ついに日本上陸を果たしたフォルクスワーゲンの電動ミニバン「ID.Buzz」。往年の名車「Type 2」、通称“ワーゲンバス”の精神を受け継ぎながら、最新のEV技術とモダンなデザインで蘇ったID.Buzzは、まさに新時代のアイコンと呼ぶにふさわしい1台だ。
……と評判だが、本当のところどうなのか。ニュースで見ている感じだと、ちょっとデカすぎる気もするし、ちょっと派手すぎる気もする。そんな疑念を晴らすべく、今回は実物に試乗! 実際にステアリングを握ってみた結果を以下にてお伝えしたい。
唯一無二の愛らしさと洗練されたヴィジュアル
ミニバンの電気自動車(BEV)としては国内初登場。そんな事情もあって、ID.Buzzは“唯一無二”のクルマと語られることも多いようだ。事実としてそうなのだから誇張ではないのだろうけど、実物と対面してみると……
唯一無二すぎるわ! そう唸らざるを得ない。“初のBEVミニバン”という肩書きを云々する以前に、このヴィジュアルそのものがどう考えても唯一無二。いきなり心を奪われちゃったかも……。めちゃくちゃテンション上がるな……。
ちなみに、今回お借りした車体の正式名称は「ID.Buzz プロ ロングホイールベース」。「ID.Buzz プロ」より全長もホイールベースも250mm長い仕様となっている。
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「ID.Buzz」は「プロ」(888.9万円~、一充電走行距離524km)と「プロ ロングホイールベース」(997.9万円~、一充電走行距離554km)の2種類。ボディサイズはプロが全長4,715mm、全幅1,985mm、全高1,925mmmm
確かに派手かもしれないが、キャラとして確立されきっている感があるので、「こういうものだよね」と割り切って考えられる。やはりそれは、1950年に生まれたType 2のT1、いわゆる“ワーゲンバス”の面影をこの新型車に見るからだろう。
Type 2のT1……。もしその時代、アメリカやヨーロッパで生きていたら、絶対に乗ってた自信があるわ。あれで西海岸とかを走ったり、キャンプしたりしたら、もう映画すぎるでしょ。車中泊もしただろうし、車内で洗濯物なんかを干したり、干さなかったり。いや~、憧れる。
閑話休題。ID.Buzzである。丸みを帯びたフォルムに愛嬌のある顔、そして、どこか懐かしさを感じさせるツートンカラー。Type 2のDNAを色濃く受け継ぎながらも、決してレトロではなく、むしろ超モダン。自然豊かな環境というより、都会に溶け込みそうな洗練された雰囲気だ。
いや、本当にスゴいわ。こうして実物を見てみると、改めてスゴいと思う。完全にオンリーワンだもん。クルマというより、ワーゲンバスという“ジャンル”なんだろうな。
広々とした室内空間が叶える自由なアクティビティ
想像以上とは言え、ビジュアルが優れていることはわかっていた。しかし、車内空間はどうか。ID.Buzzに限ったことではないが、雑誌やネットの写真だけではイマイチわからない。
ドアを開けて車内へと足を踏み入れると、その圧倒的な広さにびっくり! 全幅が1,985mmというだけあって、運転席も助手席もかなり広々していて快適。それぞれアームレストが左右両方に設置されているだけでなく、ドアにもアームレスト的な余白が設けられている。
後部座席に至っては、まるでリビングルーム……というのはさすがに盛りすぎかもしれないが、新幹線のグリーン車に乗っているような快適さはある。めちゃくちゃ広い。
ディテールは極めてシンプルだが、それだけにものすごい開放感がある。バッテリーを床下に効率よく配置することで、フラットで広大な室内を確保できたということらしい。頭上や足元にも十分すぎるほどの余裕がある。これならどんな長距離移動でも、かなりストレスなく過ごせそうだ。
3列目シートにも座ってみたが、こちらもかなりの広さである。身長175cmの大人でもかなり足元に余裕があるし、そのせいで2列目が窮屈になることもない。マジで“バス”だわ……。
3列目まで使うとさすがに積載能力に支障は出るが……。
3列目シートを倒せばこのとおり、大きなラゲッジスペースが出現。折りたたみ自転車なんかも余裕で収納できそうだ。相当、懐が深い。ちなみに、3列目シートは取り外すこともできるので、ラゲッジスペースはさらに広く使うことも可能。ただし、取り外したシートをどうするのか問題が生じるので、ひとまずスルーでいいだろう。商用車として使う人にはいいだろうな~。
むしろ、車中泊などをする人であれば、3列目シートは超重要。2列目と合わせて倒してしまえば、フラットな生活空間が誕生する。全高1,925mmと縦にも長いので、寝ても座っても窮屈さは皆無。寝袋やミニテーブルを広げたり、クーラーボックスを設置したりすれば、あっという間に“部屋”くらいの快適空間に仕上がるはず。夢が膨らむなぁ……。
もちろん、車中泊だけじゃない。ここまで広ければキャンプ道具はもちろん、スノーボードやサーフボードといった長物も余裕で積み込めるに違いない。ヴィジュアルは都会的で未来的だが、アウトドアアクティビティとの相性も超抜群。アクティブライフを送る人々にとって、ID.Buzzは単なる移動手段ではなく、趣味や遊びのフィールドを広げる頼もしい相棒となってくれるに違いない。
取り回しは大丈夫? 実際に運転してみた!
最後に、走行性能についても少々触れておきたい。個人的に、走り心地についてはあまり重視していないのだが(そもそも最近のクルマは「走り心地が悪い」なんていうことがないので)、やはり、この静かで快適な走り心地は電気自動車ならでは。加速もなめらかだし、エンジンの音や振動もないので静粛性も凄まじい。
かなりの巨体なので、さすがに取り回しにくいのかと思いきや、“鼻”が短いおかげか、まったく危なげなく運転することができた。フロントウィンドウも大きくて視界がクリアだし、全方位モニターのおかげで駐車も一切問題なし。
ホイールベースが長いので、もしかしたら住宅密集地などでは苦戦することもあるかもしれないが、それはどのミニバンも似たようなものなので、ID. Buzzならではのデメリットと呼ぶほどのことでもない気がする。
むしろ、走っている最中に一番気になったのは、街中の“視線”だ。写真を撮っている人もいたし、指をさして眺めている親子もいた。まだID.Buzzの納車が始まっていないので、そもそもの珍しさはあるだろうが、やはり、この唯一無二のビジュアルには人を惹きつける魅力があるのだろう。
可愛らしいデザインは、見る人に笑顔をもたらす。広大な室内空間は、無限の可能性を広げてくれる。静かで快適な走りは、移動を特別な時間へと変えてくれる。現代に蘇った“ワーゲンバス”、ID.Buzz。これが世に出回り、街に溶け込めば、日本の道路は今より少し明るく、賑やかになるに違いない。





















