現代のIT・データ社会において、企業の事業継続を支えているデータセンター自体の事業継続は、企業活動を継続するうえで欠かせないものである。1分、1秒たりとも止められないデータセンターは、新型コロナウイルス禍のもとで、いかにノーダウンオペレーションを継続させているのか。今回はアット東京を例にとり、データセンターの業務を継続する環境を構築した人々の取り組み、その舞台裏について、3回の連載で紹介する。

―今回の新型コロナウイルスの対策会議について聞かせてください。対策会議はどのように始まったのですか?

阿部:社長の指示ですね。第1回目の会議は少ない人数でスタートしました。当初の動きは感染予防のためのルールや、感染してしまった場合の基本方針を作ることでした。そして会議だけでは追いつかなくなって、対策会議のメンバーでLINE WORKSのグループを作り、必要に応じてメンバーを増やしていったのです。たとえば、万が一当社から感染者が出た場合は即座にアナウンスをしなくてはいけないね、では広報も入れようか、など、そうやって徐々に情報共有メンバーが決まっていきました。

  • アット東京経営管理部  阿部担当部長

    アット東京経営管理部 阿部担当部長

―阿部さんの普段のお仕事、BCPのご経験から、今回特に意識されていることは?

阿部:対策会議のなかでの私の仕事としては、事業継続のために何をすべきか、そのためには何が足りていないのか、などを俯瞰して見ることを心がけています。事業継続のためには、新型コロナウイルス流行下においても当社の社員に感染者を出さず当社に起因する感染者をお客さまから出さないために、あるいは風評被害が出ないためにはどうしたらよいか、情報を得てはトップや会議メンバーに共有することを繰り返し、トップが判断をくだしやすいように準備をしています。

揺るがないトップ。「一番大切なこと」とは

―今回のコロナ禍で、会社が一番大切にしてきたことは何ですか?

阿部:社員の命と健康です。当社のトップが示したこの大前提は終始一貫、全くブレていません。こういうときはデータセンターの設備やサービスを最優先することを考えがちですが、とにかく「働く人の命、健康が第一、それがサービスの継続、お客さまにご迷惑をかけないことにつながる」というのが当社トップの考えで、あまりの潔さに、かえって現場のメンバーから「本当にいいんですか」と心配する声があがったくらいです。(笑)

そこから派生して、社員に対する福利厚生や特別休暇のルール策定、完全に在宅勤務ができるようにするための執務環境の整備といった検討が進んでいきました。在宅勤務に関しては、在宅用のシンクライアント端末も早急に購入して必要な社員・派遣社員、立場にかかわらず全員に支給せよと指示が出ました。「働く仲間の命と健康のためだ、コストは二の次でいい」と。

―基本となる方針が揺るがなければ、迷ったときも、これは方針に合っているのか、と判断ができますね。

阿部:社員の命と健康という一番崩してはいけないところをがっちり守り、社員が健全に働けてシームレスに仕事が回っていく状況を作り出すことが重要だと思います。サービス提供が大事だから、無理をして出勤して当社のなかで感染が拡大してしまうようなことがあれば、結局サービスの継続はできません。設備に目が行ってしまいがちですが、それを支えている社員を第一に優先する、というのがアット東京のBCPの方針です。

  • 阿部担当部長がBCP(事業継続)担当だったことが活かされた

    阿部担当部長がBCP(事業継続)担当だったことが活かされた

方針をたてる側、実行してくれる人たち

―コロナ対策会議事務局としての阿部さんの話は、限られた時間のなかでいろいろなものを揃えたり環境を構築したりという、この連載のこれからの話にもつながりますね。

阿部:私はアイデアを出させてもらう側ですけど、実際に手配や準備をする側は非常に大変なはずです。たとえばマスクを全員に配るといっても在庫や配布方法、またパソコンを全員に配布するには何台必要なのか、マウス等の備品も必要になってきますし、いろいろなことを考えなければいけないですからね。

―今、いったん振り返ってみて、いかがでしたか?

阿部:スピード感がありました。考える時間ももったいないくらいだったので、大前提、方針に沿っているなら迷わず進める、といった感覚で、完璧でなくてもいいからとりあえずアイデア、対策案を出して、あとは対策会議のメンバーで検討する、という状況でした。

―人の命、健康がかかっていますからね。

阿部:はい。実はスピードを意識する時間さえなかった、というのが実感です(笑)。今も新型コロナウイルスは消滅したわけではないですから、油断をせずに手を打っていきたいと思います。

  • これからも油断をせずに手を打っていく、という阿部氏

    これからも油断をせずに手を打っていく、という阿部氏