―― 今回、GST-B100Xで使用しているカーボン材料には、どのような特長があるのですか?

東レ ACM技術部 産業・スポーツ技術室 黒木基弘氏

黒木氏:「まず、カーボンファイバーの特徴としては、たとえば、同じ体積のステンレススチールと比較すると、重量は約1/4。それでいて、強度や剛性はずっと高い。この特性を利用して、飛行機やロケット、自転車のフレームやゴルフのシャフトなどに使用されています。今回のベゼルに使っているカーボンファイバーは、あのボーイング787に使用したものと同じなんですよ。ただ、今回組み合わせた樹脂は、その後に開発した高性能な耐衝撃NANOALLOYを用いたものです。この樹脂の硬さは、東レのスポーツ産業用途で使われる従来品種の樹脂と同じながら、靱性が180%向上しました。したがって、強い衝撃が加わっても壊れにくく、素材としてより進化したものとなっています」

―― 数あるカーボン素材の中でも非常に高品質、高性能ということですね。

田邉氏:「GST-B100Xのベゼルは、シート状のプリプレグをミルフィーユのように重ね合わせています。仕上げ前のベゼルがあるので見てください。こんなにきれいに層が見えるのは、東レさんの高い品質・品位と我々の高い加工技術の証明といえます」

カーボンファイバーの糸を巻いた状態

カーボンファイバーをクロス状に編み込んだTORAYCA

黒木氏:「そこをしっかりと見ていただいてご評価いただけるのは嬉しいですね」

田邉氏:「いや、この品質は本当にすごいですよ。ぜひ、その成型板を折り曲げてみてください。絶対に曲がったり折れたりしませんから」

カーボンファイバーの糸を一方向に引き揃えて樹脂を含侵させ、シート状にしたプリプレグ。これを張り重ねていく

耐衝撃NANOALLOYにより板状に成形された、CFRP成形板と呼ばれる素材。ここからベゼルパーツを切り出す

切り出された状態のベゼルパーツ

横から見ると層になっているのがわかる。色が一層ごとに違うのは、カーボンファイバーの向きが異なるため

―― (全力で折り曲げようとするも断念して)本ッ当に硬いですね。これだけ丈夫だと、加工も相当難しかったのでは?

カシオ計算機 時計事業部 外装開発部 田邉和幸氏

田邉氏:「かなり苦労しました。カーボンには、熱に強いという特性もあり、板をカットする際の摩擦熱でカッターの刃が擦り減ってしまうんですね。カッターの刃が1つダメになるまでに、ベゼルを数個しか削り出せないんです」

齊藤氏:「こういうすごい素材を使ってプロダクトを成功させて、『初めてG-SHOCKでカーボンをベゼルに使った』と、胸を張っていえるんだなと実感しましたね」

田邉氏が、カーボンベゼルの試作をテストするために組み立てたG-STEEL。なんと、コンビモデルのカーボンベゼル仕様!(製品としては未発売)