さまざまなセンサーで収集したビッグデータをAIやBIツールによって解析して、ビジネスや社会活動に役立て、大きな成果を生むケースが増えてきた。しかし世の中には、センサーからのデータだけでは把握しきれない情報が無数に存在している。まだまだ人間の五感による情報収集や、その情報に基づいた状況判断は欠かせない。人間同士がコミュニケーションの中で知恵を出し合い、臨機応変な対応を取らなければ、社会を回すことはできないだろう。

「重要な時に人を動かし、 繋がるための革新的なものを創り出す」のミッションの下、人のコミュニケーションを長年にわたってサポートしてきたのが、モトローラ・ソリューションズだ。業務用無線の分野で世界有数の同社が、2019年5月から新サービス「WAVE PTX」の国内提供をスタートした(2020年5月までのサービス名は『WAVEブロードバンドPTT』)。従来の無線や携帯電話との違い、どういったメリットがあるのか、また今後予定されているサービス展開などについて、同社に取材した。

ブロードバンドの利用で進化したPTTコミュニケーション

無線通信におけるPTTとはPush To Talk、つまり発話する時にのみ、無線機のボタンを押すタイプのものを指す。携帯電話との違いは、同じチャンネルに設定した無線機同士であれば、大人数であってもリアルタイムでコミュニケーションが取れることにある。業務用無線としては古くからあるタイプで、現在でも建設現場のようなフィールドワークをはじめ、レストランや店舗、ホテルといった施設など、実に多くのシーンで、スタッフ間のコミュニケーションに活用されている。

「音声というのは人間にとって一番直感的なインターフェースです。何か作業をしながらでも、音さえあれば指示が伝わるというのが、無線の大きなメリットでしょう。離れた場所に点在するチームのメンバーが、互いに連絡を取りつつ、ひとつのことを成し遂げていくような業務・活動に、PTTは最適なツールと言えます」と、モトローラ・ソリューションズ Japan Product Manager 松田 保氏は言う。

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    Japan Product Manager 松田 保氏

しかし従来のPTTは、各無線機が送受信する電波を使用しているため、通信範囲が限られてしまう、建物の奥まったところでは電波が届かないということがあった。そうした場合は中継器を置いてカバーすることもできるが、その分コストもかかってしまう。

「一方、WAVE PTXは、通信にブロードバンド・ネットワーク(LTE)を使っていますから、携帯電話が通じるところであれば、どこでも繋げられます。標準プランであれば90チャンネル以上を設定でき、各チャンネルには250人が参加できます」(松田 氏)

専用無線機を使う以外に、スマホアプリでもPTTの利用が可能に

広域かつ大人数でのコミュニケーションを可能にするWAVE PTXのサービス開始から約1年、すでに多くの現場で利用が進んでいる。大型ショッピングモールや高層階を有するホテルでの連絡業務、大規模イベントでの会場警備、さらに移動距離が大きい運輸・運送業でも、これまでのPTTより使いやすく繋がりやすいと好評だという。

平時だけではなく、災害発生時のコミュニケーション支援にも貢献できると、モトローラ・ソリューションズ マーケティング部の高木 秀子氏は語る。

「2019年10月、台風19号が日本列島に上陸して大きな被害を生んだ際、当社は復興を支援するボランティア団体に、WAVE PTXを提供しました。被災地に入って被害状況を確認する先遣隊と、全国各地に点在する関係機関、支援団体とのやりとりなどに利用され、必要な支援内容の判断や、円滑な物資の手配、ボランティア人員や重機のスケジュール管理などにご利用いただいたと聞いています。復興活動に携わられた方からは、遠く離れた場所にいても関係者全員がリアルタイムにコミュニケーションを取れ、非常に役に立ったという感想をいただきました」(高木 氏)

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    マーケティング部 高木 秀子氏

WAVE PTXのもう一つの大きな特長は、ユーザーが自分のスマートフォンやタブレットに「WAVE ブロードバンドPTTモバイルアプリ」をインストールすれば、専用の無線機がなくてもPTTコミュニケーションに参加できるという点だ。音声に加え、テキスト、画像、映像などのファイル添付ができるメッセージ機能、スレッド形式での受送信履歴表示、位置情報サービスなど、より多角的な使い方が可能となる。

別々のチャンネルを利用しながら複数のチームが動いているようなケースでは、クラウド上に構築されたWAVE PTT管理コンソールが役に立つ。コンソールからはメンバーの管理だけでなく、個々のチームに直接連絡を取ったり、メッセージを送ったりすることができる。

  • 専用無線機(TLK100)の他、スマホアプリでも利用できる。
    クラウド上に用意されたコンソールからワークグループの管理も容易に。

通信インフラには、柔軟なサービスに対応した「IIJモバイルサービス/タイプI」を採用

従来の無線よりも広域でクリアな通信を実現したWAVE PTX。そのインフラに採用されているのは、インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)が、フルMVNOとして法人向けに提供しているデータ通信サービス「IIJモバイルサービス/タイプI」だ。フルMVNOとは、移動体通信事業者(MNO)から基地局などの無線アクセス設備を借りつつも、加入者管理機能(HLR/HSS)は自社で保有・運用する事業者のこと。フルMVNO事業者となることで、従来のMVNOに比べ、柔軟なサービス展開を行うことが可能となる。

フルMVNOだからこそ利用可能な機能・サービスは、WAVEブロードバンドPTXにも多数採用されている。たとえば無線機に挿すSIMの状態を、開通(アクティブ)と中断(サスペンド)にリモートで切り替えられる「SIMライフサイクル管理機能」、海外でも利用できるIIJ独自の「国際ローミング」、SIMカードを別の無線機やスマートフォンなどに挿すと通信できなくなるセキュリティ機能「IMEI認証」などだ。

「当社の場合、製品・サービスの開発は、アメリカ、中国、マレーシア、インドなどの海外拠点で行っているため、試作機の問題解析や機能拡張、利用前開通テストなどに、IIJの国際ローミングは不可欠でした。また通信をしない期間はSIMをサスペンドできる機能があることで、お客様に比較的安価な料金プランを提案できています」(松田氏)

IIJでも、「IIJモバイルサービス/タイプI」を利用したモトローラ・ソリューションズの新サービスを高く評価している。先進的なソリューションで顧客の幅広い要望に応え、ビジネスの拡大に尽力したパートナーに贈る「IIJ Partner of the Year 2019」(2020年2月発表)では、モトローラ・ソリューションズを大賞となる「Partner of the Year」に選出した。

ビデオストリーミングなどのマルチメディアを採り入れ、拡がる可能性

モトローラ・ソリューションズは、今後WAVE PTXをさらに進化させていくという。2020年6月にはシステムソフトのアップデートを図り、ビデオストリーミングをはじめとするマルチメディアにも対応できるようになった。

「ビデオストリーミングには、さまざまな使い方が考えられます。警備会社なら、各警備員が持つスマートフォンの映像を、警備センターのコンソールで確認できるようになるので、円滑な状況把握に役立ちます。また救急医療の分野では、救急車からでも患者の状態を医師に見せることができるので、必要なケアを迅速に施すことが可能となります」(松田 氏)

また工事作業では、離れた場所にいる熟練のエンジニアから送られてきた映像を見ながら、現場の作業者に指示やアドバイスを出せるようになる。これなら作業者の経験が浅くても、難しい工事に対応できるようになり、人手不足の解決策としても利用できそうだ。

昨今、新型コロナウィルスの影響で増えつつある、リモートワークでの活用も考えられると、モトローラ・ソリューションズ チャネル事業本部 本部長 小林 広高氏は言う。 「そもそもはフィールドワーカー向けのソリューションとして開発されたものですが、ウィルス拡散防止のために人と人が接触しにくい今、PTTは私たちが生活を営むうえで不可欠なエッセンシャルワーカーの方々をはじめ、企業の皆様にもご活用いただける機会が増えつつあります。我々としても、今後そうした皆様への使い方の提案をしていきます」

  • モトローラ・ソリューションズ株式会社
    チャネル事業本部 本部長 小林 広高氏

APIを整備・公開し、PTTのプラットフォーム・プロバイダを目指す

さらに同社では、パッケージ化されたサービスを提案・提供するだけでなく、PTTエンジンのAPIを整備して、他企業に公開していくことを考えているという。つまりPTTのプラットフォーム・プロバイダとなって、その高品質な技術を提供することにより、さまざまな新サービス、新ビジネスの創出に貢献しようということだ。

「無線の技術は、これ以上改良できないと言われるほどシンプルなものですが、シンプルな分、利用される方々の想像力で、さまざまな使い方をつくり出すことができるでしょう」と高木氏も、PTTが秘めた可能性に期待をにじませる。

物理的な「密」を避けつつ、大人数での濃密なコミュニケーションを実現できるWAVE PTXの用途は、今後大きく拡がっていきそうだ。なおモトローラ・ソリューションズでは2020年9月末まで、新型コロナウィルス感染症対策支援サービスとして、企業, 教育機関, 医療機関, 福祉施設, 行政機関を対象に、WAVE PTXを無償提供している。非接触コミュニケーションの必要性を感じている方は、以下のサイトを参照してもらいたい。

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