コロナ禍を経て、さまざまな働き方を企業が取り入れるようになり、昨今では働き方とともに“働く環境”も重視されるようになってきています。

カシオでは、そういった世の中の動きが加速する前の2019年から、“働く環境”を一新して社員の能動的な働き方を推進することを目的とした「次世代環境構築プロジェクト」を始動。その一環として、開発拠点である羽村技術センターの建て替えと、本社ビルのリノベーションを実施することになりました。

新技術センターは2025年3月に、本社ビルは2025年6月に着工し、それぞれ2027年9月、2026年11月に竣工を予定しているとのこと。今回は、そんなプロジェクトメンバーである小山睦さん・花房紀人さんに、発足の経緯や構想についてお話を伺いました。

  • 左からプロジェクト全体のデザイン監修を担当されている花房紀人さん・開発拠点のプロジェクトリーダーを担当されている小山睦さん

タコつぼ化からの脱却

---最初に、プロジェクト発足の経緯を教えてください。

小山氏:カシオには、東京都の郊外に羽村技術センターという開発拠点があるのですが、1979年に竣工した建物のため老朽化がかなり進んでおりまして。その建て替えをどうするかと検討していた際、せっかくの機会なんだから、社員が中心となってどんな建物がいいのか考えようという話になったんです。それなら、本社も含めて社員が働きやすい、この会社そのものの活性化になるような環境を作っていこうと話が広がり、プロジェクトが発足しました。

---続けてプロジェクトの概要を教えてください。

小山氏:本プロジェクトは、カシオが持続的に成長していく基盤作りの一環になっています。社員ひとりひとりが自ら考えて自律的に行動する風土を醸成していくための、仕組みや空間を整えるというプロジェクトですね。その最も大きなアクションとして、建物の建て替え・リノベーションを進めています。

---具体的には、どのようなものになりますか?

花房氏:羽村の新棟建築と本社のリノベーションには、どちらも社員の能動的な働き方を推進するため、ABW(Activity Based Working)という思想を柱に据え、多様なスペースを導入します。 というのも、カシオは事業品目ごとに業務が高度に分担されていて、ある意味シナジーの生まれにくい構造にもなっておりまして。

---いわゆる縦割り、というものでしょうか。

小山氏:かつての事業部単位の独立体制が長かったからかもしれません。ここ数年の開発部門は統合型の組織にはなっていますが、それぞれの製品ジャンル毎に担当者が分かれた形がまだ残っているんです。そうなると、同じ会社にいるにも関わらず、自分が担当している製品のことしか分からないままになってしまって。例えば、私はずっと時計の開発に関わってきて、時計関係のことなら一通り分かる一方で、電卓の開発メンバーが何をやっているのか全然知らなかったんです。

---時計なら時計、電卓なら電卓という形で分かれているから、他の領域のやり方などが見えないというか。

小山氏:そうです。我々はこれを「タコつぼ化」と呼んでいます。

花房氏:他のグループの仕事や技術にお互い触れ合えば、予期しない発想が生まれたり、新たな事業のきっかけが見つかったりするかもしれないじゃないですか。そういった点を踏まえ、設備を目的やエリア別に集中させて、費用対効果や空間効率を最大化することに加えて、コミュニケーションの活性化やカルチャーが変革することにも期待して、ABWを導入しようと考えました。

小山氏:ABWの具体策として、新しい羽村技術センターは実験設備を集約したラボ棟を新設し、横断的な開発環境を整えます。これにより、例えば時計の無線の開発者が、隣で他の品目の無線を作っている人の作業を見たり、聞いたりすることも自然とできるようになると思います。

  • 新羽村技術センター全景イメージ(向かって右奥がラボ棟)

花房氏:同様に、オフィス棟や研究棟では、長手で120メートルにもわたって壁がないオープンなスペースで、さまざまな役割の社員が行き交いながら仕事ができる作りにもなっているんですよ。

  • オフィス棟執務エリアイメージ

小山氏:最上階の食堂では、ご飯の時間以外はあたかもカフェでゆったりと仕事をするような、頭を切り替えた働き方をできるように、席の作りや電源の確保を工夫しています。

  • 食堂イメージ

屋上には富士山の見えるルーフテラス、オフィス棟とラボ棟の間には中庭も作ってあり、気持ちいい外の空気や日の光を浴びながら仕事をすることもできますよ。これまでとは大きく違った、遊び心や快適性に富んだ環境で、伸び伸びとアイデアや議論を広げて貰えるのではと思っています。

  • ルーフテラスイメージ

  • 中庭イメージ

花房氏:本社は建て替えではなくリノベーションですが、ABWに向けた工夫の徹底は羽村と共通で、大規模な改装となります。事務机が整然と並んで座席が決まっている旧来のスタイルから、仕事の内容やシチェーションに応じて使い分けられる多様な席や設備を設けます。

  • 執務フロアイメージ

とりわけ過去になかった空間として、どの部門の人でも出張者でも誰でも自由に利用できる、コミュニケーションとマインドの切り替えに特化したワンフロアを作る予定です。羽村のテラス同等とまでは行かないものの、同じようにアウトドア気分を味わえるキャンプ系の家具を置いたり、カフェのような本格的なコーヒーベンダーを置いたり。先端のカルチャーに触れられるライブラリーや、大きなイベントを開催できる階段スタンド席の設置も準備中です。思わず立ち寄りたくなるしつらえで、自然と多様な人たちが集まって、組織の枠に囚われない交流が活性化してくれることを期待しています。

  • コミュニケーションフロアイメージ

社員みんなが能動的に動ける取り組みでないと雰囲気は変わらない

---その他、どのような取り組みをおこなっていく予定ですか?

小山氏:社員を巻き込んだイベントを定期的に催していければと思っています。例えば、新開発センターの愛称を決める公募や選挙をするとか、取り壊してしまう現社屋とのお別れ会とか。竣工後には中庭を使ってバーベキューなどもできそうです。羽村は緑が豊かなので、それを活かしたネイチャー体験のイベントなんかもできればいいなと考えています。

花房氏:多くの社員になるべく関わってもらいながら、自分たち皆の新環境として、能動的に盛り上がって楽しんでいただけるようにしていきたいと思っています。

小山氏:例えば導入する家具ひとつをとっても、皆で一緒にコンペで選んだりできれば楽しいじゃないですか。そういう「楽しい」という気持ちが何より大切なのかなと。

花房氏:作り手である私たち社員がまず楽しくないと、世の中の皆さんに楽しんでいただけるいいもの、新しいものは作れないと思うんですよね。今回のプロジェクトをきっかけに、社員皆に、シンプルに「楽しい!」という気持ちも醸成できたら、と考えています。


小山氏:本当ですね。これは、私たち二人に限らず担当役員も含めプロジェクトメンバー共通の思いです。そのためにも、他社さんがどういう取り組みをやっているのかを知ることも大事だと考え、メンバーでは色々なところへ出掛けて行って常に勉強していますね。

花房氏:その成果として、2年ほど前からコクヨさんにオフィス改革のコンサルティングに着いていただいています。主なオフィス什器のメーカーさんのショールームは全て見学させていただいたのですが、中でもコクヨさんの数々の取り組みや工夫に、最もカシオにフィットする感覚を受けたのがきっかけです。古い建物も前向きに活かしたDIY的なスペースの作り方から、植物や自然素材を多く使った安らげる雰囲気など、肩ひじを張らず自然体にワークプレイスを整える提案をたくさんされていました。コクヨさんのオフィスを見てから、こんな考え方もしていいんだ、こんな働き方もあっていいんだ、とメンバー一同、発想の枠を大きく広げることができましたね。

小山氏:これまで蓄積してきた情報やノウハウなどを、今度は社員と一緒にディスカッションして、カシオ流にカスタマイズしていこうと思っています。我々はプロジェクトの推進役ですが、こういう取り組みって旗振りだけが動いても、結局は何も変わらないですから。社員みんなが能動的に関わっていける取り組みにできないと、社内の雰囲気は変わらないと思っています。

---そういう意味では、これからカシオさんに入社される方は、新しい環境づくりやリノベーションに参加できるかもしれない。

小山氏:そうですね。建物を新しくするのはあくまでもスタートで、継続的なPDCAが大事です。社員のいろいろな意見をどんどん聞いて、ブラッシュアップを重ねていきたいと考えています。

---社員の方々が能動的に働けるよう、オフィス環境の構築のほかにはどういった取り組みを行っていますか?

花房氏:プロジェクト発足当初から、自分の所属拠点だけに縛られないフレキシブルな働き方ができたら、という課題がありました。そんな中コロナ禍が起き、一気に普及した貸オフィスサービスに着目。先ごろ、NewWorkというチェーンと契約ができました。主要な路線の多くの駅には、カシオの社員なら誰でも使えるNewWorkの支店があります。出張の移動中に途中下車して効率的にオンライン会議に出たり、在宅勤務中に家庭の事情に煩わされない場所を確保したいときに使ったりなど、さっそく様々に活用されています。

小山氏:アパート暮らしの若い社員からは、在宅ワークするにも家の小さな机や椅子では長時間のデスクワークが辛く、貸オフィスに助けられているという事例も聞きました。そういう活用方法もあるんだと、発見でしたね。

花房氏:以前に比べて働き方の自由度が明らかに上がっていて、生産性向上に大きな効果があると感じています。

---最後に、プロジェクトに関わるお二人から読者のみなさんにメッセージをお願いします。

小山氏:間違いなく楽しい職場になると思っています。カシオを働く場所として検討されている方や少しでも興味がある方は、新しい建物ができたらぜひ一度見に来てください。みなさんと一緒に働き方もブラッシュアップしていきたいと思っています。

花房氏:今後2、3年をかけて、今までのカシオとは全く違う環境になると思います。それによってカシオが創業から掲げている「創造 貢献」、また、それに加わる新たなパーパス「驚きを身近にする力で、ひとりひとりに今日を超える歓びを。」を実践することが、今まで以上にできるようになるはず。それに共感していただける若い方々と出会い、一緒にとり組んでいけたら。心から楽しみにしています。

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カシオのこれからを担っていく次世代が、より働きやすいと感じられる環境を実現していく本プロジェクト。カシオでは、本プロジェクトをはじめ、社員のためを考えたさまざまな取り組みを行っています。カシオがどんな会社か気になった人は、一度採用サイトをのぞいてみてはいかがでしょうか。

[PR]提供:カシオ計算機株式会社