熱硬化性樹脂の流動や熱特性を解析:FLOW Resin

FLOW Resinは、熱硬化性樹脂の流動や熱特性を解析する機能を付加するモジュールである。熱硬化性樹脂は、強い接着性、構造強度、熱や化学的耐久性に優れた素材として、半導体装置や電子部品モジュール、モーターなどに使われる。そこで樹脂成形加工シミュレーションにより、半導体パッケージや電子部品モジュール、モーターへの樹脂含浸などの樹脂流動解析や、ゲル化後の収縮解析などを行う。また、汎用構造解析ソフトウェアを組み合わせることで、最終製品の強度解析も可能だ。

通常、こうした解析を行うには熱硬化樹脂ごとに異なる測定データを、FLOW-3D用のパラメータにフィッティングする必要がある。けれども丸湾氏によれば「FLOW Resinには自動フィッティング機能が備わっているため追加作業は発生しません」という。従って樹脂流動パターン、相変化、化学反応での反応率や、樹脂ひずみ率や弾性率などを容易にアウトプットできる。

解析結果を構造解析ソフトウェアに転送:F.SAI

F.SAIは、FLOW-3Dの解析結果を構造解析に転送するインターフェースである。FLOW-3Dによる流体圧力や流体温度、壁温度などの解析結果データを、構造解析の有限要素であるFEMメッシュに時間を指定して出力できる。その結果、流体‐構造連成解析が簡単にできるようになる。構造解析形式としては、NASTRAN、ABAQUS、Marc、Hyper Worksなどの代表的な構造解析フォーマットに対応する。

これを活用すれば、例えば電子部品でのハンダのリフローなども精緻に解析できる。

「リフローでハンダが溶けて、チップの電極にペレットを形成する際には、ハンダが固まっていく際の内部の熱応力が問題となります。この応力解析を行ったところ、ペレットの端の部分が引っ張られて応力が強く発生する傾向が明らかに見て取れました」(丸湾氏)

モジュール連携による3Dプリンティングへの応用

FLOW Weld、FLOW DEM、FLOW Resin、F.SAIの4つのモジュールを連携させて解析を行うことも可能である。ここでは、これらを利用し3Dプリンティングの解析を行った結果を紹介する。

解析は、次の3つのプロセスで行った。まずFLOW DEMを使ってベッド(粉末積層)解析を行い、次にFLOW Weldによるレーザー溶融解析、その後、F.SAIにより構造インターフェースから熱応力解析を行う。

ベッドの作成では直径20μmのニッケル合金を基準に粒径分布を与え、case1は20μmのみ、case2は10、15、20μmと細かな粒子を入れることで充填率を高め、case3は大きめの30μmの粒子を入れてベッドを作った。これらの充填率をFLOW DEMにより評価した結果、case1が69.7%、case2が70.2%、case3が67.3%となった。

次にFLOW DEMで得られた粒子配置に基づき、FLOW Weldにより粒子の溶融解析を行った。レーザーの照射条件は、出力200W、走査速度3m/s、スポット径100μmである。これにより溶融池が形成され、再凝固する様子を確認できる。粒子の充填率が高いcase2では溶融池が比較的真っ直ぐ伸びるが、充填率が低いcase3では蛇行する様子が見て取れる。

最後にF.SAIを使い、構造インターフェースから熱応力解析を行った。case2のデータを元に、各種構造解析ソフトウェアで熱応力解析を行ったところ、収縮による応力の発生と変位の様子を確認できた。

「粒径分布を変えると充填率が変わること、充填率の変化はビード形状に影響を与えること、その結果、溶接照射時にうねりなどの不具合の起きることが確認されました」と、モジュール連携の結果をまとめる丸湾氏。

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