「働き方改革」の救世主的な存在として、今注目されているのがRPA(ロボットによる業務の自動化)だ。サーバやデスクトップパソコンにインストールし、人間が行っている作業をソフトウェア・ロボットに記憶・実行させることで効率化やミスの削減が実現し、長時間労働の解消にも効果があると期待を集めている。現状ではまだ言葉だけが先行している感もあるが、人手不足が確実な日本社会において近い将来、RPAは欠かせない存在となることは間違いない。

本連載では、RPAの導入・活用を行う中で留意すべきポイントや考え方について、4回にわたって紹介していく。第1回目となる今回は、「マイナビニュース」の姉妹サイト「IT Search+」で「RPA入門」を執筆されているNTTデータ シニアスペシャリスト 正野 勇嗣氏と、NTTデータビジネスシステムズで業務改善などのコンサルタントを手がけている下間 大輔氏に、「RPA導入を進めるにあたって、経営層あるいは現場はどんな心構えをしておくべきなのか」という、大前提の部分を語ってもらった。

エンジニアには「当たり前のこと」が、実現場に革新をもたらす

― まず正野さんがRPAに注目するようになった理由を教えてください。

正野:RPAが世の中で注目されはじめるようになったのは、私の認識だと2016年頃です。当時、私はエンジニアとしてミドルウェア製品やフレームワークの開発に携わっていたのですが、そこで実践されている自動化技術、特にテスト自動化とRPAが似ているな、というのが第一印象でした。テスト工程では、開発中のシステムに対して入力やクリックなどの操作を繰り返し、正常に動作するかを調べます。この際、人間が行うのではなく、操作を繰り返すプログラムをエンジニアが書いて、自動実行させることもありました。

RPAもビジネスの現場でExcelやWebを動かして帳票を出力したり、その帳票をメール送信したりといった、繰り返しの作業を自動で行うものですから、両者の違いは、「開発中の自動化」か「実現場での自動化か」というフェーズの違いしかないと感じました。エンジニアの視点からテスト自動化と比較すると、RPAが行っている技術自体は高度な内容ではないですが、自動化技術をビジネスの現場まで持っていくという発想が凄いと思って注目しはじめました。技術としては今までもあったものを、プログラミングの知識のない人でも使える状態にしたからこそ、現代社会にマッチして爆発的に市場が広がったわけで、これはイノベーションの典型的なパターンです。

  • NTTデータ シニアスペシャリスト 正野 勇嗣氏

業務プロセスの見直しが、成功の鍵

― 確かにRPAは流行のキーワードのようになっていますが、現実的にはどの程度浸透しているのでしょう?

下間:当社でもRPAに関するお問い合わせは増えています。流行っているからどういうものか知りたいというレベルから、内容をよくご存じでデモからはじめて欲しいというレベルまで、お客様によって理解度には大きな差がありますね。

  • NTTデータビジネスシステムズ 第一システム事業本部 コンサルティンググループ コンサルタント 下間 大輔氏

― 企業が導入を検討したいという意向を示した場合、その後はどのようなコンサルティングをされるのでしょうか?

下間:RPAは定型業務が得意領域なので、まずそういう業務があるかどうかを確認します。具体的な業務手順(PCの操作内容)までヒアリングして、どのくらい定型化されているのかを十分にヒアリングした上で、「じゃあお試しで入れてみましょうか」という具合に進めていくことが多いですね。

正野:業務プロセスの確認は重要ですね。自動化でより大きな効果を得るためには、BPR(業務プロセスの見直し)を行ってプロセスをキレイにした上でシステムにのせる必要があります。これはRPAに限ったことではありませんが……。

下間:そうですね、従来の業務システム構築の中でSEがやっていた要件整理が、RPAでは私たちコンサルタントの業務にも含まれるようになっています。むしろ、業務改善のためのコンサルティングを行って、そのためのツールとしてRPAが適していればおすすめする、と言った方が正確かもしれません。

正野:通常、企業の業務システムはROIが見込める領域、つまり主要業務をカバーするために構築されています。RPAはそれ以外、いわば「ロングテール業務」(図)の部分に導入していけば、システム開発のような大きなコストをかけずに成果を上げられると思います。そのためには「ロングテールのどの部分に、どういう風にメスを入れたらいいか」を分かる人が必要となってきますね。

下間:ええ、そのためのコンサルタントだと思っています。特定の業務にRPAを導入されているお客様の職場には、実は他にもRPAに適した業務があることが多いのですが、お客様がそれに気づかないケースも見受けられます。すっかり「人がやるのが当たり前」と思い込まれているわけです。外部のコンサルタントであれば、そういう部分も客観的に見られますしね。

  • 画像 RPA入門第3回より

導入方法はトップダウンか、ボトムアップか?

― 人手不足や長時間労働の解消できるなど現場が直接得られるメリットと、それによって生じるコスト削減やコンプライアンスなど企業が受けるメリット、RPAには両方が期待できると思うのですが、導入はボトムアップで進めた方が上手くいくのでしょうか。あるいはトップダウンが適しているのでしょうか。

正野:私はトップダウンだと思っています。経営層がRPA推進専門の社内組織を起ち上げて、その組織の監督・指導のもとに実施していくべきでしょう。ツールだけ買っても、現場は既存の業務が忙しくてRPAへの移行どころではないと、途中で止めてしまうということになりかねません。現在、RPA化で成果を上げている企業や金融機関は、おそらく各現場にKPIを設定して、取り組むべき業務として導入を進めたのだと思います。企業として成果を上げようと考えれば、現場だけに任せるのではなく、RPAを推進する専門チームを作るなど、組織的に取り組む必要があると考えます。

下間:当社に寄せられるお問い合わせは、現場の部門単位の方が割合としては多いようです。人手不足が深刻な職場は、それだけ真剣に解決方法を考えているということでしょう。ただ最初は部門単独で導入するとしても、RPA化で成果が上がったらそれを大々的に発表して、経営層や他部門にもRPAの成果を認めてもらうことが重要です。会社としてRPA化へのモチベーションを上げることで導入の拡大や連携も図りやすくなり、さらなる効果につなげられます。 また部門単位でのRPAツール導入が進むと、同じ業務のために別々の部門が、同じようなRPA化を行ってしまうという重複の問題も出てきてしまいますから、やはりどこかで全社的な問題として捉えてもらえるように努める必要はあるでしょう。

正野:部門単位でRPAツールを導入していくと、管理が行き届かなくなって「野良RPA」が多発する……という懸念もありますよね。それを防ぐために管理機能がついたRPAツールもありますが、誰でもすぐに使えるという手軽さが犠牲になっているようにも感じます。

下間:重複や「野良」などのリスクは、我々コンサルタントも十分にケアしていかなければと思っています。RPAツールを扱うベンダーの中には「売るだけ」というところもあるようですが、正野さんもおっしゃっていたように、ツールが用意されているだけでは、なかなかRPA化を実現するのは難しいかと思います。実際「やってみたけれど、上手くいかない」というケースも多いようですし、導入規模が大きくなっていけば、万が一問題が発生した時の影響も大きくなってくるでしょう。導入や活用には、やはりベンダーやコンサルタントの技術サポートが重要だと思います。

- ありがとうございました。

安価で性能のバランスのとれたRPAツールも出てきている。しかし流行にのって飛びつくだけでは失敗してしまう可能性が高く、きちんと導入・活用し、しっかり成果を上げていくためには、それなりに専門性の高いノウハウが必要だということで、両氏の意見は一致しているようだ。

連載の第2~3回では、実際の導入・活用コンサルティングの流れを追いながら、具体的な注意点や導入企業が行うべき準備・移行業務などの詳細を紹介していく。

[PR]提供:NTTデータビジネスシステムズ