文部科学省はこのほど、2007年度の教科書検定の結果を公表した。今回は高校高学年の教科書が検定対象となったが、ネット百科事典「Wikipedia(ウィキペディア)」上の地図を引用した英語教科書も、検定意見は付いたものの合格した。だが同社編集部は、「Wikipediaはやはり出版の現場では使いにくい」と話しており、その扱いの難しさを示唆している。

ネット百科事典「Wikipedia」上の「死刑」の項目中にある「死刑制度の世界地図」(2008年3月31日時点)

教科書検定は、「小学校」「中学校」「高校低学年」「高校中学年」「高校高学年」のそれぞれについておおむね4年ごとに行われており、今回は「高校高学年」用教科書の検定が行われた。

大阪市の出版社「増進堂」も、高校高学年向け英語(リーディング)の教科書を編集し、同教科書中で、Wikipediaの「死刑」の項目中にある、「死刑制度の世界地図」を、「From Wikipedia,the free encyclopedia,2007」と出典を明記した上で引用した。

だが、検定では同図について「国境線が不正確である」との検定意見が付いた。

また、同図は各国の死刑制度について「Abolished for all crimes(全ての犯罪に対し死刑廃止)」、「Abolished for crimes not commited in exceptional circumstances(例外的状況を除いて全ての犯罪に対し死刑廃止)」、「abolished in practice(事実上廃止)」、「Legal Form of Punishment(法律に死刑明記)」など各国の制度に応じて色分けしているが、現在のWikipediaの図では、教科書に引用された図とは異なり、韓国やラオスなどが「法律に死刑明記」から「事実上廃止」に変わっている。

増進堂は検定意見を受け、検定意見の付いた国境線4カ所について修正し合格。また、地図の色分けについては、「アムネスティの資料などを基に調べて裏をとったので、編集時点でのデータとしては問題ないと考えている」としており、文部科学省も同様の見解をとっている。

だが同社編集部は、「現在のデータに基づいて、訂正申請することも検討している」とし、さらに、「Wikipedia自体を否定はしないが、いろいろな議論があることは承知しており、やはり出版の現場では使いにくいのが現状。たとえ正しい情報でも、Wikipediaの情報ということで信頼性を疑われてしまう部分がある」と話しており、Wikipedia上の情報の扱いが非常に難しいことをあらためて示唆している。