アルファロメオが新型コンパクトSUV「ジュニア」を日本で発売した。電気自動車(BEV)とマイルドハイブリッド車(MHEV)の2タイプで、420万円からのMHEVは燃費23.1km/Lを公称。アルファの入門編として選ぶのにはピッタリの1台だが、問題は乗って楽しいクルマかどうかだ。さっそく試乗してきた。
BEVとMHEV、顔も2つに
ジュニアのボディサイズは全長4,195mm、全幅1,780mm、全高1,585mm、ホイールベース2,560mmとコンパクト。パワートレインはBEVとMHEVの2種類だ。
「エレットリカ」のサブネームを持つBEVは、最高出力115kW(156PS)、最大トルク270Nmを発生。容量54kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、一充電の航続距離494km(WLTCモード)を実現している。
MHEVは最高出力100kW(136PS)、最大トルク230Nmの直列3気筒DOHCターボエンジンに16kW(21.8PS)/51Nmのフロントモーターを組み合わせる。サブネームの「イブリダ」はイタリア語で「ハイブリッド」の意味だ。トランスミッションは電子制御の6速デュアルクラッチ式ATを採用。WLTCモード燃費23.1km/Lを公称している。
シャシーはステランティスの「CMPプラットフォーム」を採用しているので、同グループ内のコンパクトSUVであるジープ「アベンジャー」やフィアット「600」、プジョー「2008」と基本的なスペックは共通だ。他と差別化するため、それぞれが個性的な衣装をまとっているのだが、今回のジュニアもアルファロメオらしいデザインで我々を魅了する。
デザインを担当したチーフエクステリアARデザイナーのボブ・ロムケス氏は、ジュニアの特徴として進化したトライローブ(三つ葉)形状のフロントグリル、3眼のヘッドライト、直線や平面がない塊感のあるボディ、1960年代にアルファロメオが先鞭をつけた「コーダトロンカ」(空力特性のためにリアエンドを断ち切った形状)などを挙げた。グリル中央にある逆三角形のスクデットには、ブランド初となるBEVモデルにふさわしい「ピスチオーネ」(同ブランドを象徴するヘビのこと)を透かし彫りしたブラックの「プログレッソ」を装着。MHEVにはメッシュに筆記体の「alfa Romeo」ロゴをまとった「レジェンダ」を取り付けるという芸の細かさだ。
価格はBEVの「エレットリカ プレミアム」が556万円、MHEVの「イブリダ プレミアム」が468万円、「イブリダ コア」が420万円とこちらも魅力的。デビュー記念のMHEV限定モデル「イブリダ スペチアーレ」(200台)はプログレッソグリルやサベルト製スポーツシートなどが付いて533万円だ。
MHEVのイブリダにさっそく試乗!
発表会の直後に、さっそくMHEVのイブリダに試乗することができた。
グレードはプレミアムでボディカラーは緑がかったナヴァリブルー/ブラックルーフの2トーン。駐車場に佇むジュニアは、alfa Romeoの筆記体ロゴを装着したレジェンダグリルと日本専用にオフセットして取り付けたナンバープレートを組み合わせたアグレッシブな顔つき、Cピラーにうっすらと施されたピスチオーネ、電話機のダイヤル(若い人にはわからないかも)からインスプレーションを得たという5輪デザインの18インチホイールなど、どこを見てもスペシャル感がある。写真で見るより、実物の方が断然いい。
インテリアは、大きな丸いひさしの奥に取り付けられたメーターや四つ葉のクローバーを模した丸型エアコンルーバー(センターには小さなピスチーネが)などでアルファモデルらしさを強調する一方で、ステアリングや空調、シートのスイッチ部分などにはステランティスの他モデルと同じ規格のパーツを採用していて、上手にコストダウンした様子がうかがえる。
ゆっくり走り出すと、30km/hくらいまでは電気だけで走るのでとても静か。さらに加速しようとアクセルを踏み込めば3気筒エンジンがすぐに始動するのだが、音の質や量は気になるものではない。メーターからは、パワーフローを頻繁に切り替えながら、1,330kgの比較的軽量なボディをなるべく効率よく走らせようとしている様子が見て取れる。
アルファロメオといえば、「ジュリア」や「ステルヴィオ」などの上級モデルのように、ステアリングを1センチ切ると即座に鼻先が向きを変えるようなキレの良い特性を期待する向きも多いと思うのだが、さすがにジュニアは入門車だけあって、そこはちょっと控えめ。コーナーではゆったりとしたロールを伴って、上手に向きを変えていく。つまるところ、新たにアルフィスタになったドライバーや同乗するご家族にとって、まずは安心して付き合えるセッティングにしているのだ。
ただ、回生が強めなので、一定速度で減速して停止するようなシチュエーション(例えば信号で止まるような時)で、わずかにギクシャクするブレーキの癖に慣れるのには少しだけ時間がかかりそうだ。
前出のステランティスの3台をはじめ、フォルクスワーゲン「Tクロス」、レクサス「LBX」、ミニ「クラブマン」など、群雄割拠のプレミアムコンパクトSUV市場に新たに登場したジュニア。まだエレットリカは試していないけれども、見た目だけでイブリダを選んでもOK、と胸がさわいでしまった筆者なのだった。
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発表会にはアルファロメオのサント・フィッチリCEOがビデオ出演。「ジュニアはすでに世界で4万台以上の受注があり、そのうち15%がBEV(電気自動車)という人気モデルになっています」とコメントした。日本市場については「インドやアジア太平洋地域での販売の50%以上を占める」重要な市場であるとした