IIoT(Industrial IoT)やIndustry 4.0など、製造業にも新しい波が訪れつつあるが、産業オートメーション業界では、まだフィールドバスを利用した接続やPLCなど、従来型の接続が残っているケースが多い。 旧態依然とした環境で働く設計者に向けて、Maximは2016年2月に新しいトランシーバファミリーを発表した。「絶縁型電源をレギュレートするLDOを集積化することによって、小型化されたソリューションとシステムコストの低減を提供します」というプレスリリースの内容には、技術力に裏づけされた強い自信を感じる。 本稿では、この新しいトランシーバファミリーについて、マキシム・ジャパンの担当者に伺った話を紹介する。

マキシム・ジャパン シニアFAE 田中秀樹氏

シリアル通信規格の違い

様々な機器の接続に、シリアル通信は現在も広く使われている。例えば、回路基板上の様々な周辺機器の接続には、I2CやI2Sより高速な用途にはSPIを利用するのが現在も主流だ。 より広い範囲で、機器同士の接続などで広く使われていたRS-232Cが未だに現役だが、信頼性や堅牢性が必要とされる産業用途には、RS-422AあるいはRS-485が主流になっている。 下の図表は、そうしたシリアル通信規格の主な特徴をまとめたものだが、より高速な転送速度や、1:NあるいはN:Nの通信が可能なことが大きな違いだとわかる。

信号がDifferentialであることが違いの要因。これにより速度も上げやすく、ノイズ耐性も高まる。

このRS-485やRS-422Aを利用するため機器に組み込む場合、どのような回路が必要だったのか? を説明するのが下の図表だ。

これはMaximのMAX253を利用した回路であり

●絶縁のために3つのフォトカプラ(PC410/417)を利用
●通信経路側(上の図表で中央の点線右側)の電源供給はトランス経由で、このためにMAX667を搭載する
●通信ドライバとしては別途MAX48xシリーズが必要

と、少々面倒なものだった。ここで絶縁が必要な理由は、特に工場では機器の故障で、通信経路に異常な電圧が掛かってしまう危険があるからだ。特に静電気の影響があると、高い電圧(数百~数千ボルト)が掛かる場合があり、きちんと絶縁して機器を保護する必要がある。

ワンチップで置き換える利点

今回Maximが提供する製品群は、従来は複数チップが必要だったトランシーバを、ワンチップで置き換えるものだ。

2枚目図表の3つのIC、フォトカプラをワンチップで代替可能

この新しいトランシーバの利点として、以下の3点が挙げられる。

●ワンチップ化によるBOMおよび実装コストの削減
トランスの電源、LDO、RS-485のトランシーバ、アイソレータを全てワンチップ化したことで、外部に必要な部品点数を最小限まで削減できる。部品コストも下がるし、実装面積も削減可能。
●LDO内蔵による安定した通信環境の実現
競合製品と異なり、RS-485トランシーバへの電源供給にLDOを介することで、「電圧が不安定」、「リップルが乗っている」場面でも安定した通信が可能。
●容量式のアイソレータを採用
図表2ではフォトカプラを採用しているが、今回の製品はこれを容量式アイソレータに置き換えている。

なお、最後の利点については、補足の説明が必要だろう。従来Maximは3種類(抵抗式、LED式、容量式)のアイソレータを提供してきた。※下図表参照

一般的にフォトカプラは、絶縁耐性が高く、通信速度も高速で、コストも比較的安価だ。それにも関わらず、今回発表された製品では容量式アイソレータを採用した理由は寿命にあるそうだ。 フォトカプラは10年程度の寿命で、それを超えて利用すると、どうしてもLEDの寿命が限界になる。一方、このトランシーバを利用するPLCなどの機器は、もっと長期間利用することを想定されている。 そのため、フォトカプラの消耗が機器の寿命を決める問題点があった。

マキシム・ジャパン プリンシパルFAE 向笠哲生氏

勿論、容量式にも欠点はある。特に、それなりの大きさを取ること、温度変化に影響を受けやすいことだ。幸い、今回の製品は最大2500~5000Vという比較的大きな絶縁耐性をもち、機器側もトランシーバの両側を10mm以上離す必要がある(そうしないとそこでショートする)関係で、容量式アイソレータでも十分だそうだ。 また温度に関しては、様々なテクノロジを利用することで、後述する広い動作温度範囲を実現でき、実用上の問題は無いそうだ。なお次の図表が、今回発表になったトランシーバの製品一覧だ。

MAX14946/49は「動作温度範囲は85℃までだが、その分安く」というニーズに応えて開発された

MAX14940/14943/14946/14949がHalf Duplex、MAX14853/14855/14857/14859がFull Duplexである。まずHalf DuplexのMAX149xxのスペックが以下になる。

Half-Duplexで、トランシーバから出る信号線が1対2本になる

2.75kVと5kV(60秒のRMS)の絶縁耐圧のほか、35kVのESD耐圧をもち、寿命は定格電圧で30年以上を保障しているが、これは容量式アイソレータの採用で可能になったスペックだ。一方Full DuplexのMAX148xxのスペックが次の図表だ。

Full-Duplexで、トランシーバから2対4本の信号線が出ている

絶縁耐性やESD耐性などのスペックは同じであるが、スピードがHalf-Duplex より20Mbps→25Mbpsと若干上がっている。これは顧客ニーズが特に強かったそうだ。

Maximの姿勢を示すラインアップ

冒頭のIIoTの話ではないが、以前に比べるとPLCに対する要望が上がっており、多くのデータを扱うための高速化、より過酷な環境でも利用できるための絶縁耐性の高さが求められている。 単に新しいPLCに採用するだけではなく、旧来のPLCのトランシーバの置き換えといった用途もあるそうだ。MAX14946/14949以外は最大105℃までの動作温度範囲をサポートするのも、85℃を超える範囲のニーズの高まりへの回答だ。 こうしたRS-422/485のトランシーバの需要は根強く、現在も国内だけで月間数万個が出荷されているそうだ。

ちなみにMaximは今回の8製品以外にも、仕様を若干変更したラインアップを用意しており、これらは順次リリース予定となっている。

今後予定されている製品を含んだラインアップ。基本的な構成は変わらない。

「"様々な用途に向けて引き続き信頼性の高い製品を供給してゆく"、というMaximの姿勢を示すのが今回のラインアップです」と取材した担当者は話を締めくくった。

(マイナビニュース広告企画:提供 マキシム・ジャパン)

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