「ひとり情シス」の多い日本の中堅企業ではWindows 10への移行やノートPCの導入が思うように進んでいない。だが昨今の世相状況によりいま、企業はテレワークの導入を余儀なくされている。デルが行った「IT投資動向調査 2020」をもとに、中堅企業が抱えるIT課題について改めて考えていきたい。

デルおよびEMCジャパンは2月27日、日本国内の中堅企業に対して行われた「IT投資動向調査」の最新結果を発表。IT投資規模および投資動向、潜在化している課題を浮き彫りにした。調査は2019年12月9日から2020年1月24日にかけて行われ、有効回答を得られた約1,300社を対象としている。

本稿では、デル株式会社 上席執行役員 広域営業統括本部長 瀧谷 貴行氏、同 広域営業統括本部 フィールドセールス本部 中部営業部兼西日本営業部 部長 木村 佳博氏らとのWebインタビューおよび「IT投資動向調査 2020」の結果をもとに、現在の社会情勢前後を踏まえた中堅企業が抱えるIT課題の原因を考えていきたい。

  • (写真左上から時計回り)
    デル株式会社 上席執行役員 広域営業統括本部長 瀧谷 貴行氏
    同 広域営業統括本部 フィールドセールス本部 中部営業部兼西日本営業部 部長 木村 佳博氏
    同 企画部 藤村 こなつ氏

    セキュアワークス株式会社 マーケティング事業本部
    フィールドマーケティングマネージャー 寺下 理恵氏

    デル株式会社 マーケティング統括本部 広域法人マーケティング
    シニア・アドバイザー 粟津 和也氏

    マイナビニュース編集部

このインタビューは、取材対象者とスタッフの間隔を十分に確保するため、Web会議システムを利用して行いました。

「IT投資動向調査 2020」のハイライト

従業員100名以上1000名未満の中堅企業は日本全域で約43,000社存在しているが、デルはその73.4%に相当する約30,000社とすでに取引を行っている。デルにおける日本の中堅企業向けビジネス実績は堅調に推移しており、対前年比で全体では+約50%、PCのみでは+約75%の成長を達成した。

「IT投資動向調査 2020」は、このような中堅企業のうち有効回答を得られた約1,300社を対象とし、全55項目についてアンケート調査を行ったものだ。瀧谷氏はハイライトを大きく3つにわけて説明する。

1つ目は約49%の中堅企業がデジタル化への積極投資を行っており、約73%が自社内でIT人材を育成し内製化したいと考えているという点。

2つ目は仮想化未実施の中堅企業が約31%であり、PC全台をWindows 10に入れ替え済みの中堅企業は27%に過ぎず、いずれもIT人材のリソース不足が要因であるという点。

3つ目は保有しているIT資産の運用に苦慮しており、IT基盤の構築・保守運用に外部リソースを活用している中堅企業が64%を占めているという点だ。1つ目とは正反対に、自社のリソースを使わずにアウトソーシングしたいという考えがみえる。

この結果をふまえ、デルは中堅企業が「極めて実務的なデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進」していると分析する。

  • 中堅企業IT投資動向調査2020ハイライト

従来型のIT技術活用の遅れのサマリは大きく4つ。テレワークを行うにあたり焦点となるのは、このうち「Windows 10全台入れ替え済みは27%」「55%はデスクトップを多く活用」の2点だ。セキュリティとモバイル化は切っても切り離せないのが実態といえる。

  • 従来型のIT技術活用の遅れのサマリ

Windows 10の切り替えはなぜ進まないのか?

デルにおける日本の中堅企業向けビジネス実績の成長要因として、1月14日のWindows 7の延長サポート終了をあげ「Windows 10の出荷実績は前年度の約2倍の伸びをみせている」と話す。さらに木村氏は、「Windows 10に“全台を移行または入れ替え済”と答えた中堅企業は昨年の5.8%から26.5%へと進捗したものの、全体の割合はいまだ3割弱にとどまっている」と続けた。

地域別に見ると「全台を移行または入れ替え済」の企業は南関東が31%と最も進んでいる。一方で都市圏を含むそのほかのエリアでは22%と、首都圏とそれ以外の地域による取り組みの2極化が起こっている。

移行を妨げる理由としては「移行作業 ・展開にかかる人手」が49.6%に及び、 IT人材不足が大きな足かせとなっていることがわかる。続いてOS移行後の運用問題「端末のOSバージョンアップに時間がかかる」「アップデートを行うために配布するファイルサイズが大きい」などがあげられており、IT担当者の負荷軽減が求められていることがみて取れる。 実際、中堅企業の37.4%は「ひとり情シス」企業となっており、このうちIT専任者が1名という企業が18.5%、いない(ゼロ)という企業が18.8%と、IT人材不足は継続している。また企業規模でみると従業員100~199名の企業において「ひとり情シス」割合が高く、約半数以上においてIT専任者が0~1名という状況だ。直近3年間でのセキュリティ事故の被害状況を見ると27.3%の企業がセキュリティ事故の被害に遭っているが、昨年と比べるとその数は8.4%減少している。主要因はランサムウェアによる被害の大幅な低下だ。

その背景にはWindows 10への移行が進んでいる企業ほどランサムウェアの被害に遭いにくいことが考えられる。実際にランサムウェア被害を受けた中堅企業の79%はWindows 7を継続利用しており、Windows 10への移行がランサムウェアを始めとするマルウェア対策に効果が高いことが数値として明らかとなっている。

ノートPCへの移行が進まない理由は?

デスクトップPCとノートPCの割合を「IT投資動向調査 2020」でみると、55%の中堅企業は主にデスクトップPCを利用していることがわかる。実際、デルの出荷台数で比較してもデスクトップPCの台数が同程度に多いという。そのうえで、モバイル化が進んでいない企業には6つの大きな要因があったとデル株式会社 広域営業統括本部 企画部 藤村 こなつ氏は述べる。

1つ目はセキュリティ。ノートPCは外部に容易に持ち出せるため、ヴィジュアルハッキングやネットワークハッキングによる情報漏洩、物理的な破損・紛失の可能性が高まる。

2つ目は管理/環境。社外でも勤務が可能となるがゆえに就業時間実態の把握が難しくなるほか、社外から社内にアクセスするためのVPNなどのインフラ設備ができていない企業はまだまだ多い。

3つ目は業務/運用。これまでデスクトップPCで業務が滞りなく行えており業務自体に変化がない場合や、外部でPCを利用する機会の多い営業社員などが少ない企業では、必要性自体を感じないことが多い。

このほか、コスト面でデスクトップPCより高価であることや、拡張性が乏しい・テンキーや光学ドライブなどの機器が別途必要になること、生産設備にデスクトップPCが紐づいているという製造業の特殊性が、モバイル化に踏み切れない要因となっていた。

しかし、2020年に入り状況が一変。テレワーク需要が急速に進行しており、直近の出荷実績ではノートPCの比率が6割を超えたそうだ。これはデルにとって過去最大値だという。木村氏は「テレワークが急に始まったことで『ノートPCにしておけばよかった』と話すお客様も多い」と現在の状況を説明する。

テレワークによって再びランサムウェアが増加

一方、テレワークによってノートPCを社外に持ち出す機会が増えたことで、ランサムウェアは再び増加の兆しを見せている。パーソル総合研究所が行った調査(※)によると、正社員におけるテレワーク実施率は13.2%、そのうち現在の会社で初めてテレワークを実施した人は47.8%にも上る。

(※)出典:株式会社パーソル総合研究所「新型コロナによるテレワークへの影響について、全国 2 万人規模の緊急調査結果を発表

テレワークを行うとなると、やはりVPN接続が主流になる。セキュアワークスの寺下氏は「今回のような急な対応ゆえに、突貫で利用を開始したVPN装置の脆弱性や安易なログインパスワード、設定やアップデートの不備が放置されたままになっており、セキュリティ上の問題が生じている」と現在の状況を説明する。

2019年には「Pulse Secure」や「NetScaler」などのVPNシステムの脆弱性を悪用したインシデントが大量に発生し、JPCERT/CCからも注意喚起される事態が起こっている。ランサムウェアはまだまだ世界中で蔓延しており、長期間潜伏して概ね3か月から半年後に感染を始めるパターンが多いため、いまだ予断を許さない状況だ。

全社テレワークを実現するためのデルの施策

それでは、いきなり「全社テレワーク」と言われたとき、準備の整っていない企業はどのようなステップでテレワークを実現すればよいだろうか。デルはそのための検討を7ステップで提案する。

  • テレワーク検討7ステップ

テレワークを実現するにあたり企業が解決すべき課題は多いが、その第一歩となるのはやはりノートPCの導入だろう。

最新のインテル® Core™ vPro® プロセッサー・ファミリーが搭載されたノートPCを導入することでOSは必然的にWindows 10を選択することになり、ランサムウェアへの対応も進む。ひいてはこれらがモバイル化を促す要因となる。

また、ビジネスユース向けに開発された様々な先進テクノロジーが採用されたIntel vPro® プラットフォームは、PCのログインをハードウエアベースで多要素化できたり、バッテリーの消費が抑えられていたりとテレワークに利用するのにうってつけの機能を有する。

それでも、IT人材の人的リソース不足および管理/運用面の負担は根本的な解決が難しい。この状況をカバーすべく、デルは2月に中堅企業デジタル化元年に向けた5つの新施策をスタートさせた。

  • 2020年中堅企業デジタル化元年に向けた5つの支援策

共有、学習、育成、実践、支援で構成されるこの支援策の中には、協業パートナー23社が行う9つのデジタル化支援のスモールスタートパッケージも含まれており、リソースの少ない企業でも従来型のIT技術活用を取り入れることが可能。年2回のFutureUpdateなど、「ひとり情シス」にかかる大きな負担を和らげることができる。

デルがIT投資動向調査を始めたきっかけは、首都圏以外の中堅企業が得られる情報の少なさをカバーするためだ。2020年度は、首都圏とその他の地域で生まれる情報格差を縮めるためセミナー、イベントなどの取り組みをより積極的に行っていくという。3月中ごろに行われたバーチャルオープンオフィスでは1週間で700社を超える応募があり、これから定期開催される予定だ。このような場を活用して情報収集や情報交換を行ってほしい。

待ち受ける変化に対応するには

最後に木村氏は、現在多くの企業がテレワーク導入を迫られている現状を踏まえ、これからのIT環境について次のように語った。

「私は、この状況が終息した後に、ITによる環境の変化を多くの企業が許容できる時代が来ると考えています。2019年にはモバイル化がなかなか進まない状況がありましたが、現状を鑑みて『モバイル化しない』という判断を行う中堅企業は少ないでしょう。現在のモバイルワークは半ば強制的に作られたものではありますが、この先、世相が落ち着いたとしても取り組みは継続すると思います」

あわせて外出の自粛のみならず、働き方改革という側面から言及を続ける。

「モバイルワークを体験した方は『もっとフレキシブルな業務環境ができれば、必ずしも出社しなくてもよいのではないか』という意識が生まれてくるのではないでしょうか。まさにいま、この状況下で培ったものを新しい環境下でさらに推進していくというのは、企業として今後取り組むべき課題なのではないかと考えています」

加えて、瀧谷氏は「中堅企業におけるIT課題の根本には、やはり人材不足という問題があります。やれることには限りがあり、優先順位の高いものから対応していかざるを得ません。日本人は仕事に対してまじめなので、これまでリモートワークは後回しになっていました。しかし、今回のような未曽有の事態で最優先事項になりました。であればこの事態が落ち着いた後も、設備投資を行ったリモートワークの環境を活かそうという方向に舵を切るのではないでしょうか。我々も中堅企業のお手伝いをすることで、日本のデジタル化を誘導していかなくてはならないと考えています」と、テレワーク環境を構築するための支援態勢を示した。

関連情報

本稿で取り上げたデルの中堅企業支援施策のひとつに、いま各社が抱えるIT課題を解決へと導くためのメソッド、ソリューションを紹介するWebセミナー『中堅企業バーチャルオープンオフィス』があります。

マイナビニュースでは、去る2020年4月15日(水)に開催されたLiveセッションを取材。このセミナーでは、多くの企業を悩ますIT課題を解消するヒントが提供されただけでなく、昨今の情勢に対し、デル自らが実践したテレワークへの対応策などが紹介されました。

セミナーの内容はぜひ、下記の記事をご参照ください。

デル、Web会議システムで「バーチャルオープンオフィスイベント」を開催――自社が実践しているテレワークの取り組みやDX事例を紹介

なお、中堅企業バーチャルオープンオフィスは、今後もコンテンツを増設しつつ開催される予定とのこと。最新情報は、デルのHPよりご確認いただけます。

中堅企業バーチャルオープンオフィスの最新情報はこちら

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