資価値があります。ただし、これまでの成功モデルに落ち着いてしまうのは危険です。これからは新しい付加価値をどう創出するか。それが投資の成否を決めると言っても過言ではありません」(なごちょう氏)

地域に根ざしながら全国規模の競争力を備える東海企業。投資初心者にとっても、"安定と成長の両立"を学べるケーススタディとなりそうだ。

  • 東海飲食株は、安定経営と挑戦精神を兼ね備え、投資初心者が学べる魅力にあふれている

    東海飲食株は、安定経営と挑戦精神を兼ね備え、投資初心者が学べる魅力にあふれている


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