日立製作所と神戸大学の研究グループは、産業機器、自動車やロボットなどに搭載される電子制御ユニット(ECU)内の半導体メモリでのエラーの発生による、組み込みソフトウェアからエンジンやモーターなどのハードウェアまでの影響を、すべてコンピュータ上で検証できるクラウド型の評価・検証シミュレーション技術を開発したことを発表した。同技術をECUの開発に用いることで、半導体メモリのエラーが組み込みソフトおよびエンジンやモーターなどのハードウェアへ及ぼす影響を短時間で検証できるようになり、メモリエラーによるシステム全体のダウンなどのリスクを低減させ、機能安全を考慮した効率的な制御装置の開発を実現することが可能になるという。
同技術は、日立のバーチャルHILS(Hardware-in-the-Loop Simulation)と神戸大学のメモリデバイスシミュレーション技術を統合したシミュレーション技術で、双方の技術を統合するために、環境温度、動作電圧や製造のバラつきなどの様々なメモリエラーケースを生成し、そのパラメータをバーチャルHILSに注入する「フォールト・ケース・ジェネレータ技術」と、膨大なエラーケースをクラウド内の多数の計算機ノードに自動的に割り振り、並列実行するクラウド型の並列計算技術を新たに開発した。
具体的には、「フォールト・ケース・ジェネレータ技術」では、メモリデバイスシミュレーションで得られたメモリエラーの発生に関するデータをもとに、バーチャルHILSにおける任意の電源ノイズ波形、動作環境温度や経年劣化などの動作検証条件に対応したエラーケースを注入することができるため、これにより、多数の半導体チップに対するエラーケースを取り扱うことができるようになり、従来は困難だった数万単位の半導体チップに対する評価・検証が可能となった。
一方のクラウド型並列計算技術は、クラウドコンピューティング環境における多並列処理を活用することで、シミュレーションを実行する時間を短縮するというもの。今回開発された、クラウド型の評価・検証シミュレーション技術では、膨大な数のエラーケースの処理をクラウド内の多数の計算機ノードに対して分配して評価を行い、評価結果を自動処理することが可能であり、これにより、短時間のシミュレーション実行時間で、膨大なエラーケースの評価を行うことが可能となった。
この結果、ECUの半導体メモリで発生する様々なエラーケースについて、組み込みソフトの動作にどのような影響を与えるのか、さらにその影響がECUの制御対象である機械装置にどのように関係するのかを、すべてコンピュータ上で効率的に検証できることが確認されたという。