ネットバンクの先駆者が掲げる「フェア」- ソニー銀行

【連載】

ミッションステートメント ~企業が込めた想い~

【第16回】ネットバンクの先駆者が掲げる「フェア」- ソニー銀行

[2020/03/02 08:00]周藤瞳美 ブックマーク ブックマーク

個人の資産運用を目的とした金融商品やサービスを提供するインターネット銀行として2001年に開業したソニー銀行。外貨預金における為替手数料の安さは業界随一で、市場と連動した金利と為替レートを常時提示していることも特徴だ。また、開業当初は窓口での申込みが常識だった住宅ローンを、オンライン上でのやり取りのみで実行できるようにし、借り入れ後に金利タイプを変更することなども可能とした。

こうしたソニー銀行のサービスには、「フェアである」という企業理念が反映されている。金融商品・サービスと顧客とが対等となるような、透明性の高いビジネスを手掛けていくという意識がその根底にある。

同社代表取締役社長 住本雄一郎氏は、こうした理念を大切にしながら「創業時のソニーのような文化を引き継いでいきたい」と語る。「フェアである」をはじめとする言葉に込められた思いや今後のビジョンについて聞いた。

ソニー銀行 代表取締役社長 住本雄一郎氏

ソニー生命、ソニー銀行へと、古き良きソニーのカルチャーを受け継ぐ

ソニー銀行は、インターネット銀行がまだ一般的な存在ではなかった2001年に設立。インターネットを活用することで、その時代の流れに合わせた新しい銀行をつくるというコンセプトで、主に個人のための資産運用銀行として商品やサービスを追求していく方針をとった。個人向けにこれまでにない新しい商品をつくるという点では、創業時のソニーのスピリットが生きているともいえる。

そして、2016年。ソニー生命保険(以下、ソニー生命)で30年のキャリアを積んできた住本氏が、ソニー銀行の代表取締役社長に就任した。住本氏は、親会社であるソニーの管理部門からキャリアをスタートさせた後、ソニー生命へ入社。営業企画・管理などの業務に携わってきた。

住本氏によると、ソニー生命には、ソニー以上に古き良きソニーの文化が受け継がれているような雰囲気があったという。

「盛田昭夫氏、井深大氏が創設した当時のソニーはこんな感じだったのでは? と思えるような雰囲気がソニー生命にはありました。自分たちが保険業界を変えていくんだ、とか、新しい価値を届けるんだ、といった考えを皆が同じように持って活動していました。ソニーグループに金融機関を持ちたいという盛田氏の思いを大切にして歴代の社長が運営してきたことは大きかったと思います」(住本氏)

ソニー生命は、顧客の人生設計やニーズに沿ったプランを提供するということを大切にし続けてきた会社だ。今でこそそうした商品は一般的になりつつあるが、当時の保険業界の常識では考えられなかったことだ。

住本氏は、「当初、個人の人生設計にまで踏み込んで提案するというやり方は、お客さまからなかなか受け入れてもらえなかったと聞いています。しかし、粘り強く続けていくなかで、次第に理解していただけるようになりました。今思えば、自分たちが大切にしていることを信じてやり続ける、ということが重要だったのだと感じています」と、ソニー生命のカルチャーについて振り返る。

そして、こうしたカルチャーの根底にある部分は、ソニー銀行にもつながっている。

提供側と顧客とが「フェア」であるために

<企業理念>
- フェアである
- 日本経済の新たな成長に貢献する
- 資産運用ツールを提供する
- IT技術を最大限活用する
- 一人ひとりのお客さまのためのサービスを提供する
- より有利な商品、よりよいサービスを提供する
- インターネット・サービスのためのインフラを整備する
- 自由豁達で愉快な業務環境を整備する

<コーポレートスローガン>
「できる,ひろがる.ソニー銀行」

企業理念にはいくつかの言葉が掲げられているが、最も重要視されているのが「フェアである」こと。情報の非対称性が強かった従来の個人向け金融サービスのあり方を変えたいという、ソニー銀行の創業社長である石井茂氏(現、ソニーフィナンシャルホールディングス 代表取締役社長)の思いが強く反映されたものだ。

「それまでの個人向け金融サービスや商品は、金融について詳しい人が詳しくない人に対して紹介するという構図になっており、多少わからないことがあってもお客様は銀行の言うことを信用するしかないという状況が生まれてしまっていました。しかし、ソニー銀行としては、商品・サービスを提供する側としてもフェアな立場で、情報の非対称性をできるかぎり低減し、わかりやすく、透明性の高いビジネスをやっていこうと考えたのです」(住本氏)

本稿の冒頭で紹介した外貨預金や住宅ローン関連のサービスは、この理念を如実に体現したものであることがわかるだろう。

また、ソニー銀行では、企業理念のほかに、「できる,ひろがる.ソニー銀行」というコーポレートスローガンも定めている。こちらはどちらかというと、社員へ向けたメッセージという意味合いが強い。

住本氏は、「インターネット銀行としてスタートしましたが、そこに留まっているだけでは競合に追いつかれてしまいます。サービスの幅や今までの発想をさらに広げていくことで、お客様がよりいろんなことができるようになる状態を目指していこうという思いを込めています」と説明する。

「できる,ひろがる.」を体現したサービスの最たる例は、2016年にリリースされた11通貨対応のVisaデビット付きキャッシュカード「Sony Bank WALLET」だろう。

Sony Bank WALLET では、海外での支払いの際にも対象の10通貨であれば外貨預金口座から直接外貨が引き落とされるため、無駄な手数料が掛からない。また、外貨をクレジットカードで利用する場合、決済レートが請求時に確定されるため、実際に引き落とされる金額がわかりづらいという問題があるが、Sony Bank WALLET であれば、決済時のレートで金額が確定されるため、支払い時の不明瞭感が解消されるといったメリットもある。

Sony Bank WALLET の狙いは、外貨預金を身近に使える存在として顧客に提供していくこと。為替手数料の安さや、市場と連動した金利と為替レートが特徴の外貨預金のサービスをより拡張し、顧客の利便性を高めたものであるといえる。

またこうしたサービスを提供するにあたっては、社内で下記のような価値観が共有されているという。

<共有する価値観>
- 質を捨ててまで、量を追わない。
- 理念第一、利益第二。ただし、価値を生まない理念は意味はない。
- 短期的な利益のみを追求しない。
- 迷ったら、顧客に聴く。
- ネットだけに止まらない。自前主義に拘らない。
- 常に顧客の豊かな人生を考える。

これらの言葉は、「価値観は、『こうやろう』と決めることではなく、『これだけはやめよう』と決めることだ」という星野リゾート代表 星野佳路氏の講演を住本氏が聞き、感銘を受けて考えたものだという。たしかに、「〜ない」という否定形の表現が多く使われているのがわかる。

「ためる」「ふやす」「つかう」を最適に提案できるインターネット銀行へ

住本氏は就任後、企業理念をより深く掘り下げて理解するため、若手社員と議論する機会を設けたという。そこから出てきた言葉は、「自分らしく生きようとするお客さまのために、『ためる』『ふやす』『つかう』を最新のテクノロジーで、最適な提案をする銀行になる」というものだった。

「多くの金融機関がこれまで重要視してきたのは『ためる、ふやす』部分でした。でも、『ためる、ふやす』には『つかう』という目的があるはずです。何のために貯めるのか、何のために殖やすのか、というところは何となく、ぼんやりしていることが多いと思うんです。本来は、『これに使いたいから、これだけ貯める/殖やす』という発想であるべきだと思います。

最近では『老後資金として2000万円が必要』という話題もありましたが、いったいそのお金を何のために使うのかということについては、お客さまとしても漠然としていてわからない部分が大きいと思います。そこで私たちは、実際にはいくら必要なのか? どうやって殖やすのか? 貯めるのか? ということを最新のテクノロジーで提案できるような銀行になっていきたいよね、という話をしました」(住本氏)

そうした具体的な提案をインターネット上のみで個々人に合わせた形で行うことは、現状では難しい。そこで2017年には、住宅ローンの相談や資産運用コンサルティングを対面で提供する「CONSULTING PLAZA」を銀座に開設。インターネットとリアルを融合する取り組みも進めている。

一方で、「IT技術を最大限活用する」と企業理念にもあるように、顧客が資産運用について考え、実際の行動に移すところまでをインターネットだけでサポートできるような体制も整えていきたいという。

インターネット銀行という枠組みを超え、可能性を広げていくために、これからも挑戦を続けるソニー銀行。今後も、私たちの資産運用がより便利になるようなサービスが登場してくることを期待したい。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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