6月6日~9日の4日間に渡り、第118回 日本皮膚科学会総会が名古屋国際会議場で開催された。今回の総会ではカシオが皮膚科専門医と共同開発し、発売したばかりのダーモカメラを題材とするセミナーが設けられるなど、皮膚科の先生方から大きな注目を集めていた。

  • カシオのダーモカメラ「DZ-D100」ブース

本稿ではランチョンセミナーやダーモカメラの展示ブースの様子などをレポートするが、それに先立ち、ダーモスコピー診療を国内で早くから導入し、普及活動に勤しんできた東京女子医科大学東医療センターの田中 勝先生にインタビューし、DZ-D100発売の意義について語ってもらった。

  • 東京女子医科大学東医療センターの田中 勝先生

DZ-D100はAI診断研究のカギを握る

――田中先生には試作機もご評価いただきましたが、いよいよ発売された完成品を見てどのように感じましたか?

田中先生:「持ちやすいし軽いし、色も白が基調になっていて親しみやすく、女性でも使いやすそうだなと思いました。一眼レフカメラはゴツゴツしていて、色も黒基調なので女性が扱いにくい印象があります。皮膚科専門医は女医も多いのでこのデザインは正解でしょう。

ドクターが一人一台を持つくらい普及して、国内だけでなく海外にも広がって、世界中のダーモカメラがこのカメラを標準にすると良いと思います」

  • 発売されたばかりのDZ-D100の実機

――少し欲張りな印象も受けますが、それほど完成度が高いという評価ですか?

田中先生:「もちろん、それもありますが、画像の撮影から管理方法までしっかり考えられて作られているため、AI診断の学習に使える点が意義深いのです。AI診断に利用する画像は多ければ多いほど良いのですが、一方で明るさなどの撮影条件が揃った画像のほうが圧倒的に利用しやすくなります。

理屈の上では世界中の医者が全員同じカメラに統一してダーモスコピー画像を撮影することが、一番効率が良いとなります。現状、このカメラがダーモスコピー画像の撮影には最も優れているので、普及してほしいです」

――AI診断が進歩することで、どんなメリットがあるのでしょうか?

田中先生:「AI診断は疾患によって得意なものと不得意なものがあります。ただ、診断の得意な疾患でさえ、いくら進歩しても100%の正しい診断にはなりません。AIはあくまで過去の症例を参考にしながら、目の前の病理が何であるか確率で示すだけなので、医者がそれを見てどう判断するかが重要なのです。だから、医者が要らなくなることもありません。

もちろん、医者なら100%の正しい診断ができるかというとそれも違います。むしろ、医者も分からないものは分からないと言うべきです。ぽちっと小さいホクロができたとき、それが良性か悪性か誰にも分かりません。それが大きくなるに連れて分かりやすくなり、経過を追うごとにはっきりしていきます。医者が分からない段階で病変を取り除くという選択肢ばかり取っていると、患者の体は穴だらけになってしまいます。待てるところは待ったほうが良いのです。AI診断はその経過を追う、待つ時間の短縮に寄与します。病気が見過ごされることも防ぎやすくなるでしょう」

――DZ-D100で撮影した症例データが増えれば増えるほど、AI診断も精度が増していくのですね。

田中先生:「そうです。皮膚は目で見られるので経過観察しやすく、AIの研究に向いています。内臓はそのままでは見えませんからね。将来は人間ドックでMRIのような装置を使って経時的に全身撮影する日が来るかも知れません。それによって、全身の病変の立体画像が作れるようになり、半年や一年ごとにどんな変化が起きたか調べられ、皮膚がんの発見もより早く高精度で見つけられるようになるでしょう。

ただ、そこまでやっても、耳の中や髪の毛に覆われた頭皮は写りません。この分野はまだまだこれからなのです。AI研究を前進させるツールとして、DZ-D100には期待しています」

――ありがとうございます。

医療現場のニーズを汲んで開発されたDZ-D100

ダーモカメラを題材とするランチョンセミナーは、「AI診断サポートを見据えたダーモスコピー画像診療について」と題して実施された。田中先生が座長として進行役を務め、千葉大学の外川八英先生と信州大学の古賀弘志先生が順番に登壇した。会場は多くの聴講者で埋まり、皮膚科の先生方が高い関心を抱いていることが伺われる。

  • 多くの聴講者が集まったランチョンセミナー

最初に登壇した外川先生は「ダーモカメラを用いた新たなダーモスコピー診療」のタイトルで、DZ-D100がダーモスコピー診療において、従来難しかった撮影まで簡単な操作で行えること、それによって診療の可能性が広がることなどをスピーチした。

  • DZ-D100の開発に協力した千葉大学の外川八英先生

外川先生はそもそもダーモスコピーが面倒だと思われる理由から解きほぐす。外川先生が指摘する理由とは、腫瘍をダーモスコープで見ると余計に分からなくなったり、臨床写真に加えてダーモスコピーまで撮影するのは手間が掛かったりすること、あるいは往診にカメラを何台も持参したくなかったり、画像が増えて整理の手間が負担になったりといったものだ。

そこで、こんなダーモスコピー専用カメラが欲しい!と考えて、3年半前にカシオに伝えた項目が6つあったと言う。それは「臨床写真が(一緒に)撮れる」「病変全体のダーモ撮影ができる」「偏光・非偏光がワンボタンで撮れる」「ピントもバッチリ」「しかもコンパクトで軽い」「写真が無線LAN機能で飛ばせる」というものだった。

これら大きく6つの要望を実現すべく誕生したのが、5月27日に発売となったDZ-D100という訳だ。外川先生は個人的に「Ninja」の愛称を付けて呼ぶほど気に入ったと述べる。

DZ-D100では臨床写真が撮影でき、偏光・非偏光がワンボタンで撮れるのに加え、偏光・非偏光と同時に紫光(UV)画像も撮影可能となっている。紫光画像は特に表皮内のメラニンによる色素沈着を反映し、被写体の病変がほくろのがんと呼ばれるメラノーマだった場合には、マージンが少し明瞭になって判別が容易になるという。

  • DZ-D100の一台で臨床写真と接写が両方撮影でき、接写では偏光・非偏光・紫光がワンボタンで撮影できる

偏光撮影の際には光輝性白色線(shiny white lines)がアーチファクト(ノイズ)として見られ、偏光と非偏光を切り替えた際にはこの所見が見え隠れする。その現象はBlink sign(まばたき徴候)と呼ばれる。DZ-D100は動画も撮影可能で、動画撮影中に偏光と非偏光が切り替えられる。つまり、Blink signを動画で見つけられるということになる。

さらに外川先生はDZ-D100でWobble test(ゆらぎテスト)の動画撮影も可能であると述べた。

  • DZ-D100の動画撮影でブリンクサイン(Blink sign)が見つけられる

このほか外川先生は、DZ-D100で病変を歪みなく撮影できるか、被写界深度がどのくらいあるかなども調べ、他社製カメラと比較しても優秀な水準を実現していると報告。照射ムラや色のにじみがないことや、凹凸のある病変や血管所見の撮影に強いこと、AI診断に非常に向いていることにも触れた。

さらに往診の場などでノンゼリーで疥癬の診断に活用できること、HDMI出力端子でライブ画像を大型モニターに映し出して100倍近い拡大画像として見られることなども披露し、DZ-D100が医療現場の様々なシーンで有効活用できると熱く語った。

  • HDMI経由でモニターやプロジェクターの大画面に撮影画像を直接映し出せる

医療従事者向けならではの機能を豊富に備えた画像管理ツール

続いて古賀先生が壇上にのぼり、「診断サポート時代に備えるダーモスコピー画像管理テクニック」と題して講演した。DZ-D100で撮影したダーモスコピー画像をいかにして管理するかに着目し、カシオと共に開発したソフトウェア「D'z IMAGE Viewer」ならば、簡単な操作で安全に効率よく管理できると紹介した。

なお、D'z IMAGE Viewerは、カシオの「D'z IMAGE STORE」のサポートページにある「取扱説明書/ソフトウェアダウンロード」から無料で入手可能となっている。

  • 信州大学の古賀先生は主にソフトウェアの開発に協力した

古賀先生は、まず個人的な出来事としてAI(人工知能)のG検定に合格したと報告。今後、AI技術を利用した医療用画像診断支援システムの開発を考えたとき、学習データやバリデーションデータなどには、データソース、取得時の撮影パラメータ、紐付けした臨床データの種類、良悪性の鑑別結果も含むアノテーション、臨床画像データ以外のデータ使用の有無など、明記しなければいけないことが幾つもあると専門的な知見から指摘した。

ダーモスコピーにAIを活用する研究でも、撮影画像の管理は極めて重要になる。だが、その管理が煩雑になってしまえば、医療現場の協力を得るのは難しくなってしまう。

そこで、古賀先生とカシオが共同開発したD'z IMAGE Viewerでは、医療現場の負担軽減に重点を置き、操作の手順なども極力覚えることなく感覚的に使用できるよう設計されている。

たとえば、D'z IMAGE Viewerは、DZ-D100と無線LAN連携して、撮影後にケーブル接続やメディアを抜き差しする手間なく、PCに自動転送可能だ。撮影時には10桁までの半角数字で患者IDが設定でき、患者IDを入力して撮影した画像は、D'z IMAGE Viewerが自動的に患者IDごとに振り分けるため、面倒なフォルダ分けが不要になる。

D'z IMAGE Viewerが医療従事者に向けて作られていることがよく分かる機能の1つに、画像比較機能がある。これは同じ患者の撮影日の異なる病変の写真を比較するもの。病変がどのように変化したか一目瞭然となるので診断する上で大いに参考になる。

また、背中一面に存在するホクロに変化がないか調べるといった作業は、写真の記録がないとなかなかできないが、その写真も過去と現在で比較さえすればすぐに分かるというものでもない。D'z IMAGE Viewerには、複数画像を選択表示している時に片方の画像を拡大操作すると、自動的にもう一方も同じ倍率で拡大する機能が備わっている。新しいホクロができていないか比較して探しやすい。

  • 背中一面に存在するホクロに変化がないか調べる例

  • 片方の画像を拡大すると自動的にもう一方も同じ倍率で拡大される

接写で撮影した画像の上には、DZ-D100の液晶画面と同様にスケールが表示でき、病変の大きさが簡単に確認できる。2点間の距離を測るメジャー機能も備え、必要な部分の長径と短径を測って表示するといったことにも対応する。

このほか、いかにも医療向け機能として、他の医師への検討依頼や紹介状などに使える印刷機能も挙げられる。ダーモスコピー画像から一発でA4用紙サイズに、撮影日や部位、病名、所見などのデータを印刷できる。

研究論文用に使用する場合など、患者の個人情報が邪魔になることもある。D'z IMAGE Viewerでは、それらの情報を削除した上で画像を別名保存することも可能だ。

ヘルプも充実しており、画像データをzip形式でアーカイブしたり、指定のフォルダに保存したり、印刷したり、バックアップ/リストアしたりといったことがやりたい場合も操作手順をすぐに参照できる。

最後に古賀先生は「無料なのでぜひ触ってみて欲しい。その際は一度に何万枚ものデータを読み込んで試すのではなく、まずは消えても問題のない100枚程度の画像で練習すると良い。患者IDごとにフォルダ整理してからインポートするのがコツだ」と、初めて触るときの心得に触れて講演を結んだ。

医療関係者から高い注目を集めた展示コーナー

皮膚科学会総会では毎回協賛企業の展示コーナーが設けられるが、DZ-D100を出展したカシオブースでは、例年以上に多くの来場者で賑わいを見せた。

ブースには発売されたばかりのDZ-D100の実機が展示され、D'z IMAGE Viewerが動作するパソコンや、ダーモスコピー学習サイト「D'z IMAGE」を表示するディスプレイも置かれていた。

  • カシオブース

学会開催時にはまだ発売されていなかった、顕微鏡と装着するためのアダプター「DMS-100M」も展示されていた。こちらは先日発売されたばかりで、価格は税別79,800円。このアダプターは試作機に触れた医師からのリクエストで用意されたという。

  • 顕微鏡アダプター「DMS-100M」を装着して、顕微鏡と接続したところ

  • ダーモスコピー学習サイト「D'z IMAGE」の症例データベースのサンプル画面

  • 来場者が多くてコンパニオンも張り切る

DZ-D100の詳細については、カシオのD'z IMAGEのサイトやマイナビニュースのバックナンバーを参照してほしい。開発秘話なども掲載しており、興味深い情報が得られるはずだ。

診断能力をトレーニングできるダーモスコピー道場

恒例となった実技講座「ダーモスコピー道場」の様子にも触れておく。ダーモスコピー道場は、ダーモスコープ越しに病変を見たときの色やかたちの見方が学習できるプログラムで、参加者の実臨床における診断技術の向上を図る目的で実施している。

具体的にはランチョンセミナーにも登壇した外川先生と、古賀先生を座長に、ミニレクチャーが行われる。その後、参加者全員分が用意されているパソコンを利用し、ダーモスコピー画像を表示して、各自で診断トレーニングする。

学会認定専門医制度の前実績2単位、機構認定専門医制度(新制度)の前実績1単位が認められることもあり、当日の遅刻、途中退席、立ち見での見学は認められないが、100名の枠はすぐにいっぱいになり、参加者達は真剣な表情で学んでいた。

  • 毎回大勢の受講者が集まるダーモスコピー道場の様子

  • ダーモスコピー道場の問題のひとつ。選択式で所見を解答していく

  • 試験ではないので会場に控えるチューターの先生達に質問しながら学べる

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カシオのこれまで培ってきたカメラ技術の粋が集められたDZ-D100。医師たちの関心度合いは非常に高いことが展示ブースの盛況ぶりからも伝わってきた。とはいえ、今後も改良され続けていくはずのDZ-D100がどのように医療現場に関わってくるのか、目が離せない。

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