もはやブームになっているとも言える「働き方改革」。世の中には、さまざまな企業の事例が溢れており、何を参考にしたらよいのか迷ってしまっているという企業も多いだろう。創業101年目を迎えたパナソニックも例外ではなく、試行錯誤しながら改革を進めている。

伝統的な日本企業であるパナソニックは、どのように会社の風土を変え、変革をドライブしているのか。11月27日に開催された「マイナビニュースフォーラム2019 Autumn for 働き方改革」にて、パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 CDO/CIO 榊原洋氏が「100年企業 パナソニックが挑む! 会社風土から変える『働き方改革』」と題して講演した。

先進的な企業の取り組みをコピペするだけでは上手くいかない

榊原氏は、パナソニックのなかでもB2B事業を手掛けるコネクティッドソリューションズ社(以下、CNS社)のCDOおよびCIOとしてIT・デジタル戦略を担当しているほか、社内の働き方改革(CNS社では「カルチャーやマインド変革」と呼んでいる)の陣頭指揮も取っている。CIOがCDOを兼ねる組織は珍しいが、それに加えて、さらに働き方改革までを求められるのは少し意外な印象を受ける。

これについて榊原氏は、「カルチャー&マインド改革を推進するために、ICTの進化は必須要素。そして、デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進のためには、カルチャー&マインドの変革は必須要素。そして、DXが進化すると、さらにICTに対する要求レベルが上がる。ITとDX、そしてカルチャー&マインド改革の取り組みは三位一体。密接につながっていると考えている」と説明する。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 CDO/CIO 榊原洋氏

こうした榊原氏の立場から見ると、日本の「働き方改革」は欧米と比べて独特なのだという。例えば、米国西海岸のスタートアップ企業などでよく見られる無料の食事提供や卓球台の設置、おしゃれなオフィス空間やキックスクーターでの社内移動……といった文化/ルールをそのまま日本企業でまねするのは、少し無理があると感じてしまう人も多いだろう。それは当然だ。米国のスタートアップと日本企業ではビジネスの構造が大きく異なる。

米国西海岸のテックジャイアントやスタートアップに代表される先進的企業は、プラットフォーマーとしてスピード感のあるビジネスを展開し、既存のものを根底から変える破壊的イノベーションを起こそうという気概を持っている。その目的達成のために、働き方やオフィス環境を最適化しているのだ。

一方で、日本的で伝統的な企業の強みとなるのは、組織力、カイゼン、匠の技、高品質……といったところにあり、これらの特徴は、グローバル企業のそれとは別の性質のものである。海外の先進企業が行なっている取り組みをそっくりまねしても、上手くいくはずがない。

「日本企業の古い体質を変えるのは良いことですが、海外の先進的な企業の取り組みをコピペして効果が出ない、どうしたらよいかわからないという『働き方改革疲れ』が発生しているように思えます」(榊原氏)

そこで榊原氏が提案するのは、米国の先進的企業のまねでも伝統的な日本企業のやり方の追求でもない、”第三の道”だ。「先進的企業と伝統的な日本企業の事例を組み合わせて、なんとなく第三の道を進んでいる企業もあるが、そこには思想がないために上手くいかないケースは多い。先進的企業と日本企業の良さをいかに取り入れて第三の道を切り開いていくかを考えなければならない」と説く。