7月13日から15日の3日間にわたり、東京ビッグサイトで開催された「ワークスタイル変革EXPO」。会場では、既存のワークスタイルに一石を投じるさまざまな製品・サービスが展示されたほか、ワークスタイルの在り方を問う各種セミナーが実施された。本稿では、15日に開催された「テクノロジーはワークスタイルをどう変えるか ~HPが考える未来の働く環境~」のもようをレポートする。

働き方に対するHPの理念

日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長 兼 サービス・ソリューション事業本部長の九嶋 俊一氏

日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長 兼 サービス・ソリューション事業本部長の九嶋 俊一氏

当日、登壇したのは、日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長 兼 サービス・ソリューション事業本部長の九嶋 俊一氏。

九嶋氏はまずHPについて「非常に古い会社です。よりビジネスのスピード感を高めるために昨年、分社化してコンパクトになりました」と説明する。HPの理念として「人間は環境さえ与えればいい仕事をしたいはずだ」というビル・ヒューレット(HP共同創業者)の言葉を紹介し、「環境とは、スペースや空間のことだけでなく、制度やカルチャーのことでもあります」と語る。

この理念が生まれたのは1957年のことで、当時のHPはまだ米国にのみ拠点を置く企業だった。海外における初拠点となったのは、1963年に創立した日本法人だ。東日本大震災後にオフィスを建て替えており、九嶋氏によると、これがワークスタイルの面で劇的な変化につながったという。

では具体的にどんな変化をもたらしたのか。

まず特徴的なのは、固定席を持つ社員が全体の3割以下になったことだ。これは、日本HP社員の働き方を調査した結果、固定した席で仕事をする必要がある社員が全体の3割だったからである。多くの社員はどこで仕事をしてもかまわないモバイルワーカーであり、そうした働き方を日本HPでは「フレックスワークプレイス制度」と呼んでいる。固定席を減らしたことで、新たに生まれた空間を有効活用できるメリットが生まれ、生産性が向上したという。

BYODに関しても厳格な規定の下、10数年前から認めており、現在はオフィスソフトもクラウドベースの「Office365」を利用。「この規模の企業での導入は先進的」と九嶋氏は胸を張る。

なお、HPの米国本社ではフレックス制度の導入は1977年と古く、フリーアドレスも2001年に導入済みだという。前述のフレックスワークプレイスについても、米HPでは2007年から制度化している。

このほか、障がい者にどう働いてもらうのかというテーマも重要視しており、全てのフロアに車いす用のトイレを設置するなど、バリアフリー化を進めているという。

こうした自由な働き方が米国先行で導入されてきた背景には、「国土が広い米国では通勤するのが大変で、そもそも一定の場所に集まるという考え方が少ないことがある」と九嶋氏。もっとも、あまりに働き方が自由なために、上司とのコミュニケーションがなくなるといった問題が生じたことから、最近では「バック・トゥ・ザ・オフィス」という考え方に回帰してきた面もあると説明した。

九嶋氏によると、HPではこうした考え方が1周した結果、現在のようにバランスの取れたスタイルに落ち着いたのだという。

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