皮膚科の診断ダーモスコピーに適した、皮膚観察用のダーモカメラ「DZ-D100」とダーモスコープ「DZ-S50」を開発したカシオは、海外展開を進めている。だが、国内と海外では事情の異なることも多い。海外の皮膚科医からはどのような評価を得ているのだろうか。台湾の新北市で皮膚科と美容皮膚科を営むチャン(張英睿:Ying-Jui Chang)医師にオンラインで話を聞いた。
※台湾ではDZ-D100・DZ-S50は販売されていません。(2021年3月1日時点)
ほぼ全員をダーモカメラで撮影
――チャン先生はカシオのダーモカメラとダーモスコープを普段からご活用と伺いました。普段はどのように運用しているのでしょうか。
チャン医師:「普段は、新北(シンペイ)市内の私のクリニックで使っています。新北市は台湾北部の台北市と隣接する、比較的新しい高層都市です。台北市や基隆市と一緒に台北都市圏と称される大都市の一つになっています。
私はそこで20年以上皮膚科医として活動しています。皮膚の色素性疾患だけでなく、疥癬やニキビダニによる感染症、爪、髪などに関するケアもすべて診ており、皮膚の手術も行います。美容皮膚科、皮膚外科も営み、エステティックサービスも提供しています。自分のクリニックでの利用はもちろんですが、総合病院にもパートタイムで行くことがあり、そこへもカバンに入れて持っていき、利用しています。
美容整形の場合は手術前後の評価には常にダーモスコピー検査を利用します。レーザー治療の前に一般的な母斑の形態をダーモスコピー検査でチェックして、母斑の深さや病変をきれいにするための切片をどうすれば良いか推測しています。
クリニックでは一日に70~80人、多い時は100人ほどの患者を診察します。月間だと1,500人程度です。患者は高齢者から幼児まで幅広い年齢層で、美容皮膚科では男女別だと女性のほうが少し多いです。このほぼ全員に対して、ダーモスコープを使用しています。
台湾では医療保険の保険金を受けるには、疾患部を撮影することが義務付けられています。そのため、基本的に写真に撮られることを嫌がる患者はいません。また、治療から一年後などに再び病院に来た患者に変化を見せるためにも使用します。使用用途も説明するので問題になることはありません。台湾では紙のカルテはほとんど使われておらず、電子カルテが主流になっています。撮影した画像はそこに載せています」
――毎回DZ-D100で撮影するメリットはどこにあるのでしょうか。
チャン医師:「大きく3つあります。1つ目は皮膚科専門医向けに作られていること。2つ目は診断プロセスの信頼性を高めてくれること。3つ目は通常モードと接写モードの切り替えが容易な点です。
DZ-D100は、スケールを使用してサイズを測定できます。ワンショットで偏光、非偏光、UVが同じ画角で高品質で撮影できるので比較によるチェックが容易です。
動画も撮影できるので、真皮型色素性母斑などの状態を見るWobble test(ゆらぎテスト)も行います。ほかにも、オプションパーツを使って顕微鏡につなげて病理を見ることもあります。
カメラとモニターをHDMIケーブルで接続して撮影画像を映し出せるので、重要な所見をリアルタイムで患者に説明するときに便利です」
――かなりしっかりご活用いただいているようで驚きました。カシオは台湾ではまだDZ-D100とDZ-S50を発売していません。どのようにして知ったのでしょうか。
チャン医師:「2017年に韓国で開催された大韓民国皮膚科学会(KDA)の会場で、東京女子医科大学東医療センターの田中 勝先生のセミナーを受講したのがきっかけです。セミナーで田中先生がDZ-D100を紹介していて良さそうだなと思いました。当時はまだ開発中でプロトタイプの紹介でした」
――実際に手に持った第一印象はどうでしたか?
チャン医師:「DZ-D100もDZ-S50も大変気に入りました。DZ-D100は新しいおもちゃを手にした子供のようにいろいろ試しました。DZ-S50も小さく使いやすく、手に持った時に『これだ!』としっくり感じたのを覚えています」
早く台湾でも正規販売を始めてほしい
――使用した感想もお聞かせください。
チャン医師:「記録を残すうえで素晴らしく役立っています。私は総合病院の研修医へ指導もしていますが、そこでもこのDZ-D100を紹介しました。先程も述べたとおり、いつもDZ-D100とDZ-S50をカバンに入れて持ち運び、病院では誰でも使えるようにしています。まだ販売前なので台湾の開業医の中では、私の知っている範囲では他に使っている先生はいませんが、正式に販売されるようになれば浸透していくと思います。
私はダーモカメラを含めて数台使っています。普通の一眼レフも持っていて、バッテリーが切れた時などはそちらを使うこともあります。美容皮膚科もやっているので、美容系専用の顔面全体を撮影するカメラなども設置しています。顔面全体を撮影するカメラは、顔を押し付けて撮るもので、かなり大きいですよ」
――操作の分からなかったところや、購入前の想定外の使い方ができたところなどありますか?
チャン医師:「操作はすぐに慣れ、不明のところも特にありませんでした。想定していなかった使い方としては接写が挙げられます。普通のカメラではレンズを皮膚に密着して撮影することはありませんが、DZ-D100では近接撮影どころか、本当に密着して撮影できます。レンズの汚れはハンカチなどで拭けば良いので助かります。保護フィルムも販売しているとのことなので、カメラと一緒に台湾で正式販売してほしいです」
――台湾での販売は2022年中の開始を予定して準備中なので楽しみにしてください。中華圏で有数のデザイン賞である「Golden Pin Design Award 2021(金點設計獎 2021)」で、DZ-D100とDZ-S50がBest Design Awardを受賞しました。台湾での販売にも弾みが付くのではと考えています。
チャン医師:「それはおめでとうございます。症例データなどは、多くの先生が利用することで生きてくるものなので、学会などの先生方が集まる場所で紹介できるよう頑張ってください」
――本日はありがとうございます。
豪州や米国でも販売を開始
皮膚がんの罹患率は国や地域によって大きく異なる。台湾は日本とあまり変わらない傾向ということもあり、台湾の多くの皮膚科でダーモカメラが使われるようになれば、日本人に近い症例も多く集まるだろう。また、Golden Pin Design Award 2021でアワードを受賞するなど、日本のメーカーの製品が海外で評価されることは同じ日本人として純粋に誇らしい。
カシオでは2021年2月のオーストラリア及びニュージーランドでの販売を皮切りに海外での販売を開始し、11月にはアメリカでも米国食品医薬品局(FDA)の認可を得て、今年度中にカシオアメリカのECサイトで販売を開始する予定だ。ダーモカメラとダーモスコープはグローバルでも評価されるのか。Made in Japanの底力を感じさせる、これからの展開に期待したい。
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