近年、日本を含むアジア太平洋地域のインダストリー4.0市場は著しい成長を見せています。モバイル関連の調査会社であるGSMA Intelligenceによると「アジア太平洋地域の国々は、経済構造の生産性と回復力を高めるために、国家レベルでインダストリー4.0の枠組みを確立している」としており、日本、韓国、シンガポールでは専門家を集めた公式のタスクフォースを設置しています。

このような状況の中、製造業に携わる企業ではインダストリー4.0を効率的に活用するために、レガシー・システムや従来のプロセスから脱却し、次世代技術によるプロセスの自動化、改善、合理化を始めています。Deloitteの調査によると、デジタル技術を活用している企業は収益力向上をはじめ様々な恩恵を享受していると報告しています。

さらに同社が2020年に実施した調査では、デジタル・トランスフォーメーションの成熟度が高い企業は、純収益が45%増加したと報告しています。

製造業のパフォーマンス向上

製造業では、コスト、品質、生産性が3つの重要な柱となります。先進的なテクノロジーとサービスは、この3つの柱に変革をもたらし、収益が改善されると推測します。

また製造業では、コンピューター支援エンジニアリング(CAE)、電子設計自動化(EDA)、有限要素解析(FEA)を含む様々な製造プロセスに活用できる、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)が注目を集めています。HPCは、高度な設計シミュレーションの実行から、プロセスの自動化、メンテナンストラブルの予測まで、製品開発のあらゆる段階において活用可能で、特定のワークロードに対応する多くのソリューションが提供されています。

AMDでは、「EPYC」プロセッサーや「Ryzen™ Threadripper™ PRO」プロセッサー、最近発表したAMD 3D V-Cache™テクノロジーを搭載する「AMD EPYC™ 7003」プロセッサーなど、お客様のご要望に沿ってHPC向け製品を提供しています。

「AMD EPYC™」プロセッサーを採用したデータセンターは、あらゆる規模のCAEおよびEDAワークロードに優れた性能と拡張性を提供します。またAMD EPYCプロセッサーはレイテンシーを低減することにより、CAEやEDAなどのエンジニアリング・シミュレーション・ワークロードのコンピューティング・スループットを向上させ、高品質で優れた製品設計を可能にします。

AMD Ryzen Threadripper PROプロセッサーは、マルチスレッド・シミュレーションとレンダリング向けに最大64コアを提供します。またスレッドの少ないワークロードには高周波数対応コアの利点を活かして、最も要求の厳しい設計プロジェクトを支えます。

AMD EPYC 7003プロセッサーは、AMD 3D V-Cacheテクノロジーを搭載し、FEAや数値流体力学(CFD)などの製造業に関わる技術計算ワークロードの性能を向上させます。

Point

CFDワークロード(流体力学の解析の高速化)
Ansys Fluentによる数値流体解析で最大 82% の高速化を達成。
FEA ワークロード(有限要素法解析)
64コアの「AMD EPYC 7773X」プロセッサーは、Altair® Radioss®シミュレーション・アプリケーションにおいて、競合製品と比較して平均44%高い性能を発揮。

消費電力の削減とセキュリティーの強化

上記のような先進的なテクノロジーの採用に加えて、コストと品質、生産性のバランスを向上させるためにエネルギー効率やセキュリティーなども検討する必要があります。

消費電力の削減

消費電力の削減は、環境だけでなく、企業の総所有コスト(TCO)にも関わる重要な課題です。例えば、AMD 3D V-Cacheを搭載したAMD EPYC 7003シリーズ・プロセッサーは、消費電力を最大30%削減し、推定123.53メトリックトンのCO2を削減することが可能です。これは米国の森林49エーカー分の年間炭素吸収量に相当します。

さらに、V-Cacheテクノロジーを搭載していない場合と比較して、サーバーの使用台数を最大30%削減し、3年間のTCOを最大30%削減します。

セキュリティーの強化

世界中でスマート・ファクトリーへの取り組みが進み、サイバーリスクの増加が予想されるなか、製造業にとってはセキュリティーも重要な課題となります。 DeloitteとMAPI(Manufacturers Alliance for Productivity and Innovation)の調査によると、製造業の48%が、スマート・ファクトリーにおける最大のリスクとして、サイバー・セキュリティーを含む運用リスクを挙げています。この調査では、多くの製造業が、オペレーションを管理する制御システムでサイバー関連のインシデントが増加していると回答しています。

スマート・ファクトリーの多くが計画中、あるいは初期 にある今こそ、サイバーリスクの課題に取り組む必要があると言えます。そのためには、プロセッサー・レベルからエンド・ツー・エンドのセキュリティー制御を最適化して設計することが必要で、パフォーマンスを担保できる適切なセキュリティー・ソリューションを選ぶことが重要になります。

シリコン・レベルで組み込まれた「AMD Infinity Guard」は、内部および外部の脅威から保護し、システム性能への影響をほぼゼロにしてデータを安全に保つ高度な機能を備えています。

今後のインダストリー4.0に向けて

新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年8月頃にはスマート・ファクトリーのデジタル化に世界規模で遅延が見られていました。今後もこの分野への投資が続く可能性は高く、製造業ではインダストリー4.0に向けて適切なツールとリソースに投資を行う時期を迎えていると考えられています。

著者
ピーター・チェンバーズ

AMD プロダクト部門 アジア・パシフィック&ジャパン担当
マネージング・ディレクター

ピーター・チェンバーズは、アジア太平洋および日本のメガリージョン担当マネージング・ディレクターとして、OEM、AIBパートナー、ディストリビューター、リセラー、VAR/SI、小売店、エンドユーザーを含めた、エンドツーエンドのエンゲージメントや販売戦略の策定・実施を担当しています。現在は、コンポーネント、コンシューマー、コマーシャル、サーバーなど、AMDの主要製品の収益を担うチームを率いています。

24年以上にわたるセールスやマネジメント経験を持つピーターは、グローバルでのブランド開発における革新的な戦略の策定を得意としています。これまでに培った専門知識と経験により、AMDプラットフォームを市場で効果的かつ競争力の高いソリューションとして位置付けられるよう、主力ソリューションやパートナーシップの採用を強化しています。

以前は、AMD APJのコンシューマー・セールス・チームの責任者として、9四半期連続で前年同期比成長を達成しました。ピーターは、AMD製品が提供する性能と価値をパートナーや消費者に伝えることに注力しています。

[PR]提供:日本AMD株式会社