MathWorks主催の「MATLAB」「Simulink」のユーザーカンファレンス「MATLAB EXPO 2018 Japan」が10月30日に開催される。今年のテーマは「Are You Ready for AI, Is AI Ready for You?」だ。

AI(人工知能)というと、マーケティングシーンのなかでバズワードのように使われるケースが増えてきたが、ものづくりの現場ではリアルな取り組みの1つになっている。基調講演後のブレイクアウトセッションでは、A〜Gトラックに分かれた注目セッションが目白押しだ。本稿では、MathWorks Japanの宅島章夫氏に、各トラックの見どころを聞いたのでその内容を紹介する。

  • MATLAB EXPO 2018 Japan

    MATLAB EXPO 2018 Japan

午後からのブレイクアウトセッションでは、7つのテーマ、28セッションが開催

MathWorks Japanとして10回目となる今年のMATLAB EXPO。年々パワーアップしているが、今年の特徴の1つは、ユーザー事例講演が昨年にも増して増えたことだ。昨年でも、7セッションから15セッションと前年からほぼ倍増したが、今年はさらに3セッション増え、合計18セッションとなった。

「異常検知や予知保全、機械制御、自動運転などで、機械学習やディープラーニングの適用が進んできました。昨年以上に地に足のついた取り組みが実践されているという印象です。ただ一方で、これからAIに取り組もうという分野では、何からどうはじめていいかわからないというケースが少なくありません。そんななか、今年のMATLAB EXPOでは、AIを中心テーマに据え、参考になる事例を豊富にそろえることで、理解をさらに深められるようにしました」(宅島氏)

MathWorks Japan 宅島章夫氏

MathWorks Japan 宅島章夫氏

午後からのセッションは、(A) エンジニアリングデータアナリティクス、(B) ディープラーニング、(C) 生産技術、(D)自動運転、(E) モーター制御と電力制御、(F) ロボティクス、(G) アドバンストの7トラック28セッションだ。それぞれで事例講演が行われ、AIを多角的に把握できるしかけだ。

「テーマの3分の2は昨年と同じにすることで、昨年よりも取り組みが進んだことが感じられる構成としました。新たなテーマとして設定したのは生産技術とアドバンストの2つ。AからGまでの各トラックにはAI技術が散りばめるように配置されています。1つのテーマだけでなく、横断的に聴講いただいても、AIに関連した取り組みの展望が把握できるようになっています」(宅島氏)

では、具体的にそれぞれのトラックの見どころを紹介していこう。

  • 全18セッションにもおよぶユーザー事例講演

    全18セッションにもおよぶユーザー事例講演

大阪ガス、NTTデータ経営研究所が登壇「エンジニアリングデータアナリティクス」

(A)エンジニアリングデータアナリティクスでは、2つの事例講演が行われる。注目は、大阪ガスによる「A2 機械学習を1週間でビジネスに活用させる3つの方法 - 故障予知を事例に」と題する講演だ。AI実践のカベの1つが、現場への実装だ。データサイエンティストである講演者が、現場にどうAIを根付かせるかをわかりやすく解説する。

事例はこのほか、脳情報通信技術を扱ったNTTデータ経営研究所の講演「A1 脳情報通信技術の理論と実践〜未来を切り拓く多様で多次元な「人間」に関するアナリティクス」がある。こちらも要注目だ。

テクノロジー視点での注目セッションとしては、「A4 MATLABによる大規模フリートデータ解析」が挙げられる。自動車の車両走行データをどうモニタリングし、効率的に活用していくかについて、Hadoop/Sparkを組み合わせた例をはじめビッグデータ解析のソリューションとして提案する。

大林組、東京大学が画像解析の実践例を紹介する「ディープラーニング」

(B)ディープラーニングは、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)やRNN(再帰型ニューラルネットワーク)に代表されるAI技術の実践例を紹介するセッションだ。

注目講演の1つは、大林組による「B1 ディープラーニングを活用した山岳トンネルの岩盤評価」。同社では、山岳トンネル工事の切羽(掘削面)評価にディープラーニング(画像解析)を適用して、掘削後の空間を適切に確保できるようにしている。コストをおさえながら安全で短工期を実現したポイントが紹介される。

2つめは東京大学の水谷司氏による「B3 大規模計測と高度な数理的処理の組み合わせが実現するインフラメンテナンスの革新的近未来」だ。水谷氏の専門は、デジタル信号処理による計測信号の雑音低減や鉄道・道路橋の動的解析。講演では、老朽化で壊れやすくなった鉄橋や高速道路の道路橋を、画像認識を使って自動判別させるアプリケーションとその方法などが紹介される。

武蔵精密工業、デクセリアルズが検品自動化や工程検査技術を紹介する「生産技術」

(C)生産技術は今回から加わったトラックで、主に、生産技術にAIをどう適用するかにフォーカスする内容だ。生産製造現場にどうAIを活用するかは、いま非常に多くの問い合わせがあり、ニーズが急速に高まっている分野だという。典型的なケースが、外観検査で物品を仕分けしたり、不良品を取り除いたりする用途だ。

事例講演の1つめは、武蔵精密工業による「C1 人工知能の眼による検品自動化〜生産現場で価値を生むAIシステム」だ。武蔵精密工業は、愛知県豊橋市に本拠を置く自動車部品メーカーだ。目視検査を自動化し、それをシステムとして展開する取り組みを進めている。

もう1つは、デクセリアルズによる「C3 工程検査におけるディープラーニング活用による品質改善への取り組み」だ。デクセリアルズは、電子部品、接合材料、光学材料を製造販売するメーカーだ。工程検査のシステム化をデスクトップアプリケーションからサーバアプリケーションにまで展開している。

いずれの事例も、生産技術での一歩進んだ取り組みとして大いに参考になるはずだ。

本田技術研究所の事例や、新製品「Vehicle Dynamics Blockset」を紹介する「自動運転」

(D)自動運転は、クルマを中心に船舶やドローンなどの移動体の自動運転を総合的に扱うトラックだ。注目の事例講演は、本田技術研究所による「D2 ADSTを使用した合流・交差点シーンにおけるADの行動解析」だ。

ADSTは、MathWorksが昨年リリースしたツールボックス「Automated Driving System Toolbox」のこと。本田技術研究所ではこれを使って、自動運転車同士が合流する交差点で発生しうる問題をどのように解消するか、最適な車両の位置や速度はどういったものなのかなどをシミュレーションで導いた。講演ではその研究成果が紹介される。

また、Dトラックでは、MathWorksの新製品「Vehicle Dynamics Blockset」の紹介を行う「D4 Simulink+Unreal Engine連携によるADAS/自動運転シミュレーション環境」も要注目だ。ゲームエンジンUnreal Engineとの連携という点でも興味深い内容だ。

パナソニック アドバンストテクノロジー、富士電機、芝浦工業大学、近畿大学による「モーター制御と電力制御」

(E)モーター制御と電力制御は、すべてのセッションが事例講演となるトラックだ。まず、パナソニック アドバンストテクノロジーによる「E1 モーター制御開発のMBDトレーニングとバッテリー充放電コントローラの機能安全対応事例」では、モデルベースデザイン(MBD)のトレーニングや安全対応の事例が紹介される。

続く、富士電機のセッション「E2 電力システムのモデリング・解析環境構築と工場受変電システムの解析」では、電力システムを構成する発電機、モーター、蓄電池などの負荷をシミュレーションし、影響を調査した事例だ。

後半は大学による研究事例の紹介だ。まず、芝浦工業大学の藤田吾郎氏による「E3 スマートグリッドなどへの電力システム解析やおよび制御への適用事例」では、藤田氏が開発した電力系統機器を模擬する「モジュール型電力系統実習装置」などを紹介する。

続く、近畿大学の小坂学氏による「E4 センサレスドライブ活用におけるモーター制御理論の検証」では、制御工学、システム同定、センサレスドライブを専門とする小坂氏が、モーター制御の仕組みを解説する。

三菱重工業の燃料デブリ取出しロボットやトヨタ自動車のHSRを紹介する「ロボティクス」

(F)ロボティクスは、アームロボットなどの産業用ロボットから、ドローンなどの自律移動ロボット、作業ロボット、介護や家庭用ロボットまでを含むトラックだ。

注目事例としてはまず、三菱重工業による「F1 MBDを活用した福島第一原子力発電所燃料デブリ取出しロボットの設計開発」がある。同社では、福島第一原発の燃料デブリ取出しを行うアームロボットを開発する際に、モデルベースデザインを用いたシミュレーションにより、アームの先端を5mmという位置決め精度を実現。また、開発期間も3か月と予定の半分で済んだ。

2つめは、トヨタ自動車による「F3 トヨタが開発するロボットHSRによる生活支援アプリケーション」だ。トヨタでは、高齢者や障害者の家庭内での自立生活をアシストする生活支援ロボット(Human Support Robot: HSR)を2012年から開発している。それらの取り組みをMathWorks Japanとのジョイント講演として紹介する。

ブリヂストン、日立製作所、NECネットワーク・センサ、マツダが登壇する「アドバンスト」

(G)アドバンストは、AIの先進的な取り組みを実践している事例を紹介するトラックだ。4つすべてが事例講演となる。

ブリヂストンによる「G1 競技用自転車開発における挙動推定と1Dシミュレーションの活用」は、大規模な計測装置を使用することができない競技用自転車のフレームの開発事例だ。非線形カルマンフィルタを適用し、少数のセンサ情報から自転車の挙動を推定するノウハウなどを紹介する。

日立製作所の「G2 設計・開発プロセスIEC61508機能安全規格SIL4適合に向けた検証フローの構築」は、通信システム向けFPGA設計でより厳しい規格に対応した事例だ。MathWorksの「HDL Coder」「HDL Verifier」を組み合わせてツールチェーンを構築する方法などを紹介する。

NECネットワーク・センサによる「G3 無線モデムFPGA/SoC開発におけるHDL Coderの活用事例」は、HDL Coderの活用事例だ。同社は、NECグループで、航空・宇宙・防衛関連事業を担い、音波・電波・光を利用したリモートセンシング、通信など向け製品がどう開発されているかを紹介する。

最後は、マツダの「G4 非線形モデル予測制御(NMPC)活用拡大に向けた取組み」だ。マツダは「SKYACTIV TECHNOLOGY」エンジンの開発でMATLAB/Simulinkを使ったMBDを推進している。事例講演では、同社における非線形モデル予測制御の活用について紹介する。

このように、AIをテーマに今年もますますパワーアップして開催されるMATLAB EXPO 2018。豊富なユーザー事例は、自社のAI適用のカベをうち砕き、新しい実践のための大きな助けとなるはずだ。ぜひ参加して、AIの今とこれからを実感してほしい。

MATLAB EXPO 2018 Japan
グランドニッコー東京 台場 | 10月30日
MATLAB/Simulinkユーザー様による事例紹介やMathWorks社員による技術講演を通して革新的な最新技術をご紹介いたします。
http://www.matlabexpo.com/jp/

[PR]提供: MathWorks Japan