2012年、初のリテールSSD「Samsung SSD 830」を国内リリースしたサムスン。記念すべきこの年から2015年現在に至るまで、同社は新たな技術を駆使してSSD市場をけん引する製品をリリースし続けている。もともと法人向けのNANDフラッシュにおいては圧倒的なシェアを保有していた同社だが、2014年のBCNランキングにおいてSSD年間売れ行き1位を達成するなど、近年はリテール市場でも確かな地位を築いている。2015年もその強い存在感は変わらず、先日は新製品「NVMe SSD 950 PRO」も発表された。本稿ではサムスンの誇るブランド「Samsung SSD」の進化について、当時の記事を振り返りつつ、その変遷とともに解説していきたい。

2012年:初のリテール製品「Samsung SSD 830」シリーズをリテール市場へ投入

2012年:TLCでも高信頼性を実現しコストと性能を両立した「Samsung SSD 840」ファミリーを展開

2013年:TLCでありながら840PROと同性能をもたらした「Samsung SSD 840 EVO」登場

2013年:mSATA版「EVO」も展開開始

振り返る2012年~4月:「Samsung SSD 830」リテール市場への参入と、そのインパクト~

国内におけるSansung SSDの歴史は2012年に始まる。2011年11月、海外では日本に先んじて「Samsung SSD 830」ファミリーが発表された。当時は秋葉原などで並行輸入品として販売されている程度であったが、自作ユーザーを中心にその性能の高さが徐々に話題となった。そして翌2012年4月に、ついに国内正規品の販売がスタート。日本にいながら正式な3年保証やサポートが受けられるこの正規パッケージの登場により、製品の入手性は大きく改善した。国内でも広くそのパフォーマンスが知られることとなり、2012年6月中旬にはBCNランキングで売れ行き2位を記録した。

「Samsung SSD 830」

このSamsung SSD 830(以下、SSD 830)の特徴は、Samsungが独自に開発した「MCX」コントローラだ。当時のSSDコントローラはデュアルコア構成が多く、ホストインタフェースおよびSATA2をサポートする部分と、NANDフラッシュにアクセスする部分にコアが割り当てられていた。それに対しMCXコントローラは、ARM 9(220MHz)ベースのトリプルコアを採用。NANDフラッシュへのランダムアクセスとシーケンシャルアクセスにそれぞれコアを割り当てることにより、ランダムアクセス速度を向上させることに成功していたのだ。

2012年初頭といえば当時はまだSSDのコントローラもそれほど種類がなく、MarvellやSandForceコントローラ採用製品が多くを占めていた時期。IntelはちょうどSandForce製コントローラを採用したモデルをリリースしたころ。また東芝のHG5d採用製品も登場前というタイミングだ。他社に先駆けて開発された先進的なコントローラにより、SSD 830は一躍フラッシュストレージ市場において重要な位置を占めることになる。

またNANDフラッシュ、コントローラ、そしてキャッシュ用DRAMという、SSDを構成する部品すべてを自社で設計/開発/生産している点もSamsungの強みである。自社で生産しているNANDフラッシュの特性に合わせてコントローラをチューニングできるため、当時から長期間使用時にも速度が落ちにくい特性を有しており、また、多くのデータを書き込んだ際の速度低下を抑えることにも成功している。

さらに、SSD本体のみのベーシックキットの他に、ノートPC用キットやデスクトップPC用キットという換装を前提としたパッケージを用意したのもユニークな点だ。データの移行やハードウェアの交換に慣れた自作PCユーザーだけでなく、メーカー製のデスクトップPCやノートPCを使用しているユーザーもサポートしたことは、SSDという新しいストレージがより多くの人に知られるきっかけとなったはずだ。

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