過酷な環境でのレスポンスは?

事務所のネットワーク(ギガビットイーサ)にも、2TBのNASがつながっていてファイルサーバーとして活用している。仕事柄、制作中のファイルの受け渡しや、共有ファイルでの作業などが多いので、ファイルサーバーなくして業務の効率化は図れないというほど、使用頻度は高い。RAID0で稼働させているので、もちろんスペックは平々凡々。だが、ないと困るし壊れても困るので、現状ではこれで満足している。ちなみに、うちのNASのベンチマークがこちらになる。

ネットワーク内のHDD(RAID0)のNASベンチ

SV220SWシリーズの場合、フロントのストレージベイのすべてにHDDが格納される。SSDは本体に内蔵されているので一瞬わかりづらいが、Windows Server 2012で初めて実装された「記憶域階層」が採用されている。これはSSDとHDDがそれぞれ階層で分かれており、アクセス頻度の高いデータをSSD、それほど高くないデータはHDDという具合に振り分けられながら各種データが扱える優れものだ。また、記憶域階層の上位には物理ディスクをプール化した「記憶域プール」があるが、そこにSSDが搭載されていれば、一部領域をランダム書き込みのバッファとして活用する「ライトバックキャッシュ」も実装されている。データはいったんSSDに書き込まれたあとにHDDへ再度書き込まれるので、SSDのメリットを最大限に活かしつつ、HDDを運用できることになる。記憶域階層もライトバックキャッシュも、それぞれ単独、両方同時のどちらでも使えるが、管理者があらかじめ設定する必要があるので注意が必要。いずれにしても、こうした新機能を使うことで、これまで以上に高速アクセスのストレージ環境を柔軟に構築できるのは、本機を扱ううえで最大のメリットだといえるだろう。ちなみにこの機能は、一定期間運用して学習が進むことで性能を発揮するため、今回の試用機ではオフにして性能を計測した。

本体のシャドーベイにSSDが固定される。2基によるRAID構成の場合は、もう片側の同位置も使われる

ホットスワップ対応のフロントベイには最大で4台のHDDが格納できる

同じネットワークにつなげたSV220SWシリーズをファイルサーバーに設定し、スタッフ全員が使える共有フォルダを作成。このフォルダをいつも通り使ってみようということになった。通常の状態でベンチマークを取った結果がこちらになる。

HDDボリュームベンチ(RAID1)

SSDボリュームベンチ(RAID0)

ネットワーク共有の汎用SSDボリュームベンチ(単一ドライブ)

数値的には、ネットワークを経由しても、その速さを十分体感できるだけのアクセス速度を出してくれる。ちなみに、「ネットワーク共有の汎用SSDボリュームベンチ」は、ネットワーク共有されているほかのPCに内蔵されているSSDの共有フォルダに対して、ベンチマークを実行してみた結果。もちろん、データセンター用だからといって、シーケンシャル リード&ライトがずば抜けて速いわけではない。どちらかというと、512Kや4Kなどランダムアクセスにおいて好成績を出していることがおわかりいただけると思う。

従来より個人的に利用していた「ネットワーク内のHDD(RAID0)」のNASベンチの数値と比較すると、シーケンシャルリードにおいて25%近く、ライトにおいては3倍近くアクセススピードが向上しており、速度差は体感できるレベルにある。筆者のマシンもストレージには古いタイプのSSDを使っていることもあって、NAS利用時にはかなりのタイムラグを感じていたが、SV220SWシリーズの場合、HDD、SSDどちらもサクサク動いてくれる。今回のベンチマーク結果にも、それが現れている。

ファイルサーバーの活用シーンとして、大きなファイルにアクセスしている最中にほかのファイルを操作することなどが考えられる。例えば、映像、画像データを扱いながらExcelファイルなどにアクセスした場合には、ストレージのパフォーマンスが業務に影響することもある。そうした状況を再現するため、スタッフ3名で同時にそれぞれ200、300MB程度のファイルをローカルとNAS間で移動する作業をしてもらい、そのパフォーマンスをベンチマークしてみた。

アクセス負荷テスト SSDボリューム

アクセス負荷テスト HDDボリューム

当初の単一クライアントからのベンチマーク結果に比べ、数パーセント単位で速度が落ちているが、ネットワーク帯域への負荷なども加味すれば、気になるレベルではない。何より、512Kや4Kなどランダムアクセス時のパフォーマンスは相変わらず好成績である。搭載されている「Samsung 845DC EVO」の特徴である、「低レイテンシーで一貫したパフォーマンスを実現」という言葉をまさしく体現した結果といえるだろう。ここでは小規模オフィスでのNASという状況だが、データセンターではピーク時に数千人単位で読み書きが行われる。その影響を軽減してくれる「Samsung 845DC EVO」ならではの結果だ。

ちなみに「Samsung 845DC EVO」の場合、一般的なメインストリーム向けSSDに比べ、ECCエンジンが強化されている。また、万一、停電や突発的な電源遮断などが起きても、強力にデータを保護してくれる、パワーロスプロテクションも搭載している。見えにくいが、こうした安全設計にこそ、"データセンター用"と名乗るにふさわしい価値があるといえるだろう。