「Living with Characters キャラクターと暮らせる世界へ」を支える Microsoft Azure

カプセル型の本体の中に“召喚”されたキャラクターが、会話を通してユーザーの暮らしに癒やしや豊かさを与えてくれるキャラクター召喚装置「Gatebox」は、表題のコンセプトのもと、2016 年に最初の製品である限定生産モデルが発売されました。

プラットフォームを運営するには、サービス上で動作するキャラクターアプリを制作し、それをエンドユーザーに提供するパートナー企業がかかわるプラットフォームの統制と、ユーザーが、どのキャラクターアプリを購入し、利用しているのかを判別する仕組み、つまり ID 情報による認証が必要です。この仕組みを支えるのが、クラウド ID 認証サービス “Azure Active Directory” です。同社は ID 情報を中心とした設計に転換したことで、こうした運営を実現しました。

当初は限定300台の販売でしたが、2019年10月には量産モデルがリリースされました。キャラクターは初期状態で搭載されている「逢妻(あづま)ヒカリ」の他、専用ツールで自作したり、他ユーザーがつくったキャラクターや、アニメ・ゲーム作品などとコラボしたキャラクターをダウンロードしたりすることもできるようになっており、個人ユーザーだけでなく、企業では受付係や施設のガイド役としてもニーズが高まっています。

キャラクターとの自然な会話を成立させたり、開発を円滑に進めるための環境を構築したりするために、開発元のGatebox株式会社(以下、Gatebox社)はMicrosoft Azureを採用しています。

生活を豊かにしてくれるGateboxとは?

最初にGateboxとはどんなものなのかを、簡単に紹介しましょう。Gatebox本体を購入してキャラクターアプリを選び、スマートフォンから設定を行うと、本体のカプセル内にキャラクターを召喚できるようになります。キャラクターアプリには無償のものと有償のものがあります。

キャラクターは、本体に内蔵されたカメラやマイクなどのセンサーを目や耳とし、音声とジェスチャーで、ユーザーと自然なコミュニケーションを取れるようになっています。何気ない会話に応じるだけでなく、起床時間には「朝だよ」と声をかけたり、外出から帰ると「おかえり」と出迎えたり、生活の様々なシーンでユーザーの暮らしに華を添えてくれ、ユーザーに合わせて変化、成長していきます。

会話以外にも、キャラクターを通して、テレビや照明などの家電を遠隔操作することが可能です。

スマートスピーカーや家庭用ロボットのような機械的な姿ではなく、アニメ作品から抜け出してきたような愛らしさと、リアプロジェクション投影技術による、“本当にそこに存在する”かのようなリアリティが大きな特長となっています。

プラットフォームビジネスの展開に向け、IDを中心にサービス設計を見直し

2016年末、300台の限定販売予約が始まると、約1ヶ月で完売(出荷は2018年)、企業からの問い合わせも多く、すぐに量産モデルの開発が進められることになりました。

量産モデルの開発・展開にあたっては、企業ニーズに合わせた技術対応はもちろん、Gateboxのサービスをビジネスとして拡張させていくため「逢妻ヒカリ」以外のキャラクター、例えば人気のあるアニメ・ゲームの登場人物や、ユーザー企業のオリジナルキャラクターを召喚できるプラットフォームとして進化させることを目指しました。

こうした「キャラクタープラットフォーム構想」の立案と実行の中心的役割を担ったのが、Gatebox社の取締役 Chief Service Architecture Officer 久森 達郎 氏です。同氏はBtoC、BtoB、双方でのビジネス展開を考慮し、サービスを提供する中で必要となる認証を整理するところからプラットフォームの構築に着手しました。

  • Gatebox株式会社
    取締役 Chief Service Architecture Officer
    久森 達郎 氏

まずユーザーがGatebox本体やキャラクターアプリをストアで購入し、設定する際はもちろん、キャラクターに、それぞれのユーザーに合わせたふるまいをさせるためにも、どのユーザーが、どのキャラクターアプリを利用しているのかを、認証で特定する仕組みが欠かせません。

また量産モデルでは、ユーザーが外出先からLINEトークでキャラクターとチャットできる機能を目指していましたが、これを実現するにはユーザーのGateboxアカウントとLINEアカウント、両者の認証を紐付ける方法も考えなければなりません。

久森 氏も「ここが分断しているとキャラクターの“記憶”となる利用履歴も分断し、ユーザーに対して一貫したふるまいが行えなくなるからです」と、システム構築における「認証」の重要性を強調します。

さらに、開発者、特に外部の開発企業の認証管理にも一考が必要だと考えられました。様々な開発企業がGatebox用のキャラクターアプリを制作し、それをエンドユーザーに提供することで、キャラクタープラットフォームというビジネスは成長していきます。その過程において、どの開発企業がどのアプリを開発したかをGatebox社が管理したり、アプリの内容を審査したりする際には、やはり認証を通す必要が出てきます。

このように、ユーザーと開発者を考えただけでも、認証が関わる部分はかなりの数にのぼることが分かります。利用する認証方法を場当たり的に決めていっては、後々、混乱が起こるとの考えから、久森 氏はID Centric、つまりIDを中心にサービス設計を見直すという方針を打ち出したのです。

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    キャラクタープラットフォームのビジネス展開イメージ

Azure Active Directory B2Cで、ユーザーや開発者の認証をシンプルに

複数のIDとパスワードを使い分け、サービスが変わる度にログインし直すのではなく、シームレスな認証を実現できる仕組みとして、久森 氏がまず着目したのがMicrosoft Azureのサービス、Azure Active Directory B2C(以下、Azure AD B2C)でした。

Azure AD B2Cは各種SNS、電子メール、独自のID・パスワードなど、多彩な認証をサポートしている顧客IDアクセス管理ソリューションで、いわゆるIdP(Identity Provider:認証情報提供者)としての役割も果たせます。

IdPがつくれれば、先ほど触れたGateboxデバイスとLINEのID連携が簡単に行えるようになり、久森 氏も「OpenID Connect、OAuth 2.0といった認証・認可のサービスも実装していますから、今回のサービス展開に採用することは理にかなっていると思いました」と語ります。

Azure AD B2Cでつくられたユーザー向けのIdPは、LINEとの連携の他、Gateboxデバイスの管理やストアでの購入を含め、ユーザー側にストレスのない認証を提供するのに役立っています。一方、開発者向けにもAzure AD B2CでIdPがつくられました。こちらは開発者が完成したアプリをアップロードしたり、Gatebox社が開発者の正当性をチェックしたりする際のシングルサインオン(以下、SSO)に活用されています。

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    Azure AD B2Cを活用したユーザー認証の構成図

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    同じく開発者認証の構成図

対して、Gatebox社内では、組織内のアクセス制御を実現するAzure Active Directory(以下、Azure AD)が利用されています。

「社内にはカスタマーサポートデータやマーケティングデータ、サービスのコマンドリプライログなど、多くのデータがありますが、自社スタッフの誰にどこまでアクセスを許可するかの管理も必要で、Azure ADを採用しました。また外部開発者によるアプリは、リリース前に社内でレビューを行いますが、その審査メンバーだけを認証する仕組みも整えています」(久森 氏)

Azureを核としたID Centricな構成を目指し、本来の目的であるサービス連携や、シンプルなサインオンを実現させたGatebox社ですが、予期しなかった部分での効果もあったといいます。その一つが導入するツールの選定基準が明確になったことです。

「それぞれの部門が勝手にツールを入れ始めると、全社的な統制が効かなくなることがあります。しかし今回のID整備を通して、SSOに対応したものを選ぼうという指針ができたので、そうしたリスクはなくなったと思います」(久森 氏)

指針に基づいたツール選定意識が浸透したことで、個別のアプリ開発時、どんなツールを使って、どんな技術を実装するかについては、開発者に任せられるようになりました。

「サービス単位で使うテクノロジーを分けられる、いわゆるマイクロサービスが実現しました。例えばキャラクターアプリのストアとGateboxのデバイス管理システムは、採用している言語からして違うのですが、APIで連携させながら、全体的なシステムとしては安定して動かせています。複数の技術を利用できるというのは、開発企業にとってメリットですね」(久森 氏)

“上から下まで”トータルに揃ったツール、多彩なサービスがMicrosoftの強み

Azureを採用したことは、もちろんGateboxのサービスそのものの開発にも大きな効果をもたらしました。

「開発環境としてのVisual Studio、デプロイ環境をつなぐAzure DevOps、デプロイ先となるAzure、これらの連携が非常に良くできていると感じました。長年ソフトウェア・メーカーとしてやってきたMicrosoft社ならでは、というところでしょうか。“上から下まで”トータルでツールが揃っていたのは、大きかったですね」(久森 氏)

キャラクターアプリで提供されるサービスのバックエンドにも、Azureが提供しているサービスが数多く採用されています。キャラクターアプリ本体はAndroidで制作されていますが、発話にはAzure Speech Service、日本語解析にはMicrosoft LUIS、その他Azure Cosmos DB、Azure Table Storage、Azure Functionsなど、Azureの各種サービスを連携させることで、サービスを成り立たせています。

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    Azureの各種サービスを活用したGateboxのバックエンド構成

Gateboxの場合、キャラクターからユーザーに話しかけるというシーンもあります。通常のスマートスピーカーは聞かれたことに答えるだけですが、キャラクターとの生活を自然なものにするには、キャラクターから話しかけることも重要な要素の一つだからです。Azureのボットサービスでは、それを実現できる機能もサポートされており、「ひとつの使い所だった」と久森 氏は言います。

「セッションを維持するとか、維持したセッションにメッセージを投げ込むとか、そうしたことを汎用的にやってくれます。こういうことができるサービスは他に見当たらないので、Azureのボットサービスがなければ、一からつくる必要があったでしょう。他にも既存の様々なサービスを組み合わせて構成することができたので、開発をショートカットできました。当社のように少人数で開発をしているチームには助かりましたね」(久森 氏)

パートナー企業による展開もスタート、可能性はさらに大きく

開発やサービス環境を整えるためのID整備から、サービスのバックエンドにまで、幅広くAzureのサービスを利用して開発された量産モデルは、2019年10月に発売されて大きな話題となりました。

それに伴って、Gatebox社のビジネス展開もさらに拡がりをみせ始めています。2020年3月にはパートナー企業であるハニカムラボ社が開発したキャラクター「もみちゃん」が、成田空港に展示される「江戸図」の解説役として登場しました。AIにはGateboxで活用されているものではなく、ハニカムラボ社製のAIソリューション「aicontainer(アイコンテナ)」が採用されています。

参考 : Gatebox、国内初のビジネス活用事例として成田空港で芸術作品展示に参画 バーチャルキャラクターが旅行客に日本の歴史文化を紹介

最近ではこのケースのように、ユーザー企業が開発したAIや多言語対話などのエンジンを活かす“出先”としてGateboxを使いたいという要望も多くなってきているとのことで、キャラクタープラットフォームがビジネスの一つとして芽吹いていることを感じさせます。

現在、会社の受付の他、宿泊施設などでの活用も検討されているというGatebox。いずれは行く先々でキャラクターに案内を受けるということが当たり前、という時代が到来するのかもしれません。

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