ABEJAが2月22日に開催したAIテクノロジーに関するカンファレンス「SIX 2018」に、コマツ 執行役員 スマートコンストラクション推進本部 本部長の四家千佳史氏が登壇した。本稿では、「建設現場に、未来がやってくる。IoTxAI活用の軌跡」と題した講演の模様をレポートする。

建設会社の労働生産性を高めるには?

国内トップ、世界2位の売上規模を持つ建設機械・鉱山機械メーカーのコマツ。建設機械の情報をリモートから確認できる「KOMTRAX」を2001年から提供し、IoTの取り組みの先駆けとして知られてきた。

そんなコマツが今注力しているのが、2015年2月から提供を開始した「スマートコンストラクション(SMART CONSTRUCTION)」だ。コンセプトは、現場に関わるものをICTで有機的につなぎ、安全で生産性の高いスマートな「未来の現場」を創造していくこと。

同プロジェクトの責任者である四家氏は「コマツの事業戦略は、顧客の価値創造を高めれば高めるほど、コマツの成長が進むという考えに基いて実施されています。最初のフェーズは、”ダントツの商品”をつくることでした。燃費や排ガス、作業性、機能、振動・騒音、デザイン、安全性を高めた建機を造りました。

次のフェーズは”ダントツのサービス”です。機械とコミュニケーションし、遠隔から稼働管理する『KOMTRAX(コムトラックス)』がそうです。そして現在、取り組んでいるのが”ダントツのソリューション”を目指したスマートコンストラクションです」と説明した。

コマツ 執行役員 スマートコンストラクション推進本部 本部長の四家千佳史氏

スマートコンストラクションに取り組む大きな背景には、労働力不足と人材確保の難しさがある。2025年には技能労働者の4割が離職すると予測され、それに対応するには労働生産性の向上が欠かせない。また、建設会社の約94%が社員10名程度の中小事業者であり、地域や規模に関わらず労働生産性を向上する必要性が高まっている。

「大手なら自社で対応できるかもしれませんが、社員10名程度の中小事業者が自分たちだけで労働生産性を高めることは難しい。そこで、われわれにも何かお手伝いできることはないかと考え始めました。

メーカーなので最初は自分たちの商品だけで解決しようと考え、2013年にICT建機を日本と米国、ヨーロッパ、オーストラリアで市場投入しました。ただ、ICT建機だけでは、現場の課題を解決できないと気づいたのです」(四家氏)

ICT建機とは、GNSS(グローバル衛星測位システム)を使って3~4cm単位で車両の位置を把握することや、3D設計データとアーム制御システムを使って誤差3cmという単位で作業機操作のセミオート化を可能にした建機だ。位置を把握して自動走行したり、バケットの刃先が設計面に達すると機械が自動停止したりする。操縦室には「コントロールボックス」と呼ばれる12.1インチのモニタが設置され、目視だけでなく、さまざまな角度から作業行程を把握できる。

「ICT建機を使って自動車専用道路の路床工事を行いました。ただ、ICT建機の『盛土』という作業の前後には、従来型建機による『掘る』『積む』『法面』、10tダンプによる『運ぶ』、振動ローラによる『転圧』といった作業があります。ICT建機を導入しても、盛土までの施工量は変わらず、効果が得られませんでした。また、施工する土量が正確にわからないため、正確な施工計画を立てることができませんでした」(四家氏)