• 今回の「OCW-S5000」の3モデルの企画を担当した、佐藤貴康氏とともに各々の特徴を紹介していこう

●佐藤氏コメント
OCEANUSは今年、おかげさまで誕生15周年を迎えました。この節目に、シリーズの原点に帰って、フラッグシップモデルであるMantaのコンセプト、“スリム、エレガンス”を極めた商品を作りたいと思っていました。

OCW-S5000ではケース厚を劇的に薄くするため、構造を抜本的に見直し、数々の新しい技術を取り入れています。まずモジュールでは、電子リューズシステムの構成を見直して厚みを削っています。

  • OCW-S5000(左)とOCW-S4000(右)のケース厚の差

Bluetoothユニットも新しいものを採用して部品点数を減らし、S4000では、基盤の両側に付けていた部品を、片面に全て集約することで厚みを削りました。高密度実装技術と呼んでいます。
ほかにも、デイト表示の日車を樹脂製から高分子フィルムに変えたり、2次電池の受けを樹脂パーツから金属板にするなど、多くの部品の素材や構成を1/100mm単位で見直しています。もちろん、耐久性や品質をクリアするための試験も徹底的に行いました。

  • OCW-S5000(左)とOCW-S4000(右)のモジュール。OCW-S4000は基板の両面に部品を実装しているが、OCW-S5000では片面に高密度実装した

  • デイト表示の日車の薄さを比較。左が高分子フィルムを使ったOCW-S5000のもの

実寸を超えた薄さへ

前述のように、薄さと同時に流線型の優美なフォルムを追求してきたManta。OCW-S5000ではその美しさに関しても、革新的な発想が盛り込まれている。 その一例がケースデザインだ。従来のOCEANUSは長いラグが特徴的だった。しかし、OCW-S5000は、あえてラグを短めに抑え、エンドリンク(ケースとバンドを接続する駒)までをケースと一体化することで、バンドの可動域が広がり、手首によりフィットするようになった。

これにより、デュアルカーブサファイアガラスの末端から立体的なMantaバンドへと、自然で流麗な曲線を描き出しているのだ。

  • OCW-S5000(左)とOCW-S4000(右)のケースとベゼル。ラグ形状とともに、インデックスの取り付け方法も変更された

ケース厚9.5mmというのは、風防の頂点までの数値です。これをフラットガラスにすれば、もっと薄くできました。しかし、Mantaの美しさを表現するためにあえて、デュアルカーブガラスにしています。
実はこのカーブには“視覚的に薄く見せる”という効果もあります。フラットガラスだと、逆に厚く見えてしまうんです。デザインのマジックですね。

  • デュアルカーブサファイアガラスの曲線がベゼル、ケースへのラインが美しくつながる

デュアルカーブサファイアガラスは光の反射も美しい。これがMantaらしさ。厚いガラス材を両面から研磨していくので、製造は大変ですけれど(笑)。

他にも薄く見せる工夫が施してあります。実は、文字板が2枚構成になっているんです。インダイヤルとの段差を見ていただくとわかりやすいと思います。
立体感を出すと同時に、インデックスの層を底上げしたようなイメージで、針とガラスがぶつかりそうなくらい近く感じると思います。この構造には薄く見える視覚的効果があるんです。

  • 風防と文字板の距離を近くすることで、時計を薄く見せる。なおかつ、文字板を2重構造にするなど、立体感にも配慮

ケースとベゼル基部の結合方式も、従来のカシメからレーザー溶着に変更しました。かしめる部分の構造が不要になり、この分も薄くできる……と、随所に攻めた設計をしています。もはや今までのノウハウを超えた“新しい領域”に突入した感がありますね。