三菱電機は8日、IHジャー炊飯器の新製品「NJ-XWA10J」「NJ-XSA10J」を発表した。発売は2月1日を予定している。価格はオープンで、市場価格は、NJ-XWA10Jが11万円前後、NJ-XSA10Jが8万円前後と予想される。

本炭釜を採用する蒸気レスIHの新モデル「NJ-XWA10J」

こちらは、炭炊釜を採用する「NJ-XSA10J」。炭炊釜は金属性の内釜に炭をコートしたもの

同社では、今年2月に世界で初めて炊飯時に外に蒸気を出さないジャー炊飯器「蒸気レスIH」(NJ-XS10J)を発売している。今回発表された蒸気レスIHの第2世代目となる製品。同社の、蒸気レスIHシリーズ以外の製品に採用されていたテクノロジーもフルにつぎ込まれているのが最大の特徴だ。

まず、本炭釜の採用(NJ-XWA10Jのみ。NJ-XSA10Jは炭炊釜)。本炭釜は、2006年より、同社のハイグレードなジャー炊飯器にのみ採用されてきた内釜で、炭素99.9%という高純度の炭を削り出して作られたものだ。IH方式では、IHコイルからの磁力線により、発熱体が発熱することで、熱を発生する。一般的に発熱体として使用されているのがステンレスだ。本炭釜で採用されている炭は、ステンレスにはない特性をいくつか備えているが、そのうち、もっとも炊きあがりに影響を与えているのが、磁力線の浸透する深さだという。ステンレスでは0.24mmの深さにまでしかとどかない磁力線が、炭だと10mmにまで届くとのことで、これにより釜の表面だけでなく、全体で発熱することになり、より効率的に均一に釜の内部を温めることが可能となる。

さらに五重全面加熱の採用。これも同社のIHジャー炊飯器の一部のモデルに使用されてきた技術で、IHコイルを底面に3重に配置すると同時に、胴回りと蓋部分にも配置するというもの。これにより、底からだけでなく全面から加熱され、均一な炊きあがりを実現する。

新製品は、この2つに蒸気レスIHを組み合わせることで、より、おいしい炊きあがりを実現するというものだ。蒸気レスIHは、室内に蒸気を出さないという面が注目されがちだが、それだけでなく、連続加熱が可能という大きな特徴も持ち合わせている。一般的に、炊飯器では、ふきこぼれを防ぐために、連続した加熱を行うことができない。加熱したり、加熱をとめたりという繰り返しで米を炊いていくことになる。しかし、蒸気と「ねば」とを分離して、蒸気のみを回収、水タンクで蒸気の温度を下げて水に戻すというサイクルで、ふきこぼれの発生を防いでいる蒸気レスIHでは、ふきこぼれを気にせず、連続した加熱を行うことが可能だ。以前の蒸気レスIHでは、同社では、この連続加熱を「連続大沸騰」と呼んでいたが、本炭釜+五重全面加熱+蒸気レスIHによる連続加熱のことを「連続激沸騰」と呼んでいる。

さらに、新モデルでは新たに「匠芳醇炊き」コースが採用されている。同コースは、本炊き前の仕込みの段階で、弱火で加熱をして水の浸透を促進してから、糊化酵素の活性化する温度帯で仕込みを行うというものだ。炊飯時に、熱源に近い部分ほど、糊化が進行しやすい。そのため、沸騰時の気泡は、底をなかなか通り抜けることができず、均一な炊き上がりを妨げる要因になっていた。匠芳醇炊きを利用すると、本炊き時に一気に大きな気泡が発生して、糊化した部分も通過するため、釜の中の底に近い部分でも上部でも均一な炊き上げが可能なるとのことだ。同コースを使用した場合、約15分ほど余分に炊飯時間がかかってしまうが、ご飯に含まれる還元糖量は約10%、含水量は約4%アップするとのことだ。このように聞くと、柔らかめの炊き上がりを想像するかもしれないが、発表会場で行われた試食では、表面にハリのある適度な固さを持った炊き上がりとなっていた。

本炭釜の原料となる炭素99.9%の炭

内釜のメモリも工夫が行われており、水を注いでも、表面張力の影響で見にくくなりにくいV字型の水位合わせ目盛りが採用されている

こちらは、蒸気レスIH用の水カートリッジ。どこまで水を注いだか見やすいように、水を入れると三角形の部分の色が見えなくなる

「匠芳醇炊き」コースによる炊き上がり

同社による炊き上がりの味のグラフ