タンクレストイレの特徴

タンクレストイレとは、その名の通り水を貯めるタンクが無いトイレのことです。
一般的なタンク式トイレでは便器の後ろにあるタンクに水を溜めておき、レバー操作でその水を一気に流して排泄物を流します。
一方でタンクレストイレはタンクがなく、水道から直接水を流す仕組みです。水道の水圧を利用して必要な量の水を勢いよく流すため、タンクに水が溜まるのを待つ必要がありません。
このため、続けて何度でもすぐに流せるのがタンクレストイレの大きな特徴です。また、多くのタンクレストイレは電気制御によって水量や洗浄を調節しており、効率的に排水を行います。
タンクがない分、見た目がスッキリとしてスタイリッシュなのも特徴です。便器と一体化した温水洗浄便座を標準搭載している製品が多く、自動でフタの開閉や洗浄を行う機種もあります。
最新モデルでは脱臭機能や自動洗浄機能など、メーカー独自の多彩な機能が組み込まれており、高い快適性を実現しています。
タンクレストイレは各メーカーの先進技術を投入したハイエンド製品が中心であり、トイレをより便利に清潔に使うための工夫が凝らされているのです。
ただし手洗い用の水栓が付いていない点には注意が必要です。従来のタンク式トイレではタンク上部に小さな手洗い器(水がちょろちょろ出てくる蛇口)が付いているタイプが一般的ですが、タンクレストイレは文字通りタンクが無いため、手を洗うための設備が一体化されていません。
そのため、トイレ内に別途手洗い用の洗面器やコーナーシンクなどを設置する必要があります(最近では手洗い器が一体化したタンクレストイレも登場しています)。また、電気制御を伴うためコンセント(電源)が必要であり、停電時には基本的に自動で水を流せない点も従来型との違いです。このように、タンクレストイレを導入する際はメリットだけでなくこうした特徴も踏まえて検討しましょう。
タンクレストイレのメリット
タンクレストイレには多くのメリットがあります。ここでは代表的なメリットを順に見ていきましょう。
- 高い節水性能
- 省スペース
- 清掃性
高い節水性能
タンクレストイレのメリットでまず挙げられるのが、洗浄時の水使用量が少なく節水効果が高いことです。
古いタンク式トイレでは1回の洗浄に10リットル以上の水を使うものもありましたが、タンクレストイレなら約3〜4リットル程度の水量でしっかり流せるモデルが一般的です。
例えば従来型で1回13リットル使っていた水が、タンクレストイレでは約3.3リットルで済んだというケースもあり、水の使用量はおよそ3分の1以下になります。

その分、水道代の節約につながり、家計にやさしいのは嬉しいポイントでしょう。大家族で使用頻度が高いご家庭ほど、年間の水道料金に大きな差が出ることもあります。
また、少ない水で効率よく流せるのは環境の面から見てもメリットです。各メーカーとも節水性能には力を入れており、少ない水量でも強い水流を生み出す洗浄技術が使われています。
そのため「水の勢いが弱くて流れ残りがあるのでは?」と心配になるかもしれませんが、ご安心ください。最新のタンクレストイレは少量の水でもしっかり汚れを洗い流せる工夫がされており、節水と洗浄力を両立しています。
省スペース
タンクレストイレは省スペース設計であることも大きなメリットです。タンクがないぶん便器まわりの奥行きが短く、トイレ全体の占有スペースが小さくなります。
狭いトイレでもタンクが張り出さないため圧迫感が軽減され、空間を少しでも広く使うことができます。トイレの後方にタンクが無い分、掃除道具を置いたりインテリアを配置したりと、ちょっとした空きスペースが生まれるのも利点です。
戸建てやマンションで「トイレが手狭で窮屈…」と感じている方にとって、タンクレストイレへの交換は有効な改善策となるでしょう。
さらに、タンクが無いことで見た目がスッキリとしておしゃれになります。直線的でシンプルなフォルムのものや、曲線が美しいデザインのものなど、タンクレストイレはインテリア性の高い製品が多く、トイレ空間をスタイリッシュに演出できます。
白を基調とした清潔感あるデザインはもちろん、メーカーによってはアクセントカラーや照明演出など凝ったデザインのモデルも展開されています。
狭い空間でも圧迫感が少なく、洗練された雰囲気になるのはタンクレストイレならではです。
清掃性
タンクレストイレはお掃除のしやすさ(清掃性)にも優れています。タンク付きトイレの場合、タンクと便器の境目や配管まわりに凹凸や隙間が多く、ホコリや汚れが溜まりがちでした。
しかしタンクレストイレは構造がシンプルで、背面にタンクがない分余計な凸凹がほとんどありません。そのため、便器の外側もサッとひと拭きするだけで汚れが落ちやすく、日頃のお手入れにかかる手間を減らすことができます。
陶器部分も滑らかな曲面で構成されており、埃が積もる箇所が少ないデザインです。忙しい方でも短時間でサッと掃除を済ませられるのはありがたいですね。
加えて、最近のタンクレストイレは汚れを付きにくくする技術や自動クリーニング機能が充実しています。
例えば、便器表面に特殊なコーティング(ガラス層やセラミックコートなど)を施し、汚れがつるんと落ちやすい素材を採用したものがあります。これにより黒ずみや水垢(みずあか)がこびりつきにくく、掃除の頻度自体を減らすことができます。
また、使用後に自動で水が流れて便器内をすすぐ機能や、ニオイを自動で脱臭してくれる機能を持つ製品も一般的です。ノズルを自動洗浄・除菌するセルフクリーニング機能が付いたモデルもあり、常に清潔に保てるよう工夫されています。
このようにタンクレストイレは日常的なお手入れの負担を軽減してくれる点でも優れており、清潔で快適なトイレ環境を維持しやすくなっています。
タンクレストイレのデメリット
便利で快適なタンクレストイレですが、良いこと尽くめというわけではありません。導入してから「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためにも、デメリットや注意点もしっかり押さえておきましょう。
- 初期費用の高さ
- 設置に必要な条件
- 故障時の対応
初期費用の高さ
まず検討しておきたいのが導入コスト(初期費用)の高さです。タンクレストイレ本体の価格は、一般にタンク付きトイレよりも割高になります。
各メーカーの主力商品・高機能モデルが中心となるため、本体価格が安いものでも10万円台から、多機能なハイグレード機種では30万〜40万円以上するものも珍しくありません。たとえばTOTOの最高級モデル「ネオレスト」は30万円以上する機種もありますし、LIXIL(リクシル)の「サティス」シリーズもグレードによって20〜30万円程度の価格帯です。
比較的手頃なモデルでもPanasonicの「アラウーノ」シリーズなど10万円台後半は見込んでおいたほうが良いでしょう。これはあくまで本体の価格であり、実際に設置するには別途工事費用もかかります。
設置工事費は後述しますが、既存トイレの撤去や新規取り付け、廃材処分費などを含めておおむね10万〜15万円前後が相場です。場合によっては電源コンセントの増設工事(数万円程度)や、前述のように手洗い器を新設する費用もかかります。
手洗い器を別途設置する場合、本体価格が5〜10万円程度、さらに取り付け工事費や配管工事費が合計で5〜6万円ほどかかるのが一般的です。このように本体+工事+オプション設備を含めた初期費用は、トータルで見ればタンク式トイレより高額になりやすいのは否めません。
ただし、後述のようにタンクレストイレは使う水の量が少ないため長期間使えば水道料金の節約効果で元を取れる可能性もあります。初期費用とランニングコストのバランスも考慮しながら、予算計画を立てることが大切です。
設置に必要な条件
次に設置にあたって満たすべき条件や環境について知っておきましょう。タンクレストイレを問題なく使うには、いくつかの前提条件があります。まず重要なのが水圧です。
タンクレストイレは水道の水圧で洗浄するため、一定以上の水圧がないと十分な洗浄力が発揮できません。例えばマンションの高層階などは水圧が低くなりがちで、タンクレストイレの設置が難しいケースがあります。
最近は低水圧に対応したモデルや、小型の増圧ポンプを併設できる機種も登場しており、水圧が原因で断念するケースは減ってきました。
それでもご自宅の給水圧によっては設置できない場合もありますので、事前に専門業者に水圧を測定・確認してもらうことをおすすめします。
次に電源(コンセント)の問題です。タンクレストイレは多くの機能を電気で制御しているため、トイレ空間にAC電源のコンセントが必要です。
もともと温水洗浄便座を使っていた場合は近くにコンセントがあるでしょうが、ない場合は新たに電気工事をしてコンセント増設が必要になります。また、電気を使う以上停電時には通常のボタン操作では水を流せないことも心得ておきましょう。
一部の最新モデルでは停電対応として手動レバー操作や電池バックアップ機能が付いているものもありますが、タンク式のように断水時にバケツで直接水を流す、といった方法が使えない構造です。不意の停電時にはいつもと違う流し方をする必要があります。
さらに手洗い設備の確保も設置条件の一つです。前述したようにタンクレストイレ本体に手洗い器は付いていないため、手洗い用に別途水栓を用意しなければなりません。
トイレ内に独立した小型の洗面台を設置するか、廊下や洗面所など別の場所で手を洗うことになります。「トイレ内に手洗いスペースの余裕がない…」という場合でも大丈夫です。最近では手洗い器一体型のタンクレストイレ(便器後部に小さな手洗いボウルと水栓が付いた製品)も増えてきました。
こうした一体型タイプなら省スペースで設置できるので、どうしてもトイレ内に手洗いが欲しい方は検討すると良いでしょう。いずれにせよ、タンクレストイレを導入する際はトイレの広さや給排水の位置、電源の有無など現状の設備条件をしっかり確認することが重要です。
必要に応じてリフォーム業者と相談し、問題点をクリアする対策をとってから導入しましょう。
故障時の対応
タンクレストイレは精密機器を内蔵した一体型の設備であるため、故障した際の対応や修理費用もデメリットとして挙げられます。
まず、タンクレストイレは便器と機能部が一体化している構造上、タンク式のように「壊れた部品だけ取り換える」という部分交換が基本的に難しくなります。
たとえばタンク式トイレなら、タンク内のボールタップ(給水弁)やフロートバルブ(排水弁)が故障した場合にその部品だけ交換すれば直せることが多いです。また、便座の温水洗浄機能が故障した場合も、便座ユニットごと市販の新品に取り替えてしまうことができます。
しかしタンクレストイレでは、内部のバルブやポンプが故障した場合にユーザー自身で交換するのは難しく、メーカーや業者による修理対応が必要です。さらに機種によっては修理対応そのものが高額になったり、故障内容によってトイレ全体を丸ごと交換しなければならないケースもあります。
一部分だけの不具合でも、構造上ユニットごと交換が避けられず、大きな出費につながる可能性がある点に注意しましょう。
また、タンクレストイレは電子部品を含む機器であるため、製品寿命も従来の陶器製の便器より短めです。一般にタンクレストイレの寿命は約10〜15年程度と言われています。
20年以上故障もなく使えればかなり長持ちした方でしょう。寿命を迎えた際には内部部品の劣化などにより不具合が生じるため、便器ごと新しい製品に交換する必要があります。その際の交換費用は機種によりますが20〜30万円程度は発生することが多いです。
長い目で見ると、いずれそうした買い替えコストがかかる点も理解しておきましょう。一方でタンク式トイレは陶器部分自体は半永久的に使えるため、部品交換や便座交換をしながら20年以上使い続けるケースもあります。
そうした耐久性の違いも含め、タンクレストイレを選ぶ際は故障時・寿命時の対応について頭に入れておくことが大切です。万一の故障時には自分で無理に分解せず、速やかにメーカーや設置業者に連絡して対処してもらうようにしましょう。
タンクレストイレの価格帯
タンクレストイレの一般的な価格帯について把握しておきましょう。前述のようにタンクレストイレ本体の価格は製品のグレードや機能によって幅がありますが、大きく3つのグレードに分類できます。
基本的な機能だけを備えたスタンダードグレード、中程度の機能で価格とのバランスに優れたミドルグレード、そして各社の最新技術を盛り込んだハイグレードモデルです。スタンダードグレードの価格帯はおおよそ10万円台後半〜20万円前後から、ミドルグレードで20万〜30万円程度、ハイグレードでは30万〜50万円近くになるものもあります。
具体的な価格はブランドやシリーズによって異なりますが、タンクレストイレはタンク式に比べるとどのグレードでも概して高めといえます。
例えばTOTOの「ネオレスト」シリーズは同社を代表するハイグレードのタンクレストイレで、洗浄性能から快適機能まで最先端の技術が搭載されています。その分価格も高く、モデルによりますが本体価格だけで30万円台が中心です。
ネオレストの詳細はこちらの記事でご紹介していますので読んでみてください。

一方、LIXILの「サティス」シリーズはデザイン性と機能性を両立した人気モデルで、タイプによって20万円台前半〜30万円弱の価格帯となっています。
サティスに関しての詳細はこちらを参考にしてください。

さらに、比較的手が届きやすい価格帯の製品としてはパナソニックの「アラウーノ」シリーズが挙げられます。アラウーノは独自の洗剤泡洗浄方式を採用したタンクレストイレで、10万円台から購入可能な普及価格帯のモデルも用意されています。
アラウーノに関しての詳細はこちらの記事を参考にしてください。

このように主要メーカーから様々な価格帯のタンクレストイレが発売されていますので、ご予算や求める機能に合わせて選択すると良いでしょう。
なお、上記はあくまで製品本体の価格です。実際にトイレを交換する場合は、本体価格+工事費用がかかる点に留意してください。工事費用については次章で詳しく説明しますが、購入予算を立てる際には製品代だけでなく設置工事代やオプション費用も含めて考慮する必要があります。
また、古いトイレの撤去処分費や、新しいトイレの搬入費なども見積もりに含まれる場合があります。購入前に販売店やリフォーム業者に相談し、総額でいくらくらいになるのかを確認しておくと安心です。
タンクレストイレの選び方
タンクレストイレを選ぶ際、どのようなポイントに注目すれば良いでしょうか。初心者の方でも失敗しないために、以下にタンクレストイレ選びの主なポイントをまとめます。
- 設置スペース・サイズ:タンクレストイレにも様々なサイズがあります。ご自宅のトイレ空間の広さや配管位置に合ったサイズの製品を選びましょう。タンクがない分コンパクトですが、便器の寸法とトイレ室内の余裕を事前に確認し、ドアの開閉や足元スペースに問題がないかチェックしておくことが大切です。
- 水圧の確認:お住まいの給水圧がタンクレストイレの必要水圧を満たしているか確認しましょう。製品ごとに「最低必要水圧」がカタログ等に記載されています。特にマンション高層階や戸建2階以上に設置する場合は要注意です。水圧が不足している場合、増圧ポンプの導入や低水圧対応モデルの検討といった対策が必要になります。
- 欲しい機能:自動開閉、オート洗浄、瞬間暖房便座、脱臭機能、夜間用照明など、タンクレストイレには便利な機能が多数あります。全て備わったハイグレード機種は魅力的ですが、その分価格も上がります。ご家庭に本当に必要な機能は何か優先順位を決め、不要な機能を省くことで予算内でより満足度の高い製品を選べます。
- お手入れのしやすさ:製品によって、お手入れ方法や必要なメンテナンスも異なります。例えば汚れが付きにくい特殊コーティングの有無や、使用する洗浄剤の種類などはチェックしておきたいポイントです。日頃の掃除が楽になる機能が備わっているか、またフィルター清掃や消耗品交換が簡単にできる構造か、といった点も比較してみましょう。
- デザイン・見た目:トイレのデザインも忘れずに。タンクレストイレは各社ともデザイン性に凝った製品が多く、形状やカラーのバリエーションも豊富です。ご自宅の内装やお好みに合ったデザインかどうか確認しましょう。例えば、丸みのあるデザインで優しい雰囲気のものや、シャープな形でスタイリッシュなものなど様々です。毎日使う空間ですので、見た目の満足感も大切です。
- 費用・予算:タンクレストイレは高額な買い物ですので、予算との兼ね合いも重要です。本体価格だけでなく工事費用や手洗い器設置費用などトータルコストで検討しましょう。複数の製品で迷った場合は、各モデルの価格と機能のバランスを比較し、コストパフォーマンスの良いものを選ぶと失敗が少ないです。
- メーカー・保証:信頼できるメーカーの製品を選ぶことも安心につながります。TOTOやLIXIL、パナソニックなど大手メーカーのトイレは品質やアフターサービスの面で信頼性が高い傾向があります。また、製品保証の内容(保証期間や範囲)もチェックしましょう。メーカーによって1年間〜数年間の保証が付帯しますが、延長保証サービスがある場合は加入を検討するとさらに安心です。
以上のポイントを踏まえて、ご自宅の条件やご家族のニーズに合ったタンクレストイレを選ぶと良いでしょう。
特に初めてタンクレストイレにする場合は、サイズや水圧などの設置条件に適合するかをまず確認することが大切です。その上で、欲しい機能やデザイン、価格のバランスが取れたモデルを選択すれば、後悔の少ない満足のいく買い物になるはずです。
タンクレストイレのメンテナンス方法
タンクレストイレを快適に長く使うためには、日頃のメンテナンス(お手入れ)も欠かせません。基本的な掃除方法自体は従来のトイレと大きく変わりませんが、いくつかポイントがあります。ここでは日常的なお手入れ方法と、定期的に行いたいメンテナンスについて解説します。
まず日常の清掃は、従来どおり便器内と便座まわりを清潔に保つことが基本です。タンクレストイレは汚れが付きにくいとはいえ、使用すれば多少の汚れは避けられません。毎日または数日に一度は、トイレ用洗剤を使って便器の中をブラシでこすり洗いしましょう。
縁(フチ)がないタイプが多いので、ブラシが届きにくい隙間は少ないはずです。便座やフタ、ノズル周辺なども尿ハネなどで汚れやすい部分です。柔らかい布に中性洗剤を薄めた液を含ませて拭き掃除すると良いでしょう(※機種によってはアルコールや塩素系洗剤の使用可否があるため、説明書の指示に従ってください)。
次に定期的なメンテナンスとして、タンクレストイレ特有のお手入れ箇所もチェックしましょう。タンクが無い代わりに、給水配管の途中にフィルター(ストレーナー)が設けられている機種があります。
水道水中のゴミや砂利がトイレ本体に入らないようにするためのフィルターで、長期間使っていると目詰まりすることがあります。水流が弱くなったり給水不良の原因にもなるため、半年〜1年に一度を目安にフィルター掃除を行いましょう。
フィルターの場所や取り外し方法は製品の取扱説明書に記載されています。多くの場合、止水栓を閉めてからフィルター部分を取り出し、水洗いしてまた元に戻すだけの簡単な作業です。
また、脱臭フィルターや触媒、洗浄剤など消耗品の交換・補充も定期的に必要です。タンクレストイレには自動脱臭機能が付いている製品が多く、その脱臭ユニットに活性炭フィルター等が使われている場合は1年に1回程度交換すると脱臭効果が持続します。
同様に、パナソニックのアラウーノシリーズのように市販の台所用洗剤を補充して泡洗浄するタイプでは、洗剤が切れたら継ぎ足すメンテナンスが必要です(ただし多くのタンクレストイレは特別な洗剤補充は不要です)。
お使いの機種に応じて、取扱説明書に記載の消耗品やお手入れ部品の交換時期を確認し、適切に対応しましょう。
そして万が一故障かな?と感じた時は、自分で分解・修理を試みないようにします。タンクレストイレは電子制御も絡む精密機器ですので、一般の方が内部を開けるのは危険です。動作不良や異常を感じた場合は、設置をお願いした業者やメーカーのお客様相談室に連絡し、指示を仰いでください。
保証期間内であれば無償修理となるケースもありますし、有償でもメーカーの専門技術者に任せた方が確実です。日頃から保証書や取扱説明書は手元に保管し、困ったときすぐ見られるようにしておくと安心です。
正しいメンテナンスを行い、異常時はプロに任せることで、タンクレストイレを末長く快適に使い続けることができるでしょう。
タンク式トイレとの比較
ここまでタンクレストイレの特徴を見てきましたが、従来主流のタンク式トイレと比べて実際どう違うのかも気になりますよね。最後に費用・使い勝手・デザインの観点で、タンク式トイレとタンクレストイレを比較してみましょう。
- 費用・コスト面
- 使い勝手
- デザイン
費用・コスト面
まず導入コストの比較です。繰り返しになりますが、本体価格と工事費においてはタンク式トイレのほうが圧倒的に安く済みます。
タンク式トイレはシンプルな構造ゆえ本体価格も安価で、リーズナブルなモデルなら本体数万円程度から手に入ります(便座を含まない便器とタンクのセットで5万円前後など)。一方でタンクレストイレは最低でも十数万円からと高価で、工事費も含めた初期費用はどうしても高くなります。
「費用をなるべく抑えてトイレを交換したい」という場合、タンク式のシンプルなモデル+温水洗浄便座の組み合わせが予算面では有利でしょう。
ただしランニングコストでは逆転します。タンクレストイレは前述した通り1回あたりの洗浄水量が少なく、水道料金を節約できます。
例えば1回の使用でタンク式が13L、タンクレスが3.5Lとすれば、1回あたり約9.5Lの節水です。1日10回の使用なら約95L、1年なら約34,000Lもの差になります。水道料金に換算すると地域にもよりますが年間数千円〜1万円以上節約できるケースもあります。
もちろん最近のタンク式も節水型が普及しており旧来ほど水は使いませんが、それでもタンクレストイレの節水性能はトップクラスです。長い目で見れば、水道代の削減によってタンクレスのほうが総支出を抑えられる可能性もあります。
また、タンクレスは標準で温水洗浄便座機能が付いているため、別途温水便座を購入する必要がないという面でもコストに含めて考えられるでしょう(タンク式でも温水洗浄便座を後付けすれば同様に電気代等がかかります)。
メンテナンスや修理費用もコスト面の比較ポイントです。タンク式トイレは構造が単純で壊れにくく、万一部品が故障しても比較的安価に交換できます。例えばタンク内の部品やレバーが壊れた場合、数千円〜1万円程度で修理できることが多いです。
また、便座(温水洗浄便座)も故障したらホームセンターなどで買ってきて簡単に取り替えることができます。一方タンクレストイレは前述のように一体型の精密機器のため、修理費用が高額になる傾向があります。保証期間を過ぎた後に主要部品が故障すると、数万円〜十数万円単位の出費となることもありえます。
さらに寿命が来れば丸ごと交換(20万〜30万円程度)になるため、長期的な維持費用はタンク式に比べ高くつく可能性があります。
このように、初期費用はタンク式が安く、ランニングコストはタンクレスが水道代節約で有利、修理費用はタンク式が安い、といった具合に一長一短です。
トータルコストでどちらが得かは使用状況や年数によって変わりますが、「初期費用を抑えたいならタンク式」「多少コストがかかっても最新の快適機能や節水効果を重視するならタンクレス」という考え方の違いになるでしょう。
使い勝手
毎日の使い勝手(使用感や便利さ)の面でも、タンク式とタンクレスではいくつか違いがあります。タンクレストイレは水を流す際にタンクの再充填を待つ必要がないため、連続して何度でも続けて流せる利点があります。
大家族でトイレが続くような場合や、来客が多いときでも、順番にすぐ流せて便利です。これに対してタンク式は一度流すとタンクに水が溜まるまで時間がかかり、立て続けに使用すると「水が溜まるまで待ってからもう一度流す」といった手間が生じます。
またタンクレストイレは操作もボタン一つであったり、人を感知して自動で流れる機種もあり、レバー操作が不要でスマートです。高級機種では人が離れると自動洗浄してくれるため、子供やお年寄りでも流し忘れの心配がありません。
温水洗浄や暖房便座、脱臭機能なども一体化しているので、寒い冬場でも暖かく快適に用を足せるでしょう。
一方、シンプルな操作性や安定稼働という点ではタンク式トイレにも利点があります。タンク式はレバーや押しボタンで手動で流すシステムのため、電気に頼らず確実に排水できます。
操作が直感的で簡単なので、機械が苦手な方でも戸惑うことは少ないでしょう。また、タンク式トイレは停電や断水といった非常時にも強みがあります。停電時でもタンク内に水があれば1回は普通に流せますし、それ以上でもバケツで水を便器に注ぎ込めば強制的に流すことが可能です。
タンクレストイレは電気制御がないと弁が開かないため、停電中は基本的に水を流せず使えなくなってしまいます(機種によっては非常用手動レバーを備えるものもあります)。災害などで断水した場合も、タンク式ならタンクに水を入れておけば使えますが、タンクレスは同様にはいきません。このように非常時の安心感という面ではタンク式が優れています。
また、タンク式トイレは構造が単純な分、故障しにくく安定して動作するという安心感もあります。タンクレストイレは便利な反面、万一センサーや基板に不具合が起きると一時的に使えなくなるリスクがあります。
例えば「自動洗浄センサーが誤作動して流れない」「電子部品の故障で水が止まらない」などのトラブルは、ごく稀ながら起こり得ます。
その点、タンク式の手動レバーで流すタイプは構造が単純なため、突発的な不具合は少ないと言えます(もちろんゼロではありませんが、過度な心配は不要です)。
総合すると、日常の利便性ではタンクレス、有事の信頼性や操作のわかりやすさではタンク式、といった違いがあります。ご家庭のニーズに応じて、何を重視するか考えてみると良いでしょう。
デザイン
デザインや見た目の印象については、タンクレストイレの評価が高いです。やはりタンクがない分、洗練されたフォルムでトイレ空間がすっきり広々と感じられます。
配管などもカバーで隠されている機種が多く、生活感を感じさせないホテルライクな雰囲気を演出できます。インテリアにこだわる方や、トイレもおしゃれにコーディネートしたい方にはタンクレストイレが人気です。
実際、最近新築住宅やリフォームでもタンクレスを選ぶケースが増えており、トイレ空間の高級感・清潔感を重視する傾向が見てとれます。
一方でタンク式トイレは昔ながらの形状のため、どうしても存在感(圧迫感)があります。背後にタンクがドンとあると狭い空間では圧迫感につながりますし、見た目もオシャレとは言いにくいかもしれません。
しかし近年ではタンク式トイレもデザイン改良が進んでおり、タンク自体を小型化・低背化したコンパクトな一体型トイレなども登場しています。
タンクレス風に見えるスリムなデザインのタンク式もあり、一概に野暮ったいとは言えなくなっています。また、タンク式トイレに付属している手洗い器付きタンクは、ある意味「デザインの一部」として便利さを両立したアイデアでもあります。
トイレに独立手洗いを設けるスペースがない場合、タンク上の手洗い器があるタンク式は合理的な選択肢です。見た目のスマートさではタンクレスに軍配が上がるものの、インテリアのテイストによってはクラシックなタンク式のほうが落ち着くという方もいるでしょう。
要は好みと重視点次第ですが、現在ではデザイン面でタンクレスが主流となりつつあります。トイレ空間をすっきりさせたい、少しでも広く見せたい、おしゃれにしたいという場合は、タンクレストイレを選ぶ価値が大いにあると言えます。
タンクレストイレ設置を依頼する業者の選び方
最後に、タンクレストイレを実際に設置・交換してもらう際の業者選びのポイントについて解説します。いくら良い製品を選んでも、施工が不適切だと本来の性能を発揮できなかったりトラブルの原因になります。信頼できる業者に工事を依頼するために、以下の点を確認してみましょう。
- 水道局指定業者
- かかる費用
- 保証・アフターサービス
水道局指定業者
トイレを含む水回りの配管工事は、基本的に水道局指定工事店に依頼するのが安心です。
水道局指定工事店とは、お住まいの自治体の水道局から給水装置工事の許可(指定)を受けている業者のことです。水道法という法律で、水道工事は指定工事店でなければ行えないと定められており、公的に資格を認められた業者と言えます。

指定を受けるには一定以上の国家資格を持った作業責任者が在籍し、適切な工事資材・設備を有している必要があります。
要するに、水道局指定業者=技術と信頼のあるプロの水道工事店です。指定工事店であれば施工不良のリスクも低く、万一問題があっても適切に対処してもらえるでしょう。
反対に、無資格の業者には依頼しないように注意してください。中には安さを売りにして営業している業者で、水道局の指定を受けていないところもあります。
そうした業者に工事させてしまうと、後々水漏れなどのトラブルが起きても保証が受けられなかったり、最悪の場合無許可工事として問題になることも考えられます。
基本的に住宅設備のリフォームを手掛ける会社や、トイレメーカーと提携している販売店であればまず指定工事店になっていますが、依頼前に念のため「水道局指定の業者かどうか」を確認すると安心です。
各市町村の水道局ホームページで指定工事店の一覧が公開されている場合もありますので、気になる場合は調べてみると良いでしょう。
かかる費用
次に工事にかかる費用についてです。トイレ交換リフォームの場合、依頼する業者によって工事費用に差があります。一般的な洋式トイレから洋式タンクレストイレへの交換であれば、工事費込みのパック料金としておおよそ10万〜15万円前後が一つの目安です。
この費用には古いトイレの解体・撤去、廃材処分、新しいトイレの据え付け、配管接続、試運転確認といった一連の作業が含まれます。床や壁の内装を特に変更しない場合、半日〜1日程度の作業時間で完了することが多いです。
一方、和式トイレから洋式タンクレストイレへのリフォームなど、大掛かりな工事を伴う場合は費用が高くなります。床の段差解消や排水管の移設、内装工事などが必要となるため、20万〜30万円程度を見込んでおいたほうが良いでしょう。
さらに、別途手洗い器を新設する場合は前述のようにプラス5〜10万円以上の費用が追加されます。
このように、トイレ工事の費用は現場の状況や施工内容によって幅があります。費用面で失敗しないためには、事前に見積もりをしっかり取ることが重要です。
信頼できる業者であれば現地調査を行った上で詳細な見積書を提示してくれますので、工事範囲と費用内訳を確認しましょう。可能であれば複数の業者から相見積もりを取って比較すると、適正価格が見えてきます。
極端に安い見積もりを出してくる業者には注意が必要です。あとから「これは別料金」「あれも追加費用」といった形で結局高くつく恐れもありますし、逆に過剰に高額な業者も避けたほうが無難です。
適切な費用で丁寧な工事をしてくれる業者を選ぶために、遠慮なく見積もりを依頼し、納得できるまで説明を受けてから契約すると良いでしょう。
保証・アフターサービス
最後に保証やアフターサービスについても確認しましょう。トイレの交換工事を依頼する際、施工業者がどのような保証を提供しているかは重要なポイントです。多くのリフォーム業者では、工事部分(取り付け作業)に対して1年〜2年程度の保証を付けています。
もしその期間内に取り付け不良による水漏れやぐらつきなどの不具合が発生した場合、無償で手直ししてもらえるでしょう。
保証期間や内容は業者によって異なるため、契約前に確認しておくことをおすすめします。
また、アフターサービスが充実しているかも安心材料になります。信頼できる業者であれば、工事後に何か困り事があった際も迅速に対応してくれるものです。
例えば「使い方で分からないことがある」「少し異音がするが正常か見てほしい」などの問い合わせにも丁寧に答えてくれるでしょう。特にタンクレストイレは高機能な設備なので、工事後に質問が出てくることもあります。親身に相談に乗ってくれる業者だと安心です。
さらに、トイレ本体のメーカー保証についても把握しておきましょう。メーカー保証は通常1年間程度ですが、業者によっては保証期間延長サービスを提供していたり、メーカーと連携して修理対応を代行してくれる場合もあります。
購入から設置、その後のケアまで一貫して面倒を見てくれる業者だと、長く快適にトイレを使い続ける上で心強いパートナーとなってくれるでしょう。
総じて、業者選びでは「資格・実績があり信頼できること」「適正な費用で施工してくれること」「施工後のフォローがしっかりしていること」の3点が重要です。
地元で実績のある水道局指定業者や、大手メーカーの特約店などはその点で安心感があります。口コミや評判も参考にしながら、納得できる業者に工事を依頼しましょう。
まとめ
タンクレストイレはタンク式トイレにはない魅力的なメリットを多数備えた最新型のトイレです。高い節水性能、省スペースでスッキリしたデザイン、掃除のしやすさなど、日々の暮らしにうれしい機能が満載です。
一方で、導入コストの高さや設置にあたっての条件、そして故障時の対応の難しさといったデメリットや注意点も存在します。タンクレストイレを検討する際は、これらメリット・デメリットをしっかり理解した上で、ご自宅に適したモデルを選ぶことが大切です。
本記事ではタンクレストイレの特徴から選び方、メンテナンス方法、そしてタンク式との比較や業者選びのポイントまで幅広くご紹介しました。初めての方でもイメージはつかめましたでしょうか。
タンクレストイレは確かに高性能で便利ですが、すべてのご家庭に絶対必要というものではありません。ご自宅の状況や優先したい点によって、タンクレストイレがベストかどうか判断していただければと思います。
もし「やっぱりうちもタンクレストイレにしたい!」と思われたら、ぜひ信頼できるプロの業者に相談してみてください。適切な機種の選定から工事までサポートしてもらえます。快適で清潔なトイレ空間は毎日の生活の質をぐっと高めてくれるものです。皆さまも後悔のないトイレリフォームで、より良い暮らしを実現してください。
※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
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