第3回「キーの下にある「打ちやすさ」の秘密」はこちら

前回から引き続き、ThinkPadのキーボードにフォーカスして話しを進めよう。今回紹介したいのは"伝統"の7列キーボードとトラックポイントだ。犠牲になりがちなHomeやEndなどの配置をはじめ、随所に使いやすさを追求した工夫が施されている。なお、以降の内容はすべてのThinkPadに共通するよう進めているが、機材としてはThinkPad X300をメインに紹介している。

ThinkPadの魅力に迫る

7列キーとトラックポイントによる操作性

まずは「7列キーボード」から紹介していこう。一般論だが、ノートブックパソコンは本体サイズの制約からキーボードの一部を「Fn」キーと組み合わせて使う場合が多い。特にモバイルノートではこれが顕著で、真っ先に犠牲となるのがHomeやEnd、PageUpやPageDownなどのカーソル操作系のキーだ。もちろん、こういったキーは一般的な使い方からすれば使用頻度が低いからだが、ThinkPadの7列キーボードでは、こうしたFnキーとの組み合わせを最小限に抑えている。

ThinkPadは7列キーボード配列(ただしSLシリーズは6列)。Fnキーとの組み合わせを示す青い記号をチェックしてほしい。もちろんThinkPadでもこういった組み合わせが用意されてはいるが、そのほとんどはハードウェア制御のためのものだ

手元にあれば、ぜひ比べてみて欲しい。一般的なモバイルノートでは、多くの場合キーボードは6列であるはずだ。ところで、ThinkPadの7列キーボードとはいっても、いちおう一部が7列であって、F2キー~F9キーまでは6列となっている。左手上側はESCキー、右手上側は6つのキーを7列目に配置している。とくに右手上側の6列目、7列目となる6つのキーに注目していただきたい。ここは多くのノートブックでFnキー併用となっているキーたちだ。筆者のようにエディタ操作がPCの使用目的の過半数を占めていると、HomeやEndはかなり多用する。一時期はFnキー併用のノートブックも使っていたが、やはりキー1つでカーソル操作できる方が便利と感じるのだ。

よくFnキーと併用となるHomeやEnd、PgUp、PgDnが、ThinkPadでは独立キー。これらのキーの使用頻度が高い場合、もちろん独立していた方が快適に操作できるわけだ。ちなみに筆者はデスクトップには「ThinkPad USBトラベルキーボード ウルトラナビ付」を用いており、モバイルとデスクトップでキー配列、操作感を統一している。これもThinkPadシリーズならではのことと言えるだろう

そして、もうひとつの伝統である赤いポッチ「トラックポイント」。要はポインティングスティックなのだが、ThinkPadではトラックポイントと呼び、まさに「顔」な機能である。ポインティングスティックは傾きによってカーソルを操作する。力を加え続ければその方向に移動するし、力の加減でもカーソルの速度は変わる。そんなデバイスだ。

ポインティングスティックの特徴として挙げられるのはまずポジション。「G」と「H」、「B」に囲まれた位置にそれは配置されている。手はホームポジションのままとして、ポインティングスティックは多くの場合人差し指で操作するが、一方でスペースキー下にあるタッチパッドは(個人差もあるが)親指で操作するのではないだろうか。そこでホームポジションに手を置いた状態からそれぞれの場所でそれぞれの指を上下左右に真っ直ぐ移動させてみて欲しい。人差し指は意外と素直に移動ができるのに対し、親指は左右は指先だけで動かせても上下は大きく関節を動かさなければならないだろう。

トラックポイントは、傾きでカーソルを操作できるデバイスだ。ホームポジションを維持したままでも容易にアクセスできる。ThinkPadでは、トラックポイントとクリックボタンの組み合わせでその機能を最大限に引き出しているのだ

ポインティングスティック自体は古くから、そして多くのメーカーが採用していた。ただしThinkPadの場合、一貫して搭載している点と、さらに機能を盛り込んだところがひと味違う。マウスのクリックボタンに相当するスペースバー下のボタンだが、ThinkPadは左右と中央の3つ。この中央ボタンとトラックポイントを組み合わせることで、スクロール機能を実現したり、これをズーム機能に割り当てることも可能なのだ。筆者お気に入りはスクロール機能。力を加減すればスクロールし続けることもできるため、縦長サイトの閲覧も快適だ。

トラックポイントと中央ボタンの組み合わせでスクロール機能を実現。WEBサイト閲覧時には最強である

ほかにもトラックポイントと中央ボタンの組み合わせをズーム機能に割り当てることも可能。トラックポイントでズームしたい位置にズーム枠を移動できる点はプレゼンなどで使える(ズーム枠のサイズや拡大率も指定できる)

ただし、ポインティングスティックは、ディスプレイを閉じた際に跡が付くことがある……という部分で賛否が分かれるところでもある。跡が付くといっても、実のところ指先の脂などがパネル面に付着するわけで、よほどのことが起こらない限り傷として付くことは無い。しかし気になることは事実であって、筆者はこれの解決にまずディスプレイ保護シートを貼る、次にクロスを挟むという2段構えで対処している。

ThinkPad X300およびA4サイズモデルではトラックポイントにタッチパッドも搭載。2つのポインティングデバイスを持つことでさらに操作性が高まる

最後にタッチパッドの機能についても紹介しておこう。ThinkPad X300やA4サイズモデルにはタッチパッドが搭載されている。普通にタッチパッドとして使えるのはもちろん、工夫次第でさらに使い道が広がる。例えば、トラックポイントとタッチパッドとで別々のカーソル速度を設定することで、より細かなカーソル操作が可能になったりするのだ。カーソル操作にはトラックポイントしか使わない、という際には「タップゾーン」としてウィンドウ操作やアプリケーションランチャにも活用できる。

タッチパッドは、カーソル操作、スローモーション、スクロール+タップゾーンという3つの使い方ができる

タップゾーンは、四隅にそれぞれ機能を割り当てタップ操作で実行

今回はちょっと筆者の好みが前面に出てしまったところがあるが、キーボードやポインティングデバイスに関してはやはり人それぞれ。ただ、ThinkPadの"こだわり"はわかっていただけたと思う。昨今、パソコンにおける「コスト」が重要視されるなか、あまりキーボードへのこだわりを聞く機会も少なくなってきた。ノートブックの「薄さ」の追求過程で、便利だったトラックボールなども消滅し、最近ではもっぱらタッチパッドが主流を占めている。こうした流れのなか、ThinkPadが誕生以来16年以上にもわたって一貫してキーボードにこだわり、トラックポイントを採用し続けてくれることは、なんとも貴重なことなのである。

なお、ThinkPad は今月 2008年度 グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した。これは一般ユーザーからの推薦によって決定されたもので、今回紹介したようなThinkPadの「変わらないこだわり」が多くのユーザーに評価され続けていることを証明するものといえるだろう。

(マイコミジャーナル広告企画)

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