なぜ日本企業のデジタル化は遅れ始めているのか? - CIOが描くべきIT戦略

[2018/11/27 09:00]冨永裕子 ブックマーク ブックマーク

ソリューション

IT戦略における先進企業と日本企業の”差”

世界レベルのIT予算の増額を確保し、デジタルがビジネスに及ぼす影響も正しく理解しているのに、なぜ遅れていくのか。松本氏は全世界の回答企業を「先進企業」「平均的な企業」「遅れた企業」の3つに分類し、主に先進企業との比較から得た日本企業に関するインサイトについて、「成果」「エンゲージメント」「ケイパビリティ」「注力点」の順で紹介した。

グローバル企業と比べた日本企業の特徴/出典:ガートナー(2018年11月)

成果:日本のCIOの40%がビジネスモデル変革に直面している

日本企業もビジネスモデルの変革に取り組んでいる。しかし、デジタル化の成熟度が「拡大中」「成果刈り取り中/洗練中」のステージにある企業が日本は22%なのに対し、全世界は33%であった。実は昨年の同調査における日本と世界の差は3%であったが、今年は11%に引き離されたのだという。

松本氏は「ここで10%以上差が開くと、来年はもっと取り返しのつかない差になるのかもしれないという心配がある」と説明する。「CIOがビジネスモデル変革をリードする機会があるか」という質問に対し、日本企業が60%なのに対し、先進企業は77%である。「CIOのリーダーシップは悪くないが、もう少し頑張る必要がある」というのが松本氏の見立てだ。

エンゲージメント:78%の日本企業が自社アプリのユーザー数をKPIにしていない

デジタル投資を測定するKPIを日本企業と先進企業で比べると、気になるのが「デジタルROIは測定しない」とする日本企業が25%いるのに対し、先進企業は11%に過ぎないことだ。さらに、先進企業と日本企業がKPIとする項目でギャップが大きいものは「アプリを常用する消費者の数」「消費者エクスペリエンスに及ぼす影響」であり、「全体的に日本企業はデジタル投資の結果をどう計測するかについての関心が薄い」と松本氏は評した。

消費者体験向上に向けた施策の数を比較した場合でも、先進企業が平均4.3件であるのに対し、日本企業は遅れた企業と同等の2.2件であるという。消費者の体験向上が遅れており、社内外のニーズにも日本企業は対応できていない。

施策を実施するにあたってはサイバーセキュリティリスクへの対応も求められる。だが、日本企業はこの部分でも遅れを取っている。リスク軽減施策の重点項目を尋ねた結果を先進企業と比べると、「デジタルビジネスインフラストラクチャと運用」「アプリケーション開発/DevOps」が日本企業は極端に低い。代わりに「人材採用とトレーニング」「運用技術とOT」で対応しようとしている。松本氏「悪くない結果に見えるが、セキュリティ対策に自信を持てず腰が引けているのではないか」と見解を示した。

ケイパビリティ:46%の日本企業がプロダクト中心デリバリーを採用している

プロダクト中心とは何ができるかを中心に考えるITデリバリーのやり方であり、これよりも古いやり方がプロジェクト中心デリバリーなのだという。第二世代のITでは、QCD(Quality/Cost/Delivery)を重視していればよかったが、しばしばプロジェクトを終わらせることが目的化することがあった。

プロダクト中心に転じるためには、「DevOpsへの投資」「IT文化の変化への投資」「新しいアーキテクチャーとツールの定義」が必要になるが、先進企業と比べると日本企業は「機能やシステムの合理化と最適化」をより重視する傾向が強いのだという。

注力点:65%の日本企業が1年以内にAIを導入する

日本企業が1年以内に導入を予定しているテクノロジーのなかで飛び抜けて多いのが、AIとロボット/ドローン群であるという。その背景には人手不足を解消するための手段として期待されているからだとガートナーでは見ている。

気になるのは、AIの導入意欲は高いが、その基礎になるデータ分析をゲームチェンジャーとなるテクノロジーと見なしていないことだ。AIの用途を確認すると、日本企業はチャットボットが最も多いのに対し、先進企業では不正検知や顧客セグメンテーションなどが多い。なぜこのような違いが出るかは推測になるが、「経営陣に対してわかりやすいユースケースだからではないか」と松本氏は語る。AIは変革のためのテクノロジーなのだから、データ分析を軽視するべきではない。

以上の結果を受けて、松本氏は「成果」「エンゲージメント」「ケイパビリティ」「注力点」の4つの視点でIT戦略を再点検し、自社が今後成長していくことができるかを検証してほしいと訴えた。そして、デジタル化のスピードを早めて世界からの遅れを取り戻し、むしろ追い越して行くぐらいになってほしいと想いを語り、講演を締めくくった。

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