PCブランド「FMV」を有する富士通クライアントコンピューティング(以下、FCCL)は、2023年度以降、国内個人向けPC市場でトップシェアを実現している。代表取締役社長の大隈健史氏は、どのようにしてFMVブランドをNo.1に導いたのだろうか。
国内個人向けPC市場でトップシェアを達成したFCCL
FCCLの株式の51%をレノボが取得した2018年5月2日から、7年と約半年がたとうとしている。レノボ傘下となったことでブランド力の低下が危ぶまれたFCCLだが、近年の国内での業績を見るとむしろ真逆だ。
PCブランド「FMV」は長年、国内個人向けPC市場で2番手の地位に甘んじてきた。しかし2023年度には、富士通のPC事業参入以来初となる年間トップシェアを達成。2024年度はさらに後続を引き離し、この勢いは2025年も継続している。
そんな現在のFCCLで舵取りを行っているのが、2021年4月に代表取締役社長 CEOに就任した大隈健史氏だ。FMVのブランド力がここにきて花開いた理由、レノボと富士通の企業文化の違いを伺いつつ、ビジネスパーソンに向けたメッセージを聞いてみたい。
レノボでもなく富士通でもない、FCCLの立ち位置
大隈氏の前職は、レノボグループにおけるアジア太平洋地域の法人ビジネスだ。そこからレノボと富士通の合弁会社であるFCCLの代表取締役社長に着いたわけだが、これは広い意味ではレノボグループ内での異動とも、狭い意味ではまったく文化の異なる企業への移籍とも取れる。当時の心境を大隈氏は次のように述べる。
「まったく違う環境、まったく違うメンバーとのビジネスということで、大きなチャレンジになると思ってFCCLに来ました。FCCLは、レノボと富士通のジョイントベンチャーであり、両社の良いところを引き継いだ企業として、日本におけるビジネスをやっていこうというのが本分です」(大隈氏)
この4年間、大隈氏はレノボでもなく富士通でもない、その間にいるFCCLとして最適な立ち位置を模索してきたという。その結果、同社は右肩上がりで収益性を高め、レノボと富士通という両方の株主に対して堅調な利益貢献を実現している。
国内でのシェアを高めるという業績の背景で、切り捨ててきたものもある。代表的なものが海外ビジネスの縮小だ。アジアにおけるコンシューマ市場への挑戦と撤退や、欧州を中心とした法人向けビジネスからの撤退など、厳しい判断も行われた。
だが、そういった売上縮小の要素を踏まえてもトータルとして収益を改善し続けているという事実は、大隈氏の「選択と集中」が奏功したことにほかならないだろう。
「FMV」ブランドが国内市場でシェアNo.1を実現した理由とは?
ここ数年の大きな変化と言えば、やはりFCCLが国内個人向けPC市場において年間トップシェアを達成したことにあるだろう。この躍進の背景には、大隈氏が行った意識改革がある。
「FMVブランドが始まったのはおよそ30数年前となりますが、そこからずっと2番手を歩んできました。それなりに収益性もシェアも高く、『この状況を守ればいい』という2番手メンタリティが定着してしまっていたところがあったと思うんですね。ですから私は、就任直後から全部門に『コンシューマ向けビジネスをやるからには、トップの景色を見てみようじゃないか』と発信しました」(大隈氏)
大隈氏が掲げた旗は“No.1コンシューマ向けブランド「FMV」”。とはいえ、かけ声だけで意識は変わらない。同氏の挑戦は、FCCLが持つ明確な強みを社内外に浸透させることからスタートした。
ひとつは、「世界最軽量」という強み。同社は年々ノートPCの最軽量を更新し続けている。例えば「FMV Note U」シリーズの通称“FMV ZERO”は、2025年9月現在においても、文字通り「世界最軽量」約634gの14型モバイルノートだ。最軽量は世界にただひとつであり、軽量級や超軽量といった言葉でごまかしがきかない。
また「FMV Note U」も“Copilot+ PC”の中で世界最軽量の約848g、「FMV LOOX」も13.3型WindowsタブレットPCで最軽量の約599gを実現している。大隈氏はオンリーワンの特徴をより強めていく戦略を採った。
もうひとつは、全方位戦略。FMVブランドのノートPCは中高年には知名度も信頼度も高いが、一方で若年層には「MacBook」や「Surface」ほどの知名度はない。そこでZ世代を企画の中心に据え、新たなノートPC「FMV Note C」を開発。もともと強かったオールインワン型デスクトップPCや大型ノートPCと合わせて、すべての製品セグメントで勝ちを狙っていった。
「売り上げは、素晴らしい製品と、それをお伝えするマーケティングおよび営業というところが対になってできるものです。我々には世界最軽量のノートPCという非常に強い製品があります。明らかに差別化できている製品を持っているということは我々に自信を与えてくれましたし、意識改革に繋がるきっかけになったと思います。こんなにいいものを作っているんだから、それが反映されたマーケットポジションを取っていこうということです」(大隈氏)
――トップシェアを誇りながらもブランドリニューアルを実施、その背景には





