日本のビジネスを牽引する著名なCxO(Chief x Officer)の皆さんが今、何を考え日々ビジネスに励んでいるのかを深掘りするべくスタートした本連載。聞き手は私、「Japan CxO Award」の主催を務め、CxO人材採用事業に日々携わるBNGパートナーズの代表取締役・蔵元二郎が務めます。

今回お越しいただいたのは、日本最大の化粧品口コミサイト「アットコスメ」を共同創業した山田メユミさん。インターネット黎明期、それまでになかった「ネガティブな情報までも、中立公正に届ける」をモットーに事業を立ち上げ、数々の困難にぶつかりながら信念のもとに仕事を進めてきたメユミさんの話は、目からウロコのことばかり。早速、うかがっていきましょう。

非効率で非常識なことを信念に

――本日はよろしくお願いします。メユミさんに審査員をお願いしているJapan CxO Awardのコメントで「困難な局面で、いかにユニークな発想で道を切り拓いたかに着目したい」とメッセージをいただきましたが、メユミさん自身が自身を振り返って思う、そんなシーンでの印象的な経験を挙げるなら、どんなものがありますか?

アットコスメを立ち上げたばかりの創業初期は、インターネット信頼度がまだまだ低い時期。それまでの既存のメディアでは、ユーザーの生の声、特にネガティブな意見が出ることは、そうありませんでした。でも、インターネット社会で、生活者の発信力が変わり、そこから情報を得られるプロセスや購買行動が変わる。その中で、どう企業と生活者をマッチングできるか、それを考え続けてきました。

アットコスメではポジティブネガティブ両面から集めて、透明性を持って皆さんに見ていただけるよう、生活者の意見を可視化。もちろん、企業さんにとって都合の悪い情報が見えるようになったので、お叱りも受けました。けれど、マイナス面も含めて情報を集める「中立公正なプラットフォーム」だと認識していただけないと、存在意義がない。だからこそ、悪意ある誹謗中傷は取り除けるように監視やメンテナンスして環境を整備し、情報を探しにきた方が見たい情報をきちんと届けられるマッチングを全力でやり続ける。そんなリアルなデータベースに対して、企業にも理解を求めることをやり続けてきました。

――情報を民主主義化するようなイメージですかね?

というのもなんですが(笑)、インターネット登場による非常に大きなパラダイムシフトの中で、生活者のためはもちろん、企業や業界のためにも、この情報の透明化は必要だと信じてやってきました。双方にごまかしがあると、その場はしのげても、次のアクションを信頼していただけなくなる。だからこそ、言動がぶれてはいけない。変わるなら、その理由を説明しないといけない。それは意識してきました。そこから、2007年、リアル店舗『アットコスメストア』立ち上げ時は、リアルとオンラインをいかに融合できるかを考え続けて…困難な局面しかなかったですね(笑)

――オフラインへの進出当時も、やはりアゲインストはあったんですか?

当時から今まで、常に何かしらの戦いはありました。リアル店舗立ち上げにあたり、その当時からの問題意識は、『生活者が化粧品を比較検討したいとき、デパートとドラッグストア、通販と、チャネルによって試せる商品が異なるのが普通だった』こと。でも、インターネット上のアットコスメでやってきたことは、チャネルや世代を超えて、皆さんの声を集積して、その人に合った情報を取得していただくこと。リアルも、同じことをやりたかったんです。けれど、新宿に1号店を作ったときは、小売業としての実績がない状態でした。

もちろん、卸していただくのが難しい商品やブランドも多数ありました。そういうときは自分たちで商品を買ってきて、インターネット上のアットコスメランキングの世界を、リアルに店頭に実現しました。

――それは! 卸していただくのが難しいから自分で購入するって、コロンブスの卵ですね。考えたら当たり前の正面突破だけど、なかなか思いつけない。

オンラインをリアルに、という発想から始まったから生まれたんでしょうね。そういったものはもちろんお試しだけで販売できないので、『これは伊勢丹で売ってます、これは通販で買えます』とナビゲーションをつけて、店頭を構成していきました。もちろん、棚効率だとか、小売業の常識ではありえないことです。普通なら、そこで販売できる商品をいかに増やすかしかできないんです。

でも、そうして常識をひっくり返してでもやらないと、ユーザーの皆さんの期待には応えられない。コスメは実際に試さないとわからないことが多々あり、試したいからこそリアル店舗に来ている。アットコスメストアに来れば、情報が揃っている、出会えると認知していただかないといけないと、私たちがストアを立ち上げる意味がないのです。

――他にも常識をひっくり返したようなことはありますか?

店舗にできる限り洗面台を作っています。原宿の旗艦店にも、巨大な洗面コーナーを作りました。メイクをフルリセットして、すっぴんからスキンケア、ベースメイク、ポイントメイクとすべてを試していただきたい、というくらいの気持ちがあるので、水場はキーワード。これも普通に考えたら、取り扱い商品数がその分減るので『非効率』です。でも『存分に出会って、試していただける場』を極限まで追求していきたいので、自分たちとしては大事な、譲れないポイントです。

「CEOのためだけに頑張る組織は、弱い」

――次にうかがいたいのが、リーダー像。今、どのような次世代リーダーが求められていると感じていますか?

改めて感じているのは、『経営チームがいかに強いか』が重要ということです。ひとりのカリスマやビジョナリストの力だけでは、スタートダッシュは切れても、その先の継続はなかなか難しい。企業として事業を生み育て、それを社会で多くの方に知って必要としていただき、息を長く続けていくことを考えると、やはりチームが必要。特にアイスタイルのように、ベンチャーを立ち上げてやっていく中では、縦割りで持ち場を担当する考え方では立ち行かなくなる。皆で右往左往して、お互いの役割を補完し合いながら、ひとりひとりが最大限ストレッチして、それでも足りない。ベンチャーの創業期って、そんな状況じゃないですか?

――まさにその通りです…!

社会の不確実性が高まり、何がどうリスクとなるのか見えにくい時代。自分の担当領域しか守らないボードメンバーでは弱いと感じます。いかにお互いに切磋琢磨して、それぞれの領域を拡張し続けられるか。そんな変化への対応力が必要になってきている。常にリスクへの危機意識を持ちながら、学び続け、自分たち自身をブラッシュアップしていけるか。それなしでは、役割を果たせず、存在する意味がなくなってしまうように思います。

――そういったマネジメントチームを作るコツはありますか?

私自身も考えながらやってきたんですが…CEOのためだけに頑張る組織は、弱い。上や横を見て、閉ざされた器の中で戦っていると、外が見えにくくなってしまう。それでも強く戦えた時代もありましたが、今はそうではない。根幹に『自分たちが信じるこの未来を実現しよう、この価値を社会に提供しよう』と、軸となる部分を持ち、それをどれだけ心底信じて走っていけるかが重要です。

アイスタイルの創業時も、よく創業者の吉松と私のどちらかがサポート役として立ち上げたように思われがちでしたが、私たちは、それぞれ実現したいことのベクトルが重なったから一緒に走っただけ。まさに『戦友』という言葉がぴったりで、相当なぶつかりあいもしました(笑)

――そりゃそうですよね。

ただ、まず信頼関係がないと、本音を言ってぶつかり合うことさえできない。揺るがない信頼関係は、チームの中に絶対に必要です。遠慮や忖度があると、この時代に生き残っていけない。ボードメンバーだけでなく、会社の一員となった以上は、誰しもが社内の誰かに忖度している場合じゃないよ、と感じています。

――他に、今も昔も変わらずに求められるCxOの要件だと感じるものはありますか?

綺麗事に聞こえてしまうかもしれませんが、人ひとりができることなんて、たかが知れています。だからこそ、常に謙虚に、周囲にリスペクトを持って向き合える方を素敵だと思い、自分自身もそうありたいと思ってやってきました。今、これだけ多様な社会で価値を産み続けようとすると、やはり『チームの多様性』が非常に重要じゃないですか。今までの既定路線で評価される部分とは違うところで、各自の個性や感性を発揮していただかないと、イノベーションは生まれません。

――そのために心がけていることは?

傾聴力です。謙虚に、人の話を聞いて、リスペクトをする。それがチームの力になっていく。昔ながらの日本の『利他の心』が今、まわりまわって重要だなと改めて感じます。社会にどんな価値を提供できるのか考えたときにも、自分たちのためであってはいけない。会社を立ち上げて、社会のためにどんなものを世に生み出せたかを意識してきたつもりですが、経験を重ねるほど、利他のためでない活動は継続しない。そういう意味でも、年を経るにつれて、『利他』という言葉が、自分の中で深く、重みを増していく感覚です。